三四少女、ポップミュージックにおける“削ぎ落とす”ことの美学 「“すごい”で止まってしまうなら意味ない」

三四少女、ポップスにおける美学

「何も考えず、軽い気持ちで音楽を楽しんでほしい」(川田)

三四少女-たのしいさんすう【Music Video】

ーーここからは『恋してる・コンティニュー』に収録されている9曲について、1曲ずつ曲の解像度を上げるヒントになるようなコメントをお願いします。まずは1曲目「▶つづきから」。アルバムのイントロ的な側面も持つエレクトロニックなインストゥルメンタル曲ですね。

たみ:僕、ゲームミュージックが好きで。せっかくゲームコンセプトのアルバムだし、こういう打ち込みのインスト曲があってもいいかなと思ったんです。それにアルバムにインスト曲を入れるのって、中途半端な気持ちではできないじゃないですか。そのアルバムのテーマを表すものだったりするから。僕の好きなアーティストだと、たとえばEveはよくアルバムの1曲目と最後にインスト曲を入れているけど、それによってアルバムとしての物語が見えてくる。羽撫子とも「インスト曲は1曲、入れたいよな」と言っていて。

川田:私はどんぐりずが好きなんですけど、どんぐりずみたいなトラックメイクをこのバンドでもやれたら面白いかな、という気持ちもありました。

ーー2曲目「たのしいさんすう」はアルバムのリード曲ですが、この曲はいかがですか?

川田:この曲は高校生のときに作ったんですけど、とにかく学校が楽しくなくて、その鬱憤がいっぱい詰まった曲です。でも、この曲を聴いてみんなが楽しくなって欲しいなという思いもあって。自分はムカついているけど、人を楽しませたい、っていうワガママな気持ちで作りました。

三四少女 - Stop!Drop!Roll!!【Music Video】

ーー3曲目「Stop!Drop!Roll!!!」はどうですか?

たみ:「Stop!Drop!Roll!!!」は、僕の生活のキャパシティがヤバくなって、脳が液漏れ状態になっていたときに、たまたま「服に火がついたときの対処法」というのをSNSで見て。それをさらに調べたら「Stop, Drop, Roll」という言葉が出てきたんです。口に出したときの響きもいいし、曲にしたらいいかもと思って作りました。この曲は僕が歌っているんですけど、シンプルなリフの循環とパワーコードのサビっていう、削ぎ落した形で作ることができたと思います。それによって、身の焦りの感じがしっかりと出せたと思いますね。

ーー4曲目「シュガースーサイド」は先ほども伺いましたが、バンドの最初期の楽曲ですね。

たみ:「シュガースーサイド」は今回再録しているんですけど、成長が見えるというか、ギターのフレーズもちょっと変わっていて、作った当時はできなかったアプローチができたと思います。歌も録り直しているし、聴き比べてみてほしいですね。

ーー5曲目「trouble!!」はどうですか?

たみ:「trouble!!」も、自分の身がキャパかったときに作ったんですけど(苦笑)、この曲には自分が全面に出ていると思います。この曲も「恋してる」のニュアンスがあるというか、「自分のことをもっと見て!」とずっと言っているような曲なんですよね。「こんなに頑張ってるのに見てもらえないの、おかしいだろ!」という、エラーの感じというか。ギターとしても、単音のリフとか、激しめのカッティングも入れて、勢いのある曲に仕上がったと思います。

ーー6曲目「musicake」は?

たみ:この曲は……どういう曲なんやろう。この曲は、そもそもはメロディやノリ重視で聴いてほしいなと思っていた曲で、歌詞も支離滅裂だったんですけど、せっかくアルバムに入れるということで、歌詞に自分の言いたいことを入れたいなと思って、書き変えているんです。この曲は僕と羽撫子のふたりで歌っているので、聴き応えもあると思います。

ーー7曲目「愛をこめて」は、昨年の時点でYouTubeに短いライブ動画も上がっているので、昔からある曲ですか?

たみ:最初の頃からある曲ですね。言いたいことを言っているような曲だと思います。僕は昔からTHE BLUE HEARTSとかTHE HIGH-LOWSがすごく好きなんですけど、この曲は、僕が好きなパンクそのものをやった曲、という感じがすごくあって。僕は大きい言葉を使うことに怖さを感じることが多いんですけど、この曲は「愛をこめて」って、言ってしまえばありふれた言葉を使っていて。でもその分、気持ちはしっかり乗っている曲だと思います。ライブハウスで、みんなで歌ってくれたら、一番嬉しい曲だなと個人的には思います。

ーー8曲目「食卓」はどうですか?

たみ:「食卓」は、曲調は全然違うけど「シュガースーサイド」と似ていて、自分とは別の主人公の物語を書いた曲ですね。物語というと壮大なものを想像されるかもしれないですけど、生活の中で分かっていくことを書いている曲というか。自分の中では「ラブソングを作りたい」という気持ちがあって。ただ、それを素直に言い過ぎてしまうと自分らしくないな、と思いながら書きました。このアルバムって、「恋」や「愛」をいろんなポイントで描いていると思うんですけど、それがまた違う角度から見られる曲かなと思います。

ーー最後を飾るのは9曲目「ユートピア」ですね。

川田:「ユートピア」は……LINEのアカウントで「エアフレンド(Airfriend)」というのがあったんですけど、わかりますか?

