Haruto Douzen、時代をリアルに描写する歌詞への共感 人間の狂気にフォーカスした最新曲「存在 -TSUMI-」を聴いて

 そんなHaruto Douzenの新曲「存在 -TSUMI-」は上述したコミカルな2曲とは対照的に、後悔や懺悔、そして赦しといった人間の業や根源に関わるシリアスなテーマで制作されている。誰かの心を傷つけてしまったり、あるいは自分自身を傷つけてしまうことで抱えてしまう罪の意識。特に楽曲終盤の〈赦して〉というフレーズを重ね続ける展開は、罪と後悔の意識を抱えた人間が自身の存在を肯定されたいがために、許しを乞い続ける狂気を浮かび上がらせる。

存在 -TSUMI- feat. 加藤はるか & 五阿弥ルナ

 楽曲中盤に〈君 恋ふ〉というフレーズが登場するが、この”恋ふ”は”乞ふ”が語源。相手の魂を乞うことが“恋ふ”であるという考えから生まれた言葉だが、許しを”乞う”この楽曲にこうした由来を持つ古語を選ぶのもHarutoのクレバーな言葉選びを感じると共に、日本語の美しさを表現したいという気概を感じさせる。こうしたシリアスな、しかし確かな誰しもが抱えるという意味で普遍性を帯びた贖罪と赦しというテーマを、ロック的なダイナミズムを帯びたトラックと張り詰めたメロディが一層切実に響かせる。

 「存在 -TSUMI-」の歌唱を担当するのは加藤はるか、五阿弥ルナ。仮歌シンガーとして数多くのメジャーアーティストへの楽曲提供に関わり、自身も楽曲提供やコーラス歌唱などで幅広く活動する加藤はるかの力強くも儚さを感じるファーストパートの歌唱は「存在-TSUMI-」の世界観にもマッチする。そんな加藤の歌唱を支えるのがセカンドパートの五阿弥だ。ドラマ『最愛』(TBS系)やアニメ『おそ松さん』などでその歌声に注目が集まっただけでなく、映画『シン・仮面ライダー』やアニメ『シャーマンキング』などの劇中歌やエンディング曲の作詞も担当するなど幅広く音楽活動を展開する五阿弥。過去にもHarutoの楽曲の歌唱を担当したこともあり、Harutoの強い信頼があってのオファーであったことが伺える。

 編曲アドバイス、そしてミックスを担当するのは田村信二。作編曲家でありプロデューサーとしてSMAP、鈴木雅之といったアーティストや『けいおん!』『アイドルマスター』といったアニメ作品への楽曲提供も多数手掛けてきた田村とHarutoは今回初めての共同作業。田村へのオファーはSNSでの繋がりがキッカケだったとのことで、このコラボレーションも国内外のアーティストとのコラボレーションを重ねてきたHarutoだからこそ出来たことだと言えそうだ。

 楽曲と同じく9月11日にYouTubeにて公開されるミュージックビデオはモーションキャプチャ技術を用いた3D制作を展開し、3Dアバターを用いたPV、MV制作を得意とする水月まるるが制作。こちらもHarutoがインターネットを介して水月の作品に触れたことがオファーのキッカケとなった。Makiedaによる3Dアバター”白乃枝”を主人公に据え、白乃枝の心象風景が3Dとなって浮かび上がりつつも、「存在 -TSUKI-」に込められた疾走感や孤独性も映像となることでより真に迫るミュージックビデオとなっている。

 これまでの制作スタイルを踏襲しつつも新しいHaruto Douzenの扉を開く「存在 -TSUMI-」。Harutoのキャリアの中でも重要な1曲になることは間違いないだろう。J-POPでありながらもワールドワイドにその存在感を高めていくHarutoの今後の活躍にも期待したい。

■リリース情報
「存在 -TSUMI- feat. 加藤はるか & 五阿弥ルナ」
各種配信:https://linkco.re/Hy2m88BA

Haruto Douzen 公式X

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