オーイシマサヨシ×三井律郎特別対談 二十年来の“同期”が語る当時のバンドシーン、アニソン業界での再会

オーイシマサヨシ×三井律郎 特別対談

アニソン“89秒尺”の面白さと醍醐味とは?

――お二人はアニメ音楽の制作のどんなところに醍醐味を感じますか?

三井:主題歌の場合、89秒の縛りがあるというのは、自分としては『ぼっち・ざ・ろっく!』の仕事が初めての経験で。どんなBPMでも89秒で終わらなくちゃいけないっていう。でも、その曲に画がつくとまた違う感じに聴こえるし、面白いなあと思いました。

オーイシ:僕は最近、アニソンとは全く関係ないタイアップ曲を作る時もワンコーラス分のデモを作ると大体89秒になるんですよ。完全に89秒が体に染みついてる(笑)。でも、そのルールがあるからこそ映えるカルチャーでもあるんですよね。サッカーも手が使えないからこそ面白いわけで。アニソンは89秒という尺だからこそ独自の進化をしている部分はあると思います。

三井:完成させるまでが大変だけどね。「入らない! どこを削ろう」とか、逆に(尺が)余るパターンもあって。

オーイシ:そう! 余るのがキツいよね。「どうしようかな?」って悩んで、頭2秒にシュワシュワシュワ~みたいな音を付けようかなって思うくらい(笑)。

三井:オーイシくんがラジオ(『アニソンプレミアムRADIO』の2024年8月12日放送回)で褒めてくれた「カラカラ」(結束バンドの楽曲)は、tricotの中嶋イッキュウさんが書いた曲をアレンジしたんですけど、あの曲のAメロの途中で4分の2拍子が入るのは、89秒で収まらなかったから切って変拍子にしたんですよ。でもそれが逆にフックになって。

オーイシ:なるほどね。自分もあの曲は、変拍子とか小節遊びの面白さみたいな部分でひっかかって。そういう事故のような奇跡がアニソンでは多々起こるんですよね。これが面白い!

三井:そう、89秒の縛りがあるから逆にね。よくできている楽曲は本当にすごいし。

オーイシ:「その脳みそをくれ!」って思うからね(笑)。僕はマジで若いクリエイターたちにずっと嫉妬し続けていますから。

TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」エンディング映像/「カラカラ」#結束バンド

――でも、そういった人たちもサウスケに影響を受けているわけですから。

オーイシ:いやいや、あれはおじさんたちが喜ぶと思って言うてるだけですから(笑)。でも、それくらいの気概がないとダメなんですよね。いつまでも若い子たちと同じフィールドに立ち続けるためには。でも、こうやって歴史があるからこそしゃべれることがあるよね。

三井:そうだね。こういう機会に話しておかないと、多分、この先、忘れていってしまうから、残しておくことも必要だなって思う。

オーイシ:そうそう。今日の話は指差し確認だよね。「俺たちの時代はこうだったよね?」「時系列も間違ってないよね?」っていう(笑)。

三井:それもお互い活動を続けていて、こうやって呼んでいただかないとできないことなので、本当にありがたいことですよ。

オーイシ:じゃあ10年おきにリアルサウンドさんで特集をお願いします(笑)! でも、10年後って俺は54歳か! ヤバいなあ。

三井:もう指差しできなくなってるかもね、「あれ? そんなことあったっけ?」みたいな(笑)。

「また何か機会があれば対バンとかやりたいよね」

――折角こうして再び交流が生まれたわけですから、ぜひ音楽活動のほうでも何かしらのコラボを期待したいところですが。

オーイシ:ぜひやりたいですけどね。

三井:僕がAimerちゃんのサポートをしている時の相方で、佐々木“コジロー”貴之くんというスーパーギタリストがいるんですけど、彼がオーイシくんの作品で弾いているんですよ。

オーイシ:そう、僕のレコーディングによく参加してもらっていて。

三井:俺、コジローくんよりは器用に弾けないから、多分今後も呼ばれないんじゃないかな(笑)。

オーイシ:いきなり自虐が入った(笑)。でも、アニソン界はギタリストも選りすぐりの人たちが多いけど、三井くんとであれば、絶対に意味のあるセッションができると思うんだよね。

三井:俺はオーイシくんと一緒にギターを弾きたいと思ってるけどね。アコギとかで。

オーイシ:俺とアコギで? いーや、無理無理! ちょっと1年くらい練習させてください(笑)。

三井:アハハ(笑)。あとは対バンとかもやりたいよね。実は仙台JUNK BOXが閉店するときに、THE YOUTHで最後にライブをやることになって、対バンは誰がいいかって話になったときに、メンバー全員が「いや、それはサウスケでしょ」ってなったんだけど……。

オーイシ:えっ、マジで! 嬉しい!

三井:でも、店長が「いや、オーイシくんは今すごいことになってるしなあ……」って萎縮しちゃって、結局、別のバンドとの対バンになったんだよね(笑)。

オーイシ:ええ! いや、声かけてよ(笑)! JUNK BOXはたしか移転するっていう話だったよね。あの地下まで行く道が良かったんだよなあ。大好きだったわ、あのライブハウス。

三井:俺もあそこでサウスケを何回も観てるし、大石くんのソロも観てるし。だからやりたかったんだけどね。

オーイシ:でも、また何か機会があれば対バンとかやりたいよね。うちのメンバーも喜ぶと思うので。

三井:ね。沖(裕志/サウスケのベーシスト)くんとも川原(洋二/サウスケのドラマー)くんとも、みんな仲良かったので。ぜひやりましょう。

オーイシ:また絶対にどこかで一緒になるだろうけど、でもその前に一緒にモノを作ったりもしましょう。割と近々で声をかける可能性があるかも。こういうのは縁というかタイミングがあるので。忙しいとは思いますけど、近いうちにぜひ。

三井:いつでも待ってます!

オーイシマサヨシ×三井律郎(撮影=はぎひさこ)

■関連リンク
オーイシマサヨシ(大石昌良)HP:https://www.014014.jp/
オーイシマサヨシ(大石昌良)X(旧Twitter): https://twitter.com/Masayoshi_Oishi
三井律郎 X(旧Twitter):https://x.com/theyouthguitar

オーイシマサヨシは人を楽しませるプロフェッショナルだ パシフィコ横浜と配信視聴者を魅了した『エンターテイナー』公演

オーイシマサヨシが9月19日、パシフィコ横浜国立大ホールにてワンマンライブ『エンターテイナー』を開催した。オーイシはこの日、So…

ギタリスト 三井律郎、THE YOUTH以降の出会いと歩み 『ぼっち・ざ・ろっく!』での“答え合わせ”とは

THE YOUTHやLOST IN TIMEのギタリストとして活動する一方、Aimer、中村一義、須田景凪、坂本真綾のライブやレ…

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる