Hilcrhyme『リサイタル 2024』で踏み出した未来への一歩 “今”に続く15年が色濃く詰まった一夜に
6月29日、Hilcrhymeがメジャーデビュー15周年記念公演『リサイタル 2024』を東京・日比谷野外大音楽堂で開催した。この日の公演では、メジャー1stアルバム『リサイタル』を携えて2010年2月から3月にかけて行われた同名の初ツアーを再現しながら、同時に現在のHilcrhymeを提示して未来への一歩を踏み出すという意味合いを持つライブとなっていた。
開演ブザーを合図に、ステージ上のスクリーンに映し出された真紅のドロップカーテンが開くと、美しいオーケストレーションで期待を煽る「~OPENING~」でライブはスタート。指揮棒を持ったTOCが勢いよく登場し、「リサイタル~ヒルクライム交響楽団 作品第1番変ヒ短調~」を奏でだす。その場を熱くコンダクトしていく強靭なラップに、総立ちのオーディエンスがハンズアップして応戦する。曲中の〈今日はもう壊れちゃっていーよ〉のフレーズが最高の1日を予感させる。「遊ぼうか日比谷!」の一言と共に郷愁感を携えた「チャイルドプレイ」を経て、最初のMCへ。
「2010年に行ったツアーの再現公演です。つまりほとんどの方がセットリストをわかってるはずだから、今日はみんなで一緒に歌いたいんですよ。この日比谷の野音で。一緒に歌ってくれる?」
湧き上がる大きな歓声に笑顔を見せたTOCは「もうバイバイ」をドロップし、会場を切ないムードに包み込んでいく。メジャー初のツアーだっただけに曲数が足りなかったことから盛り込むことになったというインディーズ時代の楽曲「ヒルクライマー」「ライジングサン〜電光石火〜」。前日の大雨から一転して晴天となったことを噛みしめつつも、「15年前の俺はこう歌ってた。“雨天も悪くないな”と」と当時を回想しながら歌われた「雨天」。「15年の間には雨が降ってる日もあった。それでも今、こうやって晴れ渡ってまた野音に立ってる。ありがとうね。俺と共に進もう」と感謝の言葉を添え、いくつものトーチが灯る中で届けられた「LAMP LIGHT」と、楽曲にまつわるエピソードを語りながらプレイされる名曲の数々に、15年分の歴史が鮮やかに蘇っていく。
「そろそろギアを上げていこうか!」と煽り、熱い会場にさらなる燃料を注ぐべく「RIDERS HIGH」「射程圏内 feat.SUNSQRITT」というハードナンバー2曲を投下。2010年の『リサイタル』ではバンドメンバーやフィーチャリングアーティストとしてSUNSQRITTを迎えて披露されていた2曲だが、今回はTOCによる独演となった。ヘトヘトになり「ガス欠です」と言いながらも、たった1人でその場を掌握し、際限なく盛り上げ続けていく姿には、15年もの間、Hilcrhymeとして闘ってきた男としての矜持と、新たなる覚悟と決意が滲んでいたように思う。「1人でも限界は超えられるんですよ!」の一言に痺れた。
大合唱を巻き起こしたバラード「Please Cry」では野音に涙の雨が降りしきる。かと思えば、ゲストとしてBOXERを迎えた「イバラの道 feat. BOXER」では再び熱いパフォーマンスと強いメッセージでフロアを揺らす。そんないくつも用意された心地よい緩急こそが、観る者を引きつけ離すことのないHilcrhymeのライブの真骨頂だ。
過去のライブ映像をまとめたインタールードを挟むと、TOCが客席中央にセッティングされたセンターステージに登場。距離がグッと縮まった状態に否応なしにテンションが上がるオーディエンスを前に「East Area」「Little Samba~情熱の金曜日~」「♪メリーゴーラン♪」の3曲を披露していく。しゃがみ込み、最前列の観客に顔をグッと近づけてラップを届けてみたり、客席に向けて手を招きステージへ上がるように促したり、サングラスを外してパフォーマンスしたりと、その圧巻のラップスキルとフレンドリーな一挙手一投足に大きな歓声が沸き上がった。一人ひとりと目を合わせながら歌うTOCもとんでもなく楽しそうだ。