スマホ撮影、モッシュ/ダイブ、熱中症対策、座席問題……求められる“令和のライブスタイル”とは

 ダイブやモッシュについても、その在り方に関して最近は特に議論が進んでいる。SNSを見る限りでもダイブやモッシュによって大怪我をしたという報告はたびたび見かけるし、その理由がダイブした者の配慮が欠けていたことにあることも少なくはない。よく「モッシュやダイブは衝動だ」と言う人はいるが、それは少し間違っている。他人を傷つけないことを考えて、衝動を爆発させる前に思いやりをもつことが大事だ。衝動を理由にまわりを危険にさらしてはならない。

 ダイブやモッシュの文化は「他人を傷つけない」という価値観を前提とした上でのものだったはずだ。それがいつの間にか「モッシュやダイブは文化だから巻き込まれても文句を言うな」という間違った価値観が広まっている現状もある。衝動を理由に他者を傷つけて開き直るべきではない。観客は定められたルールを守り、運営側も新たな対応や工夫をしていかなければ、いつか取り返しのつかないことになるだろう。様々な価値観が変化している現代は、観客とアーティスト、そして運営側双方の努力が必要だ。今は、そのような時代になりつつあるのだ。

 また、毎年のように記録的な猛暑が襲いかかる昨今、夏フェスにおいても“熱中症対策”がこれまで以上に重要になってきた。昨年の『SUMMER SONIC 2023』では100人以上が熱中症で救護室へ運ばれたという報道もあった。KREVAが猛暑の影響で機材トラブルも増えたと『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)へ出演した際に語っていたように、アーティスト視点での危惧もある(※3)。気象庁が熱中症警戒アラートを出している際に野外でライブを行うことは、人命を考えたら危険だ。毎年、猛暑を記録する7月、8月に行われていたフェスも、今後は時期をずらしての開催となるイベントも出てくるかもしれない。

 さらには多様になった観客の様々な需要や価値観に応える取り組みも増えている。代金を上乗せすることでステージに近い良席で観られる「アップグレード席」もその取り組みのひとつだ。だが、そこにはまだ課題もある。例えばTWICEのスタジアム公演『TWICE 5TH WORLD TOUR ‘READY TO BE’ in JAPAN SPECIAL』では、“アップグレード席”が用意され、アリーナ席を保証。大多数の座席よりもステージに近い距離でライブを楽しめることが約束されていた。しかし、“一般席”の方がより近くでメンバーとコミュニケーションを交わせる演出があったことで、一部のファンからは不満の声もあがった(※4)。このような販売方法が増えてきたのはここ数年の話なので、運営側も試行錯誤をしている最中なのだろう。

 世間の価値観は数年で変化するし、文化も少しずつ変化する。アーティストもファンも運営も、その変化に対応したり考えたりする必要がある。不満が生まれることもあるだろうし、明確な答えは簡単には出てこないとは思う。だが一番にアーティストや観客を含めた“他者の尊重”を重視して考えれば、いつか最適解と言えるベストな選択が生まれるのではないだろうか。

※1:https://www.vogue.co.jp/celebrity/news/2018-01/26/jack-white
※2:https://x.com/saori_skow/status/501037799252824065
※3:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7f3c233c945924f295dea7cf06cb7a2cb7cd06b0
※4:https://realsound.jp/2024/07/post-1722148.html

ロッキング・オン・ジャパン企画制作 フェス公式X

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