Nothing's Carved In Stoneの止まらぬ進化 EP『BRIGHTNESS』で手にした新たなプロセスを語る
歌詞にも表れた“前向きで力強い”バンドの今のモード
――制作にはどれくらい時間をかけたんですか?
生形:めちゃくちゃかかりました。もともとはアルバムを作るつもりでしたから。途中で作りきれなくてこれになった。時間が足りなくて。でも、そのぶんよくなったよね?
村松:よくなったと思う。
生形:さっき言ってくれたように一曲一曲が濃くなったし、余計なものがないものになった。
――最初にできたのって、どの曲だったんですか?
村松:「Dear Future」と「Freedom」と「SUNRISE」かな?
生形:2回に分けて録ったんですよ。その3曲が去年で、残りの4曲が今年の頭でした。
――その3曲って、今作のなかでもかなり新鮮な手触りがある曲たちですよね。
村松:うん、めちゃめちゃ新鮮でしたね。ただ、2期に分けて録っているから、そのあいだに更新されて、次の4曲はまたさらに感覚が変わってたりするんですけど。
生形:あと、今回アレンジャーを入れたんですよね。「Dear Future」と「Freedom」と――。
村松:「Will」。
生形:それも自分たち的に新しい試みとして。『ANSWER』までは完全に4人でセルフプロデュースで作ってきたから、アレンジャーを入れてやったことがなかったんです。でも、このタイミングで一度やってみようと思ってやってみて、すごくよかったですね。
――実際どうでした? アレンジャーさんと一緒に曲を作っていくっていう作業っていうのは。
村松:すごく勉強になりましたね。今回akkinさんと(Naoki)Itaiくん、ふたりのアレンジャーさんにお願いしたんですけど、それぞれの個性が加わってくるっていう。もちろんNothing's Carved In Stoneとして出すものなんですけど、そのふたりの別々のカラーがしっかり曲として出てるっていうのがよかったんじゃないかな。もうひとりのメンバーくらいの立ち位置までいけると思うんですよ、プロデューサーやアレンジャーって。そこのバランスを見てくれる感じもとてもよかった。
――そもそもずっと4人でやってきて、今ももちろん4人でできるわけじゃないですか。でも今回アレンジャーを招いてやってみようと思い立ったのは、どういう理由だったんですか?
生形:周りの意見もあったし、自分たちのキャリアもだいぶ長くなってきて、下の世代に数えきれないほどバンドが出てきた時に、いろいろな人の意見を聞きたいなって思ったんです。それでワーナーにも相談をして。
――バンドとしてさらに一歩先に進んでいこうという意思があった?
生形:めちゃくちゃあります。新しいものに俺らは今もすごく貪欲だし、海外のアーティストも若いプロデューサーと一緒に作ったりするじゃないですか。そういう感覚を自分たちも持っておきたいな、と。とはいえ、半分以上は今までみたいに全部自分たちで作った曲だし、作品を通してもそのバランスがよかったかなと思っています。
――「Will」はどうやってできたんですか?
生形:これは俺が2、3年前に作っていた曲で。『ANSWER』の時も候補にあったんですけど、結局その時は(収録するのを)やめたんですよ。それを今回入れようってなった。これはakkinさんと一緒にやったんです。akkinさんに俺らが作ったデモを渡して、やり取りをしていって。最初はここまで壮大じゃなかったよね?
村松:そうだったね。
生形:すごく壮大にしてくれたし、エモい曲になったなって。
――こういうサウンドも今のナッシングスとして出せるし、Itaiさんもヒットメーカーじゃないですか。そういう方たちと組んでも今なお新しい表情が出てくるし。バンドとしての懐が一気に深くなった感じがしますよね。
生形:本当に。たった3曲だけどめちゃくちゃ勉強になった。「こんな録り方もあるんだ」とか「こういう解釈の仕方もあるんだ」とか。ふたりともプロフェッショナルでした。
――そこの開き方がすごく新鮮というか、意外と言えば意外なんですよね。4人で突き詰めていく美学もあるし、ナッシングスはこれまでそこでやってきたバンドだったから。
生形:でも、たぶん5年前だったら無理だったね。
村松:うん、無理だった(笑)。でも、大元はガッチリ作って渡していたから、そのバランスもよかったのかもしれない。
――そうやってサウンド的にも開けていっているし、歌詞もそうですよね。『BRIGHTNESS』というタイトルの通りですけど、「未来」とか「自由」とか、そういう言葉がたくさん出てきて。すごく前向きなものになっていますよね。
村松:そうですね。今回、ひなっちが書いてきた歌詞もあったりして、今まではあまりなかったことなんですけど。
――へえ、どの曲ですか?
村松:「SUNRISE」ですね。あと「Challengers」のサビの後半の日本語とかもひなっちが俺に渡してくれたものが元になってるんですけど、それも「自由」とか「立ち上がれそう」とか、そういう前向きな言葉ばっかりで。真一や俺が書くような言葉と全然齟齬がなかった。そういうモードなんですよね、バンドが。
生形:うん。今話していて思ったけど、やっぱり最初に思うことを最初のほうの曲に書くじゃないですか。アルバムでたくさん曲を作っていくと、ちょっと違った自分も出てきたりするんだけど。今回ひなっちがアイデアを持ってきた歌詞の曲もあって、やっぱり最初に自分たちが思っていることがそういうことだったんじゃないかなって。前向きですよね。前向きだし、力強い。自分たちで言うのもアレだけど(笑)。すごくバンドの状態が出ている気はします。
――「Blaze of Color」とかもすごくよくて。情熱的ではあるけど、でもその情熱は決死の覚悟で飛び込んでいくようなものではなくて、「ちゃんと続けていくんだ」っていう気持ちも感じられる。この4人でナッシングスをやっていくということに、特にこの5年間を経てより確信を持てているのかもしれないですね。
生形:うん、そうですね。