チャットモンチー、サンボマスター、THE BLUE HEARTS……カバーCMソングで蘇る平成の名曲たち
今夏は平成リバイバルのムーブメントが活発だ。着うたで絶大な人気を誇った西野カナの活動再開や、アニメに映画にドラマと様々な平成の映像作品を主題歌で彩ってきたAqua Timezの再結成など、アーティストのトピックスとしても平成を想起させるものが数多い。顕著なのはCMにおける平成ソングのカバーだ。平成の世を音で彩った名曲が令和6年の今、時代を超えてお茶の間に届き、愛されている。
サントリー「GREEN DA・KA・RA やさしいルイボス」のCM『チャリを洗う』篇、『果てしねぇ空』篇ではチャットモンチーが平成19年(2007年)にリリースした楽曲「とび魚のバタフライ」のカバーソングが起用されている。歌唱するのは、サバシスターのなち(Vo/Gt)だ。CMでは映像の主演を務める臼田あさ美もアカペラで歌っているが、なちによるカバーは原曲の持つパンキッシュな部分はそのまま引き継ぎつつ、チャットモンチー 橋本絵莉子(Vo/Gt)による幼さやあどけなさが漂うムードと比べると、より凛とした空気も感じさせるカバーとなっており、それはまるで大人がふと夏空を見上げたような、CMのストーリーともしっかり符合する。Hi-STANDARDから影響を受けてバンドを結成し、ロックシーンにおける女性バンドの在り方を根底から覆したチャットモンチーの楽曲を、同じくHi-STANDARDから影響を受けてバンドを結成し、横山健が設立したPIZZA OF DEATHに所属するサバシスターのなちがカバーする、という流れにも否応なくエモーショナルな気持ちを抱いてしまう。
ロッテのアイスクリーム「クーリッシュ」のテレビCM『青空カラオケ』篇には、サンボマスター「できっこないを やらなくちゃ」が起用されている。平成22年(2010年)にリリースされた曲でありながら、リリース当初のCMタイアップに加え、2018年にはドラマ『チア☆ダン』(TBS系)のイメージソングにも起用。さらに同年にはJR東日本グループの企業広告CMソングにも抜擢されるなど、サンボマスターを象徴するような1曲だ。原曲はサンボマスターらしく強いメッセージを届ける歌詞とサビで最大級に熱量がドライブするアレンジが印象的だが、同CMでの俳優の藤原大祐によるカバーはより潔く爽やかな歌唱が特徴。弱冠20歳でありながらも堂々とした芯を感じる歌唱は、藤原がこれまでドラマや映画への出演を経て培ってきた経験の表れだ。夏らしく、そしてアイスクリームのCMに相応しい爽快感は、カバーかつこの映像だからこそと言えるだろう。