2024.07.21 20:30

七海うらら、アマチュア配信者の悩みに真剣アドバイス　コンテンツ制作や音楽活動への向き合い方のコツとは？

文・取材＝北野創

「私にとっての歌う理由は“救い”」（七海）

七海うらら「感情革命ロックンロール」

ーーここからは七海さんの新曲「感情革命ロックンロール」についてお話を聞いていきます。こちらはTVアニメ『未来の黒幕系悪役令嬢モリアーティーの異世界完全犯罪白書』の主題歌ということで、自身初のアニメタイアップ曲になりますね。

七海：私は小さな頃からアニソンシンガーになるのが夢だったんです。『マクロスF』のシェリル（・ノーム）とランカ（・リー）、特に声優さんでありつつ楽曲も歌われている中島愛さんにすごく憧れて、アニメ自体も好きでしたし、カラオケでもアニソンばかり歌っていて。アニマックス主催の「全日本アニソングランプリ」に応募したこともあるくらい、ずっと目指していたものだったんです。

ーーアニメ音楽がご自身の音楽活動のルーツでもあったんですね。

七海：はい。学生時代に軽音楽部に入ったのも『けいおん！』やバンド系のアニメがきっかけでしたし、それこそ「歌ってみた」でボーカロイドのGUMIちゃんの楽曲をよく歌っていたのも、中島愛さんがGUMIちゃんの声の元になられている方というのがあって。アニメ自体に影響を受けてきた人生だったので、今回のアニメタイアップでやっと夢を掴めた気持ちがあります！

ーー「感情革命ロックンロール」はどのように制作を進めたのでしょうか？

七海：楽曲自体はTomato Factoryさんが、作品のイメージというよりもギターの強い曲ということで作ってくださったのですが、自分が原作を読んだときに感じた「こういう雰囲気を盛り込んでほしい」というキーワードをお渡ししたので、よく聴くと作品の要素も感じられると思います。明るく爽やかというよりは、結構ドスの効いたロックンロールになっていて、自分の中では低めのトーンの楽曲になりました。

ーーワイルドかつ疾走感のあるロックチューンに仕上がっていて、アニメのオープニング然としていますよね。

七海：そうなんです！　この曲、知らない人が聴いても「アニメのオープニングっぽいね」という感想を抱くと思うんです。私はファンの方から「低音の歌声が好き」「かっこいい感じが好き」と言われることがよくあって、女の子らしい曲もあるけどイケメンなところもあるギャップを喜んでもらったりもするのですが、この曲は完全にイケメンしかいないので、逆に女の子にキュンとしてもらえるんじゃないかと思います（笑）。

はらまき：めちゃめちゃ楽しみ！　アニメの放送が始まったら目をハートにして聴きます！（笑）。

ーーこれまでの自分の活動を踏まえたうえで、新しい自分を表現できたと感じる部分はありますか？

七海：自分の地声の限界値まで迫力重視で挑みました。いままではミックスボイスと呼ばれる裏声と地声を混ぜた歌い方をよくしていて、爽やかさを重視していた部分があったのですが、今回はドスが効いた歌い方、がむしゃらに張り上げるかっこ良さにフォーカスを置いていて。その感情マックスな感じは楽曲タイトルにも表れていると思います。

ーーたしかに。がなり系の歌い方をされていて、ここまでアグレッシブなアプローチは珍しいなと思いました。

七海：しゃがれた感じですよね。これまでも低い音域の曲を歌うことはあったのですが、その場合も自分の音域に合わせてキーを調整することが多くて。今回はこの曲が持つ疾走感をベストで表現するために、あえてキー設定を留めたので、自分にとってかなり喉を酷使するキーだったのですが、喉も魂も削りながら歌ったので、魂はかなりこもっていると思います！

