スターダスト☆レビュー 根本要、デビュー40年経て100本超えのツアーを行う理由 療養中のVOHへの思いも
今年もまた、スターダスト☆レビューのライブを画面を通して楽しめる幸せを噛みしめよう。現在進行中のツアー『ブギウギ ワンダー☆レビュー』の終盤、5月12日の東京・昭和女子大学 人見記念講堂でのライブが、WOWOWで生中継されることが決まった。デビュー40年を超えた今もなお、毎回100本を超えるロングツアーに出るバンド、スタ☆レビの本領は「毎日違うものを見せたい」(根本要)というライブの現場でこそ発揮されることは言うまでもない。
パーカッションとコーラスを担当する林“VOH”紀勝の病気療養という不測の事態を受け、それでも走り続けるバンドの意志について、ミニアルバム『ブギウギ ワンダー☆レビュー』について、そして生中継ライブに向けた思いについて。リーダーの根本要に語ってもらおう。(宮本英夫)
毎日演奏しながら、スタ☆レビのブギウギを探している
ーー今回の『ブギウギ ワンダー☆レビュー』ツアーは、足掛け3年で110本ですか。前回のツアーも100本超えでしたし、40周年を超えてなお、本当にスタ☆レビのタフさには驚かされっぱなしです。
根本要(以下、根本):これは以前からお話しているんですけど、一生懸命作ったアルバムのツアーを、たかだか2~3カ月ぐらいで終わらせるのはすごくもったいないと思っていて、「ツアーを長くしよう」とずっと言っていたんです。半年ツアーをやれば、少なくとも半年間は新しいアルバムの話ができるし。で、今回はたまたまコロナ禍ということもあり、先も見えないのでのんびりやろうと2022年から始まって足掛け3年になりました。僕らのライブは、土日公演が多いのでそんなに忙しい感じもなくやれてますよ。以前は平日もライブをやってたので、20日間ぐらい出っぱなしみたいなこともあったけど、今は金曜日に出て月曜日に帰ってくるパターン。休みも適当に取れるし、そんなに大変だとは思わないですね。ただ、なかには移動が嫌いな人もいるみたいですよね。この間もあるミュージシャンに「この移動に耐えられるのは才能ですよ」と言われたけど、だとしたら、うちのメンバーは音楽的才能よりそっちの才能に恵まれたのかも(笑)。スタッフも同じ気持ちで頑張ってくれてます。
ーーツアーのスタートに合わせて、同名のミニアルバム『ブギウギ ワンダー☆レビュー』をリリースしましたけど、これがバンドの初期作品を、ビッグバンドジャズやブギウギのスタイルでリメイクしたセルフカバー作。とても新鮮でした。
根本:元々は、アルバム発売に伴うツアーをもう40年近くやってきたので、「今回はアルバムを持たずにツアーに出よう」ということから始まったんです。まずツアータイトルとして『ブギウギ ワンダー☆レビュー』という言葉がマネージャーから出てきて、みんながそれを気に入ったのですが、スタッフからは「だったらこういうタイトルのアルバムがあったら面白いんじゃないか?」と。ただ制作期間も限られているので、EPにしよう、初期作品のリテイクにしよう、一発録りに近いものにしよう、といろいろアイデアが膨らんでいったんです。
ーーはい。なるほど。
根本:初期作品というのは、ほとんどがアマチュアの時代に作っているわけです。20代そこそこで、血気盛んにいろんなチャレンジをしているけど、やっぱり先立つ頭と技術が足りなかったんだと思います(笑)。特に歌は、以前からもう一度やり直したいなと思っていました。ただ新しいアレンジを考えた時に、そのサウンドを根本的に変えてしまったら、昔から聴いている人はかなり違和感を持つはず。うまく僕らの今のサウンドに乗っけられるものはないか? と思った時に、1940年代、50年代のビッグバンドジャズを思い浮かべ、その新しいアレンジで初期作品を5曲リテイクして、結果的にそのアルバムを持ってツアーに出たということですね。
ーーしかも「ブギウギ」というテーマが、NHKの朝ドラ(連続テレビ小説『ブギウギ』)とぴったり符号してしまうという。あれは偶然だったんですか。
根本:僕らがツアータイトルを決めたあとに、NHKの次の朝ドラが『ブギウギ』だという情報を聞いたんです。冗談交じりに「主題歌の依頼とか来たらおいしいんだけどな」とか思ったけど、天下のNKHはそんなに甘くはなく、僕らは完全にスルーでした(笑)。でもね、ブギウギというテーマは元々スタ☆レビにもあるテーマだし、うちのお客さんたちもNHKの朝ドラを観ることによって、服部良一さんや笠置シヅ子さんの存在を知り、さらには僕らがそこからどんな影響を受けたかを少しは理解してもらえたかもしれない。それは、まさに渡りに船だったと言えますよね。
ーーリンクしちゃいましたよね。くしくも。
根本:世の中的には何の反響もなかったですけどね(笑)。
ーーでもやっぱり当時のブギウギも、戦後の暗い世相を明るくしようみたいなテーマがあって、それってスタ☆レビの思想そのものじゃないかと思いますけども。
根本:そう、僕らはね、世の中を明るくとかいうよりも、元々音楽はすごく楽しいものだというのを伝えていきたいわけですよ。その当時のことはよく知らないけど、とにかく今もこうやって、毎日ブギウギを奏でてます。そもそも、ブギウギって何? と聞かれてもうまく答えられない。僕らは毎日演奏しながら、スタ☆レビのブギウギを探しているんです。その話で思い出したのが、憂歌団のギタリストの(内田)勘太郎さんの話。随分前に知り合いの人が「また勘太郎さんが行方不明になった」と言っていたことがあって、勘太郎さんにお会いした時にそのことを聞いたら、勘太郎さんは「要くんなぁ、俺はまたブルースがようわからんようになってもうて、それでちょっと旅しとったんや」って言っていたんです。それがむちゃくちゃかっこよくて、音楽ってそういう、人生の旅にリンクさせる人もいるんですよね。そんなふうに自分の生活の中にあるブルースだったり、ロックンロールだったり、僕も別にブキウギ一辺倒なわけじゃないけど、スターダスト☆レビューというバンドをブキウギにたとえるならば、それをまだ模索中なんだと思うんですよね。