新世代の台頭、1億再生曲続出、二次創作推奨手法……“拡張”の年となった2024年ボカロカルチャー情勢考察
これらの状況の背景にあるのはすでに多くの人々が知っての通り、海外市場における国外リスナー増加の影響が非常に大きい。今年はその他にも従来から海外人気の高かったボカロP・きくおの世界16カ国をまわるワールドツアー開催や、2017年リリースのボカロカバーアルバムが中国でロングヒットを続けるバンド・H△Gの中国ワンマンライブ開催など、ボカロカルチャーに関する海外シーンのリアルイベントも各地で大盛況。さらにタイムリーな話題として、ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ「みむかゥわナイストライ」が中国の動画サイト・bilibiliにて投稿わずか10日で1000万回再生を突破。その余波から、現在YouTubeでも爆発的に再生数を伸ばしている状況だ。
こういった2024年のボカロカルチャー海外躍進にはおそらく複数の背景要因があり、各種SNSによる国境を超えたバズに加え、2023年に新設されたBillboard JAPANのチャート「Global Japan Songs Excl. Japan」による世界的な邦楽情勢の可視化。同様に昨年ローンチされたSpotify公式プレイリスト「Gacha Pop」による音楽ジャンルとしての定着/普及や、あるいは2023年の世界的にも盛り上がりを見せたYOASOBI「アイドル」のヒットから、楽曲を手掛けたAyaseの音楽的ルーツを遡りVOCALOIDに辿り着いた海外リスナーもひょっとしたらいるのかもしれない。
こうして見ると、2024年のボカロシーンは様々な点で明確な“拡張”の1年だったとも言える。その勢いは今夏発生した、文化の本拠地・ニコニコ動画の大規模サイバー攻撃におけるサービス一時停止にも怯まず拡大し続け、現在まで至っている。
音楽ジャンル・VOCALOIDの確かな強度と独自性が証明された2024年。本カルチャーが来年以降に見せる、さらなる発展/繁栄にも今から大きな期待を寄せたい。
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