オーイシマサヨシ×三井律郎特別対談 二十年来の“同期”が語る当時のバンドシーン、アニソン業界での再会
Sound Scheduleの大石昌良とTHE YOUTHやLOST IN TIMEの三井律郎、20年以上前から同じステージで互いに切磋琢磨してきた音楽仲間である2人。今回、時を経て、アニソンシンガーとしてキャリアを築いたオーイシマサヨシと、ギタリストとして様々なプロジェクトで音楽を支える三井の対談が実現した。対談のきっかけは、オーイシのXでの投稿からーー彼らが再び顔を合わせ、音楽シーンで辿った道のり、それぞれが築いてきた歴史を振り返る。そして、変わらぬ信頼と刺激を与え合う2人に、現在の音楽業界における自らの立ち位置や互いに作り出す音楽、現在のアニソンについて語ってもらった。(編集部)
実は「ぼっち・ざ・ろっく!」でお馴染みのギタリスト三井律郎くんは23年前よく対バンしてたガッチガチの同期で今こんな風にアニメ業界で音楽を奏でていることにエモさを感じますしそれがぼざろっていうのもエモですし最近会えてませんし連絡ください
— 大石昌良【オーイシマサヨシ】 (@Masayoshi_Oishi) August 12, 2024
2人は二十数年前からの音楽仲間 “同期”には江口亮、中田ヤスタカらも
――そもそもお二人はいつ頃からお知り合いなのでしょうか。
オーイシマサヨシ(以下、オーイシ):最初に出会ったのは今から二十数年前ですね。Sound Schedule(大石昌良(オーイシ)がVo/Gtを務める3ピースバンド/以下、サウスケ)は2002年にメジャーデビューしたんですけど、その頃によく対バンしていたのがTHE YOUTH(三井がギタリストとして所属するバンド)だったんです。仙台JUNK BOX(仙台の老舗ライブハウス、2024年2月29日に閉店)とかでよく一緒にやっていて。実はサウンドプロデューサーが一緒で、どっちのバンドも鈴木兼隆さんという方にお世話になっていたんですよ。
三井律郎(以下、三井):そう。兼隆さんはキーパーソンですよ。当時、THE YOUTH、サウスケ、GO!GO!7188、Stereo Fabrication of Youth(以下、ステファブ)を同時期に手掛けていて、全国を飛び回っていましたから。兼隆さんはギタリストでもあったので、ギターのアプローチをいろいろ教えてもらいました。
オーイシ:僕も3ピースバンドでギターボーカルを担当していたし、三井くんとは当時使っていたギターの種類もギブソンのES-355で一緒だったんですよね。俺、THE YOUTHの曲、いまだに聴くからね。「泥の道」とかめっちゃいい曲だもん。骨太なロックをやっているけど、実力もすごくあるバンドで。
三井:いやいや、サウスケも上手かった。俺もサウスケの曲、いまだに聴いてるし。大石くんはあの頃から変わってないよね。当時からステレオシステムやルーパーをライブに導入していて、それを歌いながら使いこなしていたから、器用だなあと思って。でも、あそこまでアコギを弾けるとは知らなかった。サウスケが解散した後のソロライブで観て「すご! こんなに弾けるの?」と思ったから。
オーイシ:あれは練習したのよ。サウスケが解散してバンドで食えなくなったから、1人で何とかしなくてはならないと思って、めっちゃ練習して。生活がかかってますから(笑)! その点、三井くんは、当時からギタリストとして頭ひとつ抜けている実力者だったんですよ。まず指の長さからして違うので。
三井:たしかに手は大きいからね。
オーイシ:あとは音楽愛、ギタリストとしての愛情がすごくある人だと当時から感じていたので、周りのバンド仲間の間でも、「仮にみんなバンドで食えなくなったとしても、三井だけは音楽で食っていけるだろう」と言われてましたね。「どうせあいつは、バンド辞めてもスタジオミュージシャンになるんだろ、チェッ!」みたいな(笑)。
三井:アハハ(笑)。でも、俺はいまでもバンドをやってるからね。大石くんとは、ソロになってからも何回か対バンをしたことがあって。俺と中村(マサトシ/THE YOUTHのボーカル)の2人でアコースティックでやった時とか。たしか『MEGA☆ROCKS』(仙台で毎年開催されているライブサーキット)でも一緒になったことがあって。
オーイシ:そうだ。「久しぶり!」って感じで挨拶したのを覚えてる。数年に一度くらいしか会わなくなったとはいえ、頑張っている同期の仲間たちがいるのは励みになったなあ。俺はその頃、必死だったから。
三井:俺は今でも必死だけどね(笑)。
オーイシ:いやいや! よく言うよ(笑)。
三井:でも、あの頃の思い出は忘れられないくらい濃いですね。青春だったと思う。
オーイシ:僕らの同期がまたすごいんですよ。ステファブの江口(亮)くんもそうだし、中田ヤスタカも僕ら(サウスケ)と同じ時期にヤマハミュージックから(capsuleで)デビューしたんですよね。僕と同い年で。
三井:そうなんだ。
――江口さんのお名前が出ましたが、三井さんは江口さんと一緒にla la larksとしても活動されていますし、お二人とも当時の縁が今の活動に繋がっている部分もあるのではないでしょうか。
三井:僕は完全にそうですね。スタジオミュージシャンの仕事を始めるきっかけも江口くんに呼んでもらったからなので。
オーイシ:じゃあ江口くんがアニソン業界に繋いでくれたところがあるの?
