ドラマ『夫の家庭を壊すまで』松本まりか×ざきのすけ。特別対談 表現者同士のリスペクトが生んだ制作秘話

『カテコワ』松本まりか×ざきのすけ。対談

ドラマ『夫の家庭を壊すまで』最終回を迎えて 

――本作はTVerでの見逃し配信でも記録を作りました。最終回までみのりと走り切った視聴者に言葉をお願いします。

ざきのすけ。:この作品を最後まで一緒に見届けてくれたこと、「down under」を聴いてくれたことがすごく嬉しいです。最終回の結末にも驚きがありましたが、それもさらに新しい一面として「down under」とリンクして、ドラマは終わってしまったけれど、みのりさんのこれからの人生は、また想像の余地がある気がしました。そしてそうした想像の中でもまたリンクがしていけるのかなと感じたので、まだまだ「down under」とともに、一緒に楽しんでもらえるんじゃないかと思っています。

松本:みのりは罪を犯さずにいられなかった。そこにしかいけなかった。でもその罪を犯した者は、じゃあ一生その罪と、その罪の意識を持って生きていかなくてはならないのか。その心を持ちながら、どうやって生きていけるのか。自分の罪を許せるのか、他人の罪を許せるのか。そういったところが描かれた第2章だったと思います。黒い心も白い心もあるのが人間だし、世の中だとも思うけれど、黒いものがよくない方向に向かわなければいいなと、私は思うんです。自傷したり、人を傷つけるような形ではなくて。たとえばざきのすけ。さんが持っているという黒い心は、「down under」を生むことに転化されたわけですよね。

ざきのすけ。:そうですね。

松本:私たちも、誰しもが心に抱えている“本当”のところを描く責任として、簡単に作っちゃダメだと思い悩みながらも作ってきました。最終話、何かひとつの落としどころは生み出せた気はするんですけど、正直、力が及んでいないところもあるかもしれません。それでも絞り出した答えです。『カテコワ』についてきてくれて、ありがとうございました。

松本まりか(撮影=堀内彩香)

――多くの「声」が届いていると思いますが、印象的な反応がありましたら教えてください。

松本:当初はここまで皆さんが支持してくださるとは思っていませんでした。今回ほど、視聴者の方を意識して作った作品はなかったので、皆さんに「伝わった」というのが何よりも嬉しいです。誰かに裏切られるって、きっと多くの人が感じたことのある、知っている感情だからこそ、軽くやって手を抜いて、深いところまでいきつかなかったら、それを視聴者の方は見抜いてしまう。だからこそ「不倫復讐劇なのに、このドラマを見たら人生を大切にしようと思った」という声をいただいたときは嬉しかったですね。あとは、ざきのすけ。さんもおっしゃっていた“グレーゾーン”、私もそこをいかに演じられるかが重要だと思いました。ひとつの感情じゃなくて、いろんな感情が複雑に入り混じる中、みのりのその時その時の感情の変化がより伝わるように演じてきたつもりでした。

――それは嬉しいですね。

松本:今回、ドラマとして目が離せなくなるようなお芝居を意識するようにしました。それを毎週のように面白いと言ってくださったのも嬉しかったですし、とにかくみのりの心情に視聴者の方が「自分は“サレ妻”じゃないけれど、そういう感情、すごくわかる」と言ってくれたのが嬉しくって。視聴者の方に向けて、誠意というとキレイな言葉すぎるんですけど……「嘘のない」作品にしたいと、ずっと思ってやってきたので、この作品をそう受け止めてもらえたのは、本当に嬉しかったです。

ざきのすけ。:僕もSNSなどで反響をチェックしていると、共感の声がたくさんありました。歌詞を書く時に、こうして裏切られたり、誰かに好きな人を取られて傷ついた人はたくさんいるだろうなと思いながら、“この人”に共感してもらえたら嬉しいなという仮想のターゲットを考えて書きました。仮想としていた人たちが、歌詞と作品がリンクしたことで、実際に赤裸々に自分の体験や共感をSNS上で語ってくれている。しかもその入り口として「down under」の名前を出してくれている。歌詞を書く際に目標にしていた人たちが、本当にいたんだという実感を得た喜びというか、この人たちに届いてよかったと本当に思いました。

松本まりか×ざきのすけ。(撮影=堀内彩香)

――その実感から、ざきのすけ。さんに返ってきたものはありますか?

ざきのすけ。:僕自身も救われたというか。そもそも歌詞自体、自分自身の黒い気持ちを基にしているので、そこに共感してもらえなかったら結構孤独だなという思いがありました。だからそこに共感してもらえて、すごく救われたし、お互いに与え合えたような気がして。一方通行な歌にならなくて嬉しかったです。

松本:視聴者の「声」に救われるというのは、私もすごくありますね。今回、この苦しみの何を描けばいいのかと考えましたが、苦しみって、なかなか共有できないもので、友達に喋って「大丈夫だよ」と言われたとしても、本当に感じていることは拭えないからこそ、ずっともやもやしてしまうと思うんです。そこで私がすべきことは、そうした同じ心境を“ただ”やるだけなのかなと。自分と同じ気持ちのみのりがいる。それを見るだけで、何か救いになるんじゃないかと。その人が、そこに自分を見ることができたら、それだけでいいのかなって。そう感じましたし、その思いが伝わったんじゃないかと、皆さんの「声」から伝わってきて、私も嬉しかったし救われました。

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