マカロニえんぴつの発展し続けるポップミュージック EP『ぼくらの涙なら空に埋めよう』全曲解説

マカえん、メジャー4th EPレビュー

 マカロニえんぴつがメジャー4th EP『ぼくらの涙なら空に埋めよう』をリリースした。「忘レナ唄」(TVアニメ『忘却バッテリー』エンディング・テーマ)、「月へ行こう」(映画『FLY!/フライ!』日本版主題歌)、「poole」(はっとり、小芝風花が出演しているコカ・コーラ「紅茶花伝」CMソング)、新曲「JUNKO」を収めた本作。とんでもなく豪華なタイアップに目を奪われそうになるが、じっくりと1曲1曲を聴けば、このバンドの音楽性がさらに自由奔放に広がっていることを実感してもらえるはずだ。

 まずは昨年から今年にかけてのマカロニえんぴつの活動を振り返っておきたい。2023年8月に2ndフルアルバム『大人の涙』をリリース。「リンジュー・ラヴ」(ドラマ『100万回 言えばよかった』主題歌)、「愛の波」(ドラマ『波よ聞いてくれ』主題歌)などの話題曲のほか、メロディックパンクの要素を大胆に取り入れた「Frozen My Love」、ヤユヨのリコ(Vo /Gt)をフィーチャーした歌謡曲ナンバー「嵐の番い鳥」などを収録した本作は、ポピュラリティと音楽的トライアルを刺激的なバランスで共存させたアルバムとして高い評価を得た。さらに本作を携えてバンド史上最大規模のアリーナツアーを開催し、ライブのスケールを引き上げてみせた。

 今年2月には初の海外ライブを韓国単独公演として開催。そして3月からは全国ライブツアー『マカロックツアーvol.18 ~わたし、しばらく家を出ます!don’t call マザー☆鈍行27本ツアー~』がスタート。全国23都市・27公演はバンド史上最多、そのうえで全公演ソールドアウトさせた。つまりマカロニえんぴつは、“ライブの規模を上げる”、“ツアーも積極的にやる”、“音楽性の幅を広げて、クオリティを上げる”ということだけをひたすらやっているのだ。バンドとして、これ以上ないほど真っ当な姿勢だと言うしかないだろう。

 では、新作EP『ぼくらの涙なら空に埋めよう』の収録曲について記していきたい。まずは「忘レナ唄」。ドラムとギターから始まり、はっとりの〈やぁ、望んだ砂は掴めたかい?〉という歌い出しでグッと心を掴まれるロックチューンだ。最初の8小節(イントロを含めると10小節)はドラム、ギター、歌のみ。曲が進むなかでベース、リードギター、鍵盤が重なる構成は、“仲間が一つになっていく”感じがあり、それはそのまま『忘却バッテリー』の物語、そして、バンドという形の尊さにつながっている。ギミックを使わずシンプルに徹したアレンジ、夢を追いかけることのすごさ、怖さ、素晴らしさを描いた歌詞も鮮烈だ。

マカロニえんぴつ「忘レナ唄」MV

 一瞬のブレスの後に聴こえてくる〈嵐の夜にそっときみを連れ出して〉というラインから始まるのは「月へ行こう」。鋭利な響きと厚みのある音圧を同時に感じさせるギター、スラップと指弾きを交えた多彩なトーンが印象的なベースプレイ、シンセやメロトロンで楽曲に彩りを与える鍵盤など、メンバー全員の個性が存分に発揮されているのもこの曲の魅力だ。メジャー調からマイナー調に移行するサビのメロディもそうだが、随所に音楽的なテクニックが施されていることにも注目してほしい。

マカロニえんぴつ「月へ行こう」MV

 新曲「JUNKO」は高野賢也(Ba)が作曲を担当。鍵盤、ベース、ドラムのポリリズム的なイントロから官能的なジャズサウンドへと移り変わったと思ったら、Bメロでは流麗でゆったりとしたメロディが広がり、〈栗をトングで拾って萌えアガる〉というキャッチーなラップを挿入。さらにロックンロール的なギターソロからアシッドフォーク的なテイストの落ちサビも。あまりにも幅広い音楽要素を自在に取り込みながら、誰もが楽しめるポップスへと結びつける構成は、マカロニえんぴつのアレンジ巧者ぶりを改めて証明している。大人になった〈ボク〉が〈初恋の潤子せんせ〉を思い出す歌詞の切なさもいい。

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