三井:どうだろう? 俺は当時、その辺りのことは全然詳しくなかったんだけど、たしかにアニメの主題歌の案件は多かったかも。それこそ、初めてのスタジオミュージシャンの仕事は、いきものがかりの「ブルーバード」だったし。
オーイシ:『NARUTO -ナルト- 疾風伝』のOPテーマだったもんね。というか「ブルーバード」弾いてたんや! 〈飛翔(はばた)いたら〉って歌ってる場合ちゃうよ、まさにあんたが飛び立ってるやん(笑)。人に歴史ありやなあ。
三井:オーイシくんはいつ頃からアニソンやってるの?
オーイシ:2013年だね。『ダイヤのA』というアニメのOPテーマ(Tom-H@ck featuring 大石昌良名義の楽曲「Go EXCEED!!」)でアニソンデビューをさせていただいて。そこで出会ったのがTom-H@ckという、今自分が所属している事務所の社長でもあり、OxTの相方でもある人間で。トムくん(Tom-H@ck)は当時、『けいおん!』(TBS系)からの流れもあって、アニソンクリエイターの中でもトップレベルの活躍をしていたんですよね。その彼とコンビを組んでいる自分にも興味を持ってもらって、アニソンのオファーをいただくようになりました。
三井:いきなり作曲から?
オーイシ:作詞・作曲・編曲から歌まで。それが『月刊少女野崎くん』(テレビ東京系)のOPテーマ「君じゃなきゃダメみたい」で、その曲で2014年にオーイシマサヨシとしてデビューしたんだよね。
三井:10年くらい前なのか。
オーイシ:そう、今年でちょうど10周年なんですよ。「ブルーバード」っていつだったっけ?
三井:あれは俺がまだ20代だったと思うから……2008年か。
オーイシ:じゃあ、三井くんのほうがアニソンの先輩じゃん!
三井:いやいや(笑)。でも、School Food Punishmentの後期のサポートもしていたし、たしかに江口くん周りの仕事はアニメ関係が多かったかも。レコーディングの時には、そういう情報は知らされていなかったんだけどね。
オーイシ:でも、これは自分で言うのも手前味噌ですけど、実力のある人や星を持っている人は、結局、集まる運命にあるんですよね。
三井:「星座になれたら」(結束バンドの楽曲)みたいな話になってきた(笑)。
オーイシ:いや、本当に。最近、三井くんを含め昔から縁のある人に再会するたびに、長くやってきて良かったなあと思うことが多くて。それを拾い上げてくれたのはアニソンという大きな母体だと思うので、僕はアニソンに対して感謝しかないし、いつかこの業界に恩返ししたいと思いながら活動しています。
三井:でも、たしかにすごいよね。これだけいろんな音楽をやっている人が関わっていて。自分も若い時に「この人すごい!」と思ったオーイシくんが今も「すごい」というのは、「やっぱ俺、間違ってないでしょ!」という気持ちになって嬉しい。
オーイシ:そう、自分が信じた才能が開花しているのは嬉しいよね。