米津玄師、Number_i、aiko、ano、片寄涼太、離婚伝説……注目新譜6作をレビュー
ano「愛してる、なんてね。」
作詞はあの、作曲は尾崎世界観(クリープハイプ)が担当したニューシングル。カップリングには同曲のアンプラグド・バージョンがあり、これを聴くと原曲はアコギをジャカジャカ鳴らして作った歌ものだったのかもしれない。パンチのあるダンスミュージックに変えたのは編曲のケンモチヒデフミで、アッパーな四つ打ち、オリエンタルな鍵盤、銅鑼の音などで無国籍な風味をプラス。さらに白眉は歌詞で、〈ヘイトも傷もエンタメに全部書き換えてあげる〉の歌い出しは今の彼女にしか書けないもの。サビで〈みんな死ねなんて強がりすぎです〉と歌う曲もまずないだろうが、これがちゃんとラブソングに帰結しているのだから恐れ入る。(石井)
片寄涼太「tenkiame」
GENERATIONSのボーカリスト、片寄涼太のソロシングル。「tenkiame」は、NEWS、BE:FIRSTなどへの楽曲提供でも知られるシンガーソングライター eillが作詞作曲を手がけたミディアムチューンだ。ネオソウル〜R&Bのテイストを取り入れたトラック、しなやかなメロディとともに、〈振りかえると/あなた色に/染まっている私〉という切なくて愛らしい感情を映し出す。目の前で歌っているような親しみやすさ、声自体にグルーヴを宿らせるセンスが一つになったボーカルも印象的。彼自身のルーツと幅広いポップネスをバランスよく共存させた楽曲と言えるだろう。シングルCDには、片寄が生まれた1994年リリースのヒット曲「今夜はブギー・バック」(小沢健二 feauturing スチャダラパー)のカバーを収録。(森)
離婚伝説「まるで天使さ」
今年3月に出たファーストアルバムも話題沸騰中の二人組から届く最新の配信曲。初めて聴いたのに懐かしい、というより、誰かのカバーだったかな? と思うくらい既視感があるのだが、結局は誰でもない離婚伝説の新曲である。80’sシティポップや歌謡曲、AORやソウルミュージックを、ありったけの愛とロマンを込めて再現しているのだろう。間奏部分のギターソロも、今っぽさを狙うなら不要だが、この世界観においては必要。見えてくるのは、いなたくてもダサくてもいい、ポップスのロマンを信じている、という二人の信念だ。2回聴けば鼻歌になり、5回以上聴けば子供の頃から慣れ親しんできた夏の名曲のように感じられる。ものすごい刷り込み力。(石井)