櫻坂46&乃木坂46「僕は僕を好きになれない/なる」 “正反対のタイトル”から読み解くグループの方向性

 櫻坂46の新曲「僕は僕を好きになれない」のMVが10月4日に公開された。楽曲が解禁になり、まず最初に注目を集めたのはそのタイトルだ。同じ坂道グループの乃木坂46は2021年に「僕は僕を好きになる」という楽曲を発表しており、この正反対のタイトルはファンのあいだでも考察の的になった。

 櫻坂46の「僕は僕を好きになれない」は乃木坂46「僕は僕を好きになる」に対するアンサーソングという見方をすることもできるが、同時に両グループの音楽性や方向性の違いもそこには見えてくる。本稿ではこの2曲を起点に、乃木坂46と櫻坂46のスタンスの違いを考えてみたい。

 10月23日にリリースされる10thシングル『I want tomorrow to come』に収録されるBACKSメンバーによるカップリング曲「僕は僕を好きになれない」は、三期生の村井優が初めてセンターを務めた楽曲。同曲は乃木坂46の「不眠症」を手がけた河原レオが作曲を担当しており(「不眠症」は大貫和紀、高木龍一と共同作曲)、躍動感のあるメロディでMVでは櫻坂46のダンスパフォーマンスが強調されている。

櫻坂46「僕は僕を好きになれない」MV

 同曲は実に櫻坂46らしい。具体的な言葉にするならば、最初から最後まで未来に希望をもたせることなく、自らの心のなかで葛藤しもがいている。特に〈僕は僕を嫌いでいいのか?/生きる意味もわからなくなった/誰とも比較せず自分に自信を持てたら/もっと毎日がしあわせに思えるのに・・・〉という歌詞は同曲の主人公の心象がくっきりと描かれている。〈僕は僕を嫌いでいいのか?〉と自分に問いかけるが、まだその答えは見つからない。きっとこの曲の主人公は、自らを好きでいられることが幸せなのかもしれないということに気づいている。それでも変わることができない苦悩を表現することが、櫻坂46のオリジナリティなのだ。

乃木坂46「僕は僕を好きになる」MV

 一方、乃木坂46の「僕は僕を好きになる」では、まったく異なる主人公の心境が描かれている。Aメロでは主人公の感情に起因する〈嫌いな人〉や〈死にたい理由〉というネガティブなワードが散りばめられ、自己嫌悪に陥る主人公の気持ちが描写されているが、櫻坂46と決定的に違っているのは最後の締めくくり。〈今の場所 受け入れればいい/そんなに嫌な人はいない/やっとわかったんだ 一番嫌いなのは自分ってこと〉と現状を受け入れ、〈僕は僕を好きになる〉という前向きな決意とも言える楽曲タイトルへと帰結する。どちらの楽曲も共通点として“自分が嫌い”であることがテーマとしているが、後悔や葛藤を抱えたままの櫻坂46と希望で締めくくる乃木坂46と、明確な違いがあるのは興味深い。

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