ーーメリハリのある楽曲の展開に合わせて、歌の表情がさまざまに変化していくところも聴きどころです。

七海：出だしからガツンとくるフレーズで、Aメロで少し落ち着いたかと思ったら、Bメロで声にディストーションのエフェクトがかかって、サビでバーン！と弾ける。そういった起承転結があるなかで、Aメロの引きの部分は「（アニメの）主人公がひねくれて世界を見ている感じを声に乗せたい」とディレクションをいただいて、あえてやさぐれた感じで歌ってみたり、いろいろ試して今の形に落ち着きました。

ーー七海さんは“七色の歌声”と呼ばれる声の表現の豊かさが特徴ですが、その歌唱スタイルはどのように確立されたのでしょうか。

七海：私は地声が結構低くて、よく親や友達に「（声優で）男の子の声もできるんじゃない？」と言われていたこともあって、声の低さを活かした活動をしたいなと思って、バンドをやっていたときも、男性ボーカルの楽曲のカバーをしていたくらいだったんです。ただ、いまの活動を始めてから「楽曲を最後まで聴いてもらえない」という壁に直面して。それで考えたのが「味変をする」ということだったんです。

ーー味変ですか。

七海：いまはショート動画が流行っているなかで、リスナーは良くも悪くも「聴く・聴かない」の判断が速いので、聴いていて「飽きない歌」にするためにはどうすればいいかを考えた結果、1曲の中でいろんな歌い方をしたり、あえて高い声と低い声を何度も切り替える歌い方を実験的にやってみたら、それがすごくハマって。そこから意識的にいろいろ取り入れるようになりました。でも、いわゆる「お姉さんボイス」や「少年っぽい声」みたいに歌い分けるのではなくて、「楽しそう」とか「悲しそう」みたいに感情の振れ幅の上下を変える感じなので、たまに「別に七色の歌声じゃなくね？」っていうコメントを見かけることもあるんですよ。

はらまき：いや！　“七色の歌声”ですよ！

七海：ありがとうございます（笑）。でも、フルサイズでじっくり聴くと歌い方が全然違うところがたくさん出てくる展開にしているので、自分としては味変として成り立っていると思っていて。そういう歌い方を意識し始めてから動画をより多く見てもらえるようになって、いまのスタイルになりました。

涼：今のお話、すごく共感できます。僕は声劇で王子や頭首といったカテゴリーの役をいただくことが多くて、そういうアイデンティティからなかなか抜け出せない時期があって。でも、最近は悪魔の役や三枚目の役柄にも挑戦するようになって、自分の声の幅が広がるようになったんですよね。それが声劇のおもしろい部分で、さっきのうららさんの例えじゃないですが、自分の「キャラの味変」をできるようになって。

やまだ：自分も声劇で普段の自分とは全然違うタイプの役柄をやり切ってすごく楽しかった経験があるので、いまの話を聞きながら「わかるわー！」って思った。

ーー七海さんはそのように声の表現の幅を広げていくなかで、歌を歌うにあたってどんなことを大切にしていますか？

七海：誰しもが辛いことやマイナスなことを原動力にしていく経験があると思うのですが、私も「自分の人生を引っ提げて歌っていく」ということを軸として持っていたいと考えています。自分自身ががんになって闘病生活を送っていたとき、痛み止めの点滴を打っても痛みが和らがない時期があったのですが、そんなときに個室で自分が好きなアーティストの曲を流してもらうことで、痛みが一時的に和らぐじゃないですけど、安心できたり眠ることができたりした経験があって。エンタメには心情的にも身体的にも一種の救いみたいなものがあると思うし、私にはその実感があるからこそ、「自分も与える側になりたい」という気持ちが根本にあるんです。だから私にとっての歌う理由は、大げさに言うと「救い」で、誰かに元気になってもらいたい気持ちが一番にあります。

