HoneyWorks×monaが“リアル”アイドル界隈で響く理由 『超絶あざといお前らの姫』で示したさらなる親和性
8月28日にリリースされたmona(CV:夏川椎菜) feat. HoneyWorksの2nd アルバム『超絶あざといお前らの姫』が好セールスを記録している。本作はHoneyWorksが手掛ける楽曲を元にしたプロジェクト『告白実行委員会 〜アイドルシリーズ〜』に登場する、女性アイドル “mona”によるアルバム第2弾。声優・アーティストの夏川椎菜が歌唱を担当することで、バーチャルな存在にリアリティを注ぎ込むことに成功している。2021年に発売された同名義での1作目『#名前だけでも覚えてって下さい』には、多くの“リアル”アイドルがカバーした「私、アイドル宣言」「ファンサ」「No.1」といった人気曲が多数収録されており、現在に至るまで好評を博している。第2弾となる今作も「#超絶かわいい」「不屈のアイドル」などの話題曲が豊富で、前作同様にここからさらにアイドルシーンへと浸透していく可能性が高い。
“バーチャル”な世界で生きるアイドル・monaの楽曲が、なぜ“リアル”なアイドル界隈でも支持されるのだろう。そこにはふたつの要因があると考えられる。
まずひとつは、先に挙げた楽曲の歌詞によるものが大きい。たとえば、「私、アイドル宣言」は歌い出しの〈可愛くね とびきりの愛よ届け!/宜しければ名前だけでも覚えてって下さいm(_ _)m〉からもわかるように、日本一のアイドルを目指すmonaの心意気が綴られている。この歌詞に共感し、ただ勇気づけられるだけでなく自分もこの曲を通して“アイドル宣言”したい! と覚悟を決めたアイドルは、決して少なくなかったはずだ。同じように、「ファンサ」もアイドル側がファンに求める思いが込められた楽曲だけに、ライブで歌うことで客席に向けたメッセージがストレートに届くのだろう。こうしたメタ視点でのアイドルソングは過去にも多数存在したが、monaの歌詞はもっとも現代的な言葉遣いに近いこともあってか、現役のアイドルにも共感を生んでいるのだろう。
もうひとつの大きな要因は、これらの楽曲を手がけるHoneyWorksの存在だ。Gom、shito、ヤマコから成るHoneyWorksは2010年から活動を開始したクリエイターユニット。当初はオリジナルのボカロ曲をニコニコ動画やYouTubeなどで発表していたが、徐々に“歌い手”が参加した楽曲も制作。2014年1月にはベストアルバム『ずっと前から好きでした。』でメジャーデビューを果たし、オーディションでグランプリを獲得したシンガー・CHiCOをフィーチャーした“CHiCO with HoneyWorks”としても2023年まで活動を続けた。近年はスマートフォン向けゲーム『学園アイドルマスター』に楽曲を提供したことでも話題を集めている。
HoneyWorksはボカロシーンにとどまらず、J-POP界隈にも楽曲提供を積極的に行なっていることから、日常的にポップスを愛聴するリスナーとの親和性も非常に高い。特に彼らの楽曲は10代を中心に愛好される傾向が強いことから、HoneyWorksの楽曲を聴いて育った今のアイドルたちがmonaの楽曲をカバーするのは、ある意味必然と言える。そして、疾走感や爽快感の中にも切なさ、儚さが感じられるキャッチーなメロディは、手に届きそうで届かない存在である“アイドル”を描く上で有効性が高く、届ける側(=アイドル)としても受け取る側(=ファン)としてもスッと入っていける即効性の強さが好まれているように感じる。