King Gnu、加藤ミリヤ×椎名林檎、ずっと真夜中でいいのに。、ILLIT、B小町、Omoinotake……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はKing Gnu「ねっこ」、加藤ミリヤ×椎名林檎「愛楽」、ずっと真夜中でいいのに。「クズリ念」、ILLIT「Cherish (My Love)」、B小町「我ら完全無敵のアイドル!!」、Omoinotake「ラストノート」の6作品をピックアップした。(編集部)
King Gnu「ねっこ」
現代を生きるための、ささやかで大切な存在。聴き手の日常にこんなにも寄り添ってくれるKing Gnuの楽曲は初めて聴いた気がする。約1年ぶりの新曲「ねっこ」は、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)主題歌としてオンエアされているミッドバラード。どこまでも繊細なメロディ、〈ささやかな花でいい/大袈裟でなくていい〉というフレーズが耳に届いた瞬間、強張っていた感情がゆっくりと緩んでいく、そんな優しいパワーを携えた楽曲だ。もちろんただ素朴で愛らしいだけではなく、後半の転調とともに楽曲全体が大きく開いていく構成、鋭利さと大らかさを同時に奏でるストリングスなど、随所にKing Gnuらしい冴えもたっぷり。決して派手さはないが、数年後に「あの曲がターニングポイントだった」ということになる楽曲だと思う。(森)
加藤ミリヤ×椎名林檎「愛楽」
デビュー20周年を迎えた加藤ミリヤが、昔から敬愛してやまなかった椎名林檎にデュエット歌唱をオファーしたコラボ楽曲。作曲はChaki Zulu、T.Kura、さらに加藤も参加している。椎名が誰かと共演する時は自作曲がほとんどで、アグレッシヴなロック調、めくるめくミュージカル調などになることが多かったから、抑制の効いたヒップホップやR&Bがベースというのはかなり新鮮だ。具体的な描写はないけれど妙にエロティックでウェットな、大人のための愛の歌。人の命は有限だが音楽になれば歌声は永遠になれるかもしれない。二人がブレスのタイミングを合わせ〈あたしを永遠にして皆〉と歌うところはゾクゾクする見せ場のひとつである。(石井)
ずっと真夜中でいいのに。「クズリ念」
最新EP『虚仮の一念海馬に託す』収録曲より。ACAねのハイトーンボイスをたっぷり堪能できるポップスで、メロディは決して暗くないのだが、歌詞はかなりネガティブ。実際の傷を晒すほど無神経ではないが、同調圧力に疲れ切って電池が切れそうになる、そんな夜を歌う曲である。〈言いたいこと言えなくて〉〈皆が いいと思う曲や歌が 響かない〉というあたりが、今の若者たちの感覚を言い当てているのだろう。まず歌が大きくミックスされているし、そのあとは歌詞に注目が行くのだろうが、軽やかに爪弾かれるエレキギターが中盤から意外なほど活躍する曲でもある。ファンキーなカッティングやワウの使い方、イントロのソロパートなどにも注目を。(石井)