YOASOBIが贈る全ての人への“応援歌” 「舞台に立って」はスポーツの感動と興奮を彩る1曲に

 YOASOBIが7月26日に新曲「舞台に立って」を配信リリースした。

 『第33回夏季オリンピック競技大会』(以下、パリオリンピック)の開幕と同日に配信されるこの楽曲は、NHKの2024年度のスポーツ中継や番組を盛り上げる「NHKスポーツテーマ2024」として書き下ろされた新曲だ。『少年ジャンプ+』(集英社)で活躍する漫画家、タイザン5/桐島由紀/春野昼下がスポーツをテーマに描いた作品をもとに、作家の江坂純が小説を執筆。「舞台に立って」は、3篇の小説(『はなれたふたり』『パラレルレーン』『終わらないデュース』)を原作にして制作された。

 まずは原作小説のあらすじを紹介したい。

 『はなれたふたり』(原作マンガ:タイザン5)は、小学校の頃から同じサッカーチームでプレイしてきたキーパーの孝太郎とストライカーのスバルの成長物語。互いに切磋琢磨を続けてきたが、高校になると少しずつ実力差が露わになり、2人の関係にも変わっていく……というストーリーだ。

『はなれたふたり』

 『パラレルレーン』(原作マンガ:桐島由紀)の主人公は、1年前の夏に交通事故に遭い、右足を失った“元”水泳部のエース、夏凪漣。目標を失い、ふさぎ込む日々を送っていた彼のクラスに、生まれつき障害を持った鮫島伊吹が転校してくる。パラスイマーとして世界一になるという目標に突き進む彼女に刺激を受け、夏凪の気持ちにも変化が起きる。

『パラレルレーン』

 そして『終わらないデュース』(原作マンガ:春野昼下)は、世界大会テニス女子シングルス決勝における「フルセットのタイブレークで……デュース100点目!!」という状況から始まる。対戦しているのは、世界的スーパースターのメルル・アンジェリカとひたむきな努力で勝ち上がってきた山田イチ。“何年もタイブレークが続く”という設定はSF的にも思えるが、描かれているのはテニスという競技の面白さ、そして2人のプレイヤーの強い思いだ。

『終わらないデュース』

 設定やストーリーはそれぞれ違うが、競技者の葛藤や希望を映し出した3作の小説を元に制作された「舞台に立って」。この曲にもまた、アスリートの生々しい感情が反映されている。

 最初に聴こえてくるのはエレキギターのストローク、そして、〈無邪気に思い描いた/未来の私の背中を/ひたすら追いかけた〉というフレーズ。歌とギターで始まり、20秒過ぎにバンドサウンドへと移行した瞬間、心地よく、力強いグルーヴが立ち上がる。生々しいライブ感を放つ音像、煌びやかで鋭いギターの音色もそうだが、かなりロックに振り切った楽曲に仕上がっている。リスナーのテンションをしっかり上げてくれる楽曲と言えるだろう。

 もちろんメロディはきわめてポップ。ikuraの声の中に存在するエモさ、キュートさを際立たせ、楽曲のコンセプトを的確に表現した旋律からは、Ayaseのメロディメイカーとしての才能が改めて伝わってくる。ビートを的確に掴み、言葉の響きと意味合いをバランスよく伝えるikuraのボーカリゼーションも素晴らしい。

 そして、歌詞にもぜひ注目してほしい。中心にあるのは、前述の通り、アスリートの生々しい感情。〈勝ち負けがはっきりある世界は/好きだけじゃ生き残れない〉というフレーズからもわかるように、アスリートの悩みや葛藤を含んだリアルな思いをダイレクトに映し出している。そして最後に辿り着くのは、大舞台に立ったときの心情。それを象徴しているのは〈未来の私はもうそこにいるんだ〉というラインだ。比喩やギミックに頼らないシンプルかつ直接的な表現は、幅広い年齢層のリスナーにアピールできるはず。世界的なスポーツイベントに相応しい、チアフルかつパワフルな楽曲と言えるだろう。

関連記事