米津玄師、Number_i、aiko、ano、片寄涼太、離婚伝説……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は米津玄師「がらくた」、Number_i「INZM」、aiko「skirt」、ano「愛してる、なんてね。」、片寄涼太「tenkiame」、離婚伝説「まるで天使さ」の6作品をピックアップした。(編集部)
米津玄師「がらくた」
6thアルバム『LOST CORNER』収録曲で、映画『ラストマイル』主題歌の書き下ろし新曲。ピアノをバックに静かに始まるバラードだが、最初のメロディを繰り返すと思わせておいて、いきなりマックスに盛り上がる25秒あたりのビブラートが圧巻。全編このテンションだと聴き手は疲れてしまうわけだが、感情を制御しながら言葉をそっと置いていく箇所と、ドラマティックなメロディに全身を委ね感情を爆発させる箇所の対比も美しい。タイトルの「がらくた」は具体的なモノではなく、この歌においては人間の欠落した部分を指すのだろう。それは“とても愛おしいもの”であると、説明的な歌詞ではなく、歌い終わりのニュアンスだけで完璧に伝えきっている。(石井)
Number_i「INZM」
8月16日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で初披露された直後から“ズマ”を連呼するサビによって瞬く間にバズった「INZM」は、神宮寺勇太のプロデュース楽曲にして、9月23日リリースの1stアルバム『No.Ⅰ』のリードトラック。ヘヴィロックとヒップホップを融合させたアレンジは、90年代後半に流行したミクスチャー系バンドのスタイルを踏襲。メンバー3人の強靭なラップ、〈全部背負って突き通すGo〉と強い決意を示すリリック、1分23秒あたりでいきなりビートのテイストが変化する構成を含め、これまででもっともアグレッシブな楽曲と言えるだろう。「ダサいのか、カッコいいのか」と賛否両論も起きているが、それもまた“攻めた”結果ではないだろうか。(森)
aiko「skirt」
逆回転のギターサウンド、憂いと妖しさを感じさせたパーカッション、うねりまくるベースライン。中期ビートルズもしくは80年代マンチェスターを想起させるイントロが耳に届いた瞬間、「これがaikoの新曲!?」と驚いてしまった。〈こんな星さよなら いつも苦しかったの〉というフレーズを奏でるボーカルは完全にaikoなのだが、サイケデリックな弦楽器と管楽器が加わると、「やっぱりこんなaikoは聴いたことない!」という衝撃が強まっていく。ニューアルバム『残心残暑』から先行配信されたこの曲は、明らかに彼女の新機軸(アレンジは島田昌典)。“らしさ”をしっかり残しながら、音楽的な表現はさらに奔放に。アルバムへの期待がさらに膨らむ楽曲だ。(森)