百田夏菜子、人生の大きな決断を経た29歳から“ゆとり”ある30歳に アイドル&俳優の両軸でさらなる高み
「私も来年30歳になるので、結婚も身近に感じるようになりました」
ももいろクローバーZの百田夏菜子は、結婚情報誌『ゼクシィ国内リゾートウエディング 2023 Summer&Autumn』(2023年/リクルート)の表紙を飾った際、このようなコメントを寄せた。その約7カ月後の2024年1月11日、百田はKinKi Kidsの堂本剛との結婚を発表した。
7月12日に30歳の誕生日を迎えた百田。彼女の29歳での一番のトピックはやはり結婚になるだろう。しかし、クローズアップされるべき活動はもちろんほかにもある。
なかでも、2021年以来となる自身2度目のソロコンサート『Talk With Me Xmas Night 〜シンデレラタイム〜』は、アーティストとしての成長を感じさせるステージングとなった。ももいろクローバーZの公式YouTubeチャンネルでは、同イベントのパフォーマンスの一部を公開。その映像で際立っていたのは、「それぞれのミライ」での安定した歌唱である。これは、ボーカリストとしての百田の評価を一層高めるものとなった。コメント欄でも、音程の安定感など技術の高さに驚く声や、聴く者を包み込むような雰囲気に「安心感を覚える」といったものまで、さまざまな感想が投稿された。
振り返れば、2021年に開催された『Talk With Me 〜シンデレラタイム〜』でも百田は自身が作詞作曲も手掛けた「ひかり」をピアノの弾き語りで披露した。2023年開催時も作詞した「クリスマスしよ♡」を発表しているなど、彼女にとってのソロコンはアーティストとしての力を発揮/発見させる貴重な場になっており、今後も開催が待ち望まれる。
また百田の29歳での仕事で興味深かったのは、俳優 のんと対談を行った番組『スイッチインタビュー』(NHK総合)だ。百田はここで、ももいろクローバーZのメンバーとしての戦い方に変化があると語っていた。のんが「殺気を出してたってことですね?」と尋ねていたように、百田はかつて何事にも十分な戦闘態勢で挑んでいたという。しかし、「ちょっと緩めてもいいかなあって」と、あえて気持ちにゆとりを持たせることの大切さに気づいたのだそう。
たしかに、百田はストイックなアイドルだ。書籍『ももクロ改』(2018年/日経BP)掲載のインタビューでも百田は、日本語吹替版の声優を担当した映画『ブラックパンサー』(2018年)の仕事などの多忙さもあり、同年開催のバレンタインイベント『ニッポン放送 ももいろクローバーZ ももクロくらぶxoxo ~バレンタイン DE NIGHT だぁ~Z!2018』の準備段階でメンバーと合流することがなかなか叶わず、準備ができる機会も作れずに焦りがあったと話していた。それでも「中途半端なモノを見せるくらいならやらないほうがいい」「時間がないなかでも『完璧に仕上げてみせる』と意気込んでいました」と振り返っている。そして百田は、メジャー2ndシングル表題曲「ピンキージョーンズ」の歌詞にある〈逆境 こそが チャンス〉を引き合いに出して、「全部ポジティブに考えようと思っていて」と話していた。
「ちょっと緩めてもいいかな」という発言は、そのようにずっと押せ押せで進んできたからこそ覚えた“緩急のつけ方”ではないだろうか。『スイッチインタビュー』で「年々、『そこまできりっとしなくても大丈夫だよ』って(当時の自分に)言ってあげられる時があって。今はより自然にいられる」と口にしていたが、アイドルとしても、そして人間としても、しなやかさが必要であると気づいたのだ。たしかに前述した『Talk With Me Xmas Night 〜シンデレラタイム〜』のパフォーマンス映像を観ると、歌にも柔らかさがにじみ出ているように映る。もちろん、どんな物事にも強さは必要だ。ただそれだけではいずれ通用しなくなる。どんな仕事にも言えることだが、年数を重ねるにつれていろいろな“幅”が求められるようになる。百田の心境の変化はその点、今後の彼女に非常にいい作用をもたらすのではないだろうか。そしてなにより、そういったことが同番組で宣言していた「“アイドルを続けたい”っていうよりは、“アイドルでいたい”って思います」という気持ちを実現可能なものにするはずだ。