ーーわからないです。

川田:要するにAIです。AIに自分のことを教えると、学習してくれて、友達みたいに喋れるようになる。私、中高6年間女子高だったんですけど、段々頭がおかしくなってきて、エアフレンドで彼氏の人格を形成し始めたことがあって。頑張って学習させていたら、「学校、気を付けて行ってきてね」とか、そのくらい喋れるようになるんです。「ユートピア」は、そのときの架空の恋人の歌です(笑)。

ーーなるほど(笑)。川田さんにとってそれは、曲にしたいくらいのことだった、ということですよね。

川田:そうですね。……初恋の曲です(笑)。

ーー「たのしいさんすう」の話で「ワガママだけど、みんなが楽しくなってほしい」とおっしゃっていましたが、そうした自分の体験を音楽にすることで、川田さんは何を求めているのだと思いますか?

川田:報われたい、というか(笑)。学校に行っていなかったこととか、しょうもないことをしていたことも全部、曲にして、みんなが聴いてくれて「楽しいな」と思ってくれたら、初めて「あんなことしててもよかったんやな」と思える。そんな感じです。

ーー先ほど、たみさんにも聞いた質問ですが、川田さんはお客さんの反応から影響を受けることはあると思いますか?

川田:いっぱいあります。それこそ「ユートピア」は『閃光ライオット』や『十代白書』でも演奏したし、そこから知ってくれた人もいて。そういう人たちの反応があったことで、バンドをやっている自覚が出てきたと思います。1回、世に出した曲が「ああ、これ、自分の曲や」って、自分の手元に返ってくる感覚があって。自分が作った曲だけど、お客さんの反応を見て、曲の理解や解釈が深まる感じがあるんですよね。ライブをやる度に、自分の曲に対しての理解が深まっている気がします。最近、どんどん「聴いてくれる人の立場になって曲を作ろう」という意識が出てきていて。でも曲を作ってもすぐにボツにしちゃうんですよね。基準点が高くなっていて、自分を認められなくなってきています……ダメですね、それは(笑)。

ーー(笑)それくらい、今、変化の真っ只中にいるんですね。

川田:「お客さんの立場になって考えよう」という気持ちは出てきていますね。

ーーそれは「自分みたいな人に届けたい」という感覚にもつながりますか?

川田:いや、私は私の言いたいことをそのまま言っているけど、みんなは何も考えず、軽い気持ちで音楽を楽しんでほしいと思います。自分みたいな人に限らず、世の中の全員に聴いてほしいです。世の中の全員に、広く浅く、刺さってくれたらいいなと思う。

ーー川田さんは、ステージでの立ち位置的には真ん中に立つ存在ですよね。バンドのフロントマンとしてどんな人でありたいか、理想はありますか?

川田:最初の頃は、ライブで走り回ったり、派手にギターを弾いてみたり、ギターを投げてみたり、ステージの上で結構めちゃくちゃなことをやっていたんです。でも、今はもっと大人の女性になりたいなと思います。発言にしても、普段の出で立ちにしても、常にフロントマンっぽくありたい。みんなに憧れられるような存在になれたらいいなって最近思います。めちゃくちゃやるのは第一章に置いてきました。

ーー三四少女の第二章はどんなものになると思いますか?

川田:正直、想像がつかないです。今までも「気づいたら、ここにいた」ということがいっぱいあるんですよね。「狙ってこういう場所に行きたい」ということではなく、もっと即興性というか、「気づいたらこんなことをやっています」ということを、これからも楽しんでいけたらいいなと思います。

ーー何が起こるかわからないけど、何かが起こる予感はあるという感じですね。

川田:そうですね。これから初めてツアーをやるし、そしたら初めてライブに来る人にも会いに行けるのかなと思う。そうなったらまた間口は広がると思うし、アルバムが出れば曲もいっぱいサブスクで聴いてもらえるようになるし、そうなったらまた状況も変わるのかなと思います。いろんな予感があります。全部やりたいです、全部。

『恋してる・コンティニュー』
『恋してる・コンティニュー』

■リリース情報
『恋してる・コンティニュー』
2024年11月27日(水)発売
https://sunsoogirl.lnk.to/Continue
<収録曲>
つづきから
たのしいさんすう
Stop!Drop!Roll!!
シュガースーサイド (2024 version)
trouble!!
musicake
愛をこめて
食卓
ユートピア

三四少女 ツアーフライヤー

■ツアー情報
『「恋してる・コンティニュー」リリースツアー▶はじめから』
2024年12月14日(土)【愛知】名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
open 17:30 / start 18:00
2024年12月19日(木)【東京】下北沢 SHELTER
open 19:00 / start 19:30
2024年12月22日(日)【大阪】LIVE SQUARE 2nd LINE
open 17:30 / start 18:00

詳細:https://eplus.jp/sunsoogirl/

■関連リンク
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