ENHYPEN、ATEEZ、TXT、TREASURE……“スーツルック”で漂わせる色気 映像との相乗効果で際立つ輝き
ファッションと映像、それぞれのルックでの相乗効果
音楽は、美術や映画(映像)などほかの芸術とゆるやかにリンクしながら、そのものを中心に自由に外に広がっていくことがある。とりわけファッション分野とはラフにポップに共鳴し合う。先日、K-POPグループ、ENHYPENとATEEZがそれぞれ公開した「No Doubt」と「Ice On My Teeth」のMVを観て、“スーツルック”を基調とする音楽とファッション、そして映像表現のあざやかな相乗効果を感じた。
特徴的な休符使いのイントロが一聴してすぐ身体にストンとくる「No Doubt」は、冒頭、オフィスを映したカメラがぐわっと後退する。黒のスーツをまとったメンバーたちが次々映し出される。この素早いトラッキングショット中、上手からNI-KIがフレームインする瞬間にとろけてしまいそうになる。スタイリッシュな色気を一斉に放つスーツルックで統一され、それが映像自体のルック(画面のスタイル)としても明示される。
画面を満たすのは、うだるような熱気。ダンサブルな曲調に合わせてテンポよく的確にカットが変わると、ネクタイを緩め、ジャケットを脱ぎ……。いつしか全身レザールック。この着脱とダンス、リリックがあいまって本当に色っぽい。音楽を中心として、ファッションと映像、それぞれのルックが最大限の相乗効果を生み出しているMVの好例だ。
ゴシックホラー映画のようにぞくぞくする「Ice On My Teeth」
ATEEZの「Ice On My Teeth」もまずイントロが印象的。くぐもった音作りが、たとえば「wherever u r (feat. V of BTS)」でBTSのVと声を重ねたUMIのようなネオソウル的感性のナンバーかなと最初は思う。すると、なんともかぐわしい弦楽器の音色が聴こえてくる。クラシカルな生音とはひと味違うポップなスケルツォ曲の趣きがあり、軽快でいてスプーキーだ。
そのスプーキーなトーンに合わせ、怪しげな洋館を舞台にゴシック風のファッションセンスが妖艶なMVのスタイルは、ゴシックルック。ピアノの傍らでメインボーカルのJONGHO(ジョンホ)が〈Violin〉と歌う場面で上手から不意にバレリーナたちがフレームイン。地肌に毛皮のコートを羽織るSAN(サン)がシャンデリアにつかまろうとする官能まで用意されている。
終盤は屋敷前で燃える炎をバックに黒ルックで統一されたダンスの見せ場。ゴシックホラー映画のようにぞくぞくしながらポップでもある全編は、ティム・バートン監督の『ダーク・シャドウ』(2012年)のような遊び心がある。