kiss the gambler かなふぁん、音楽に昇華する“人とのコミュニケーション”への関心 柴田聡子からの影響も

kiss the gambler、音楽的ルーツ

 昨年、谷口雄(元・森は生きている)がプロデュースした2ndアルバム『私は何を言っていますか?』と、自身のピアノ弾き語りによるセルフカバー集『何が綺麗だったの?』と2枚のアルバムをリリースしたシンガーソングライター、かなふぁんによるソロプロジェクトkiss the gamblerが、6曲入りのミニアルバム『Relax!』をリリースする。

 本作は、1曲ごとに石井マサユキ(TICA)、Shingo Suzuki(Ovall)、鈴木正人(LITTLE CREATURES)、佐藤洋介など様々な分野で活躍するアーティストをアレンジャー/プロデューサーとして迎えて制作した、kiss the gamblerの様々な側面をフィーチャーしたバラエティ豊かな内容。プライベートでも引越しを経験し、新たなフェーズを迎えつつあるかなふぁんの「今」を鮮やかに切り取っている。今回リアルサウンドでは、そんなかなふぁんのルーツとなった作品を本人に紹介してもらい、オリジナリティ溢れるクリエイティブに迫った。(黒田隆憲)

カウンセラーからの一言がきっかけで生まれた歌詞

ーー今作『Relax』には、何かテーマやコンセプトなどありましたか?

かなふぁん:とにかく次のステップに早く進みたい、そのために作品を出したいという気持ちが強かったんです。それと、これまではアルバム全曲を一人のアレンジャーさんにお願いしたり、そもそもアレンジャーがいなかったりしたのですが、今回はkiss the gamblerの楽曲をいろいろなアレンジで出したくて。それでミニアルバムという形にして、ほとんどの楽曲で違うアレンジャーさんにお願いしました。

ーータイトル『Relax!』にはどんな由来があるのでしょうか。

かなふぁん:引っ越したばかりのある雨の日に散歩をしていたら、前から海外の方が歩いてきたことがあったんです。「ぶつからないように気をつけなきゃ」と思って傘を傾けたところ、うっかり電柱に当ててしまい、傘に溜まっていた水が跳ね返ってその人にかかっちゃったんですよ。それで「あ、ソーリー……」と言いつつ固まっていたら、その方がものすごくフランクに「リラックス!」と笑顔で言ってくれて。「そんなふうに言ってくれるんだ?」という驚きとともに、心が軽くなったんです。「引っ越してきてよかったな」と思えたし、自分が作る曲も聴いてくれた人をリラックスさせられたらなと思って、このタイトルにしました。

kiss the gambler「新しい部屋」(Official Music Video)

ーー1曲目の「新しい部屋」は、アレンジャーが鈴木正人さんですよね?

かなふぁん:はい。弾き語りのデモができた状態でレジーナ・スペクターを意識しつつ、鈴木さんにはジャズっぽい要素を加えてもらいました。この曲は、タイトル通り「引っ越し」がテーマです。

ーーかなふぁんさん自身、今年の春に4年ぶりの引越しをしたそうですが、何かきっかけがあったのですか?

かなふぁん:前の家にはコロナ禍のタイミングで越したのですが、初めての一人暮らしだったし、「どこでもいいかな」という感じで(家を)決めちゃったんです。でも、これまで一度も行ったことのない場所だったし、なんの思い入れもなかったので「一人ぼっちだな」と感じることが多くて。あまりにも静かすぎて寂しくなっちゃったのもあり(笑)、実家の近くにある賑やかな場所へ引っ越すことにしました。

ーー実際に引っ越してみてどうですか?

かなふぁん:散歩がてら、良さげなコーヒー屋さんとか見つけて行くようになったのは、今までとちょっと違いますね。以前の自分からすると、今の自分は結構自由だし「羨ましい」と思うだろうなって。そういう気持ちをこの曲では書きました。

ーー〈新しい家具並べて、前に進まなきゃ、また同じような部屋、同じようなぼく、変わりたいんだ。自由な君に〉と歌っていますが、かなふぁんさんにとっての「自由」はどんなイメージですか?

かなふぁん:「いつも同じ場所に行かなきゃいけない」とか、「同じ電車に乗らなきゃいけない」「毎日同じ人に会わなきゃいけない」みたいなことから離れ、毎日違う場所へ行って違う人と会う。それが私にとっての自由ですね。

kiss the gambler「かっこよくなんかならなくていい」(Official Music Video)

ーー「かっこよくなんかならなくていい」では、アレンジャーに石井マサユキさん(TICA、GABBY & LOPEZ)を迎えています。

かなふぁん:これまでの私の曲を聴いてくださった石井さんから、「ワールドミュージック系が合うんじゃない?」と言っていただき、そこから「80年代のIsland Records(レゲエに強い、ジャマイカ生まれのレーベル)みたいなサウンド」を目指しました。これも引っ越してすぐ作った曲なんですけど、今の場所は、以前住んでいたところよりおしゃれでかっこいい人がたくさんいて、「そんなにかっこよく見せなくてもいいのにな」と思ったことを曲にしています(笑)。

ーー〈強くなりたいなら 誰かを愛して かわいくなりたいなら 自分を愛して〉という歌詞が印象的です。これはどんな時に思ったことですか?

かなふぁん:私はカウンセリングに通っているんですけど、カウンセラーに「かなさんは、悩んでいる時には女の子らしいワンピースを着てくることが多いですよね」と言われたことがあって。確かに、元気な時は今日みたいにボーイッシュな格好をしていることが多いなと思い、「じゃあ、どっちが自分なんだろう?」とちょっと思ったことを、ここでは歌詞にしていますね。カウンセリングは、友達や恋愛の悩みなんかも相談できることが分かり、気軽に行ける場所になりましたね。

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