ーーそれが音楽を通して七海さんがやりたいことなんですね。

七海：はい。自分が救われた分、皆さんにも良い影響を伝播させていきたいです。自分の境遇が特別というよりは、皆さんもいろんな経験をされていると思うので、自分ごとのように捉えてもらえたいですし、そこから影響を受けて夢を目指す方がいたらすごく嬉しいです。最近、私の活動に影響を受けて新しいことを始めたと報告をしてくれるリスナーさんが増えていて、私自身、やっていて良かったと思いますし、きれいごとに聞こえるかもしれないけど「歌で人を救える」ということを実感しています。

ーー素敵なお話じゃないですか。

七海：ありがとうございます！　VTuberや配信者のなかには、キャラクターを作り上げてそれを演じるタイプの方もいらっしゃると思うのですが、私にはそもそも「活動を辞める・辞めない」や「引退」という概念が自分の中にはなくて、生きているうちはずっと「七海うらら」だし、歌える限りはずっと歌うつもりでいて。その意味でも「自分の人生を引っ提げて歌っていく」という気持ちがあります。

はらまき：私もうららさんの活動を見ていて、「人生は短いから毎日がむしゃらに生きよう」って改めて痛感させられました。

涼：うららさんが、HoneyWorksさんの楽曲の〈今日は残りの人生最初の日〉という歌詞を胸に生きている、という話を以前に知って、僕もすごくいい言葉だと思ったんですよね。その日その日を「残りの人生最初の日」と思って生きていけるモチベーションがすごいなと思いますし、自分もエネルギーをもらっています。

ーーそのフレーズは、LIP×LIPの楽曲「この世界の楽しみ方」の歌詞ですね。七海さんはHoneyWorksさんの楽曲もよく「歌ってみた」で取り上げられていて。

七海：そうなんです！　LIP×LIPさんは夢を追うときに背中を押してもらえる存在で。HoneyWorksさんの楽曲は長年歌っていますし、いまではメンバーさんと仲良くさせていただいているので、将来的には自分もフィーチャリングとかで携われたらいいなと思っています。

ーーそれは楽しみです。最後に七海さんから配信者の皆さんに向けて、配信を続けていくためのアドバイスをいただければと思います。

七海：私も一気に伸びたと言っていただくことが多いのですが、それまでにやってきたことの量がすごく多いので、自分が一発当たったという自覚はまったくなくて、「やっと人に見つけてもらえた」くらいの気持ちだったんです。もちろん運もあると思うのですが、運を引き寄せるには努力と継続が必要だと思っていて。そんななか、配信活動はすべてが数字で見えるので、どうしても数字にモチベーションが左右されることがあると思うのですが、私は自分が目指している場所がどこなのかを常に意識して、目の前のリスナーさんに確実に魅力を届けられる工夫が一番大事だとずっと思っています。もちろん登録数や大きな目標を掲げることも大事ですが、自分自身や自分の身の回りの人を楽しませられているか。そういう目線も持って活動することが大事だと思います。

ーー自分自身が楽しみながら活動するのが一番だと。

七海：それって言葉にするのは簡単ですけど、大変なことというのはわかっていて。誰かと比べるのではなく、自分のやりたいことをできているか。自分の中の目標にたどり着けるか。そういう部分に焦点を置くのが一番いいと思います。

ーーということですが、配信者の皆さん、今回は七海さんと直接お話してみていかがでしたか？

涼：……いやあ、感動しっぱなしですね。

はらまき：こうしてお話しできて、本当に贅沢すぎる時間でした！

やまだ：自分も普段はラップの曲をやっていますけど、最近、かわいい系の曲を作って楽曲提供する話を裏で進めていて。かわいさだけでなく、その裏に強さがある表現のイメージが、今日のうららさんの話を聞いてさらに広がったし、うららさんとお話できたことはすごく大きかったです。

七海：ありがとうございます！　私、こんなに褒められていいんですか？　家族にはボロカス言われながら活動しているので、本当にご褒美です（笑）。

はらまき：いやいや、この時間が我々のご褒美なので。

やまだ：間違いない！本当に貴重な時間やったなあ。

はらまき：あっという間の時間で、体感1秒でした！

■七海うららリリース情報