「ポルノグラフィティは一日にして成らず」 4年半ぶりの声出し解禁公演で掴む最高到達点

ポルノグラフィティ有明アリーナ公演レポ

 ポルノグラフィティにとって5年ぶりのアリーナツアー『19thライヴサーキット“PG wasn't built in a day”』が、3月31日の東京・有明アリーナ公演をもって幕を閉じた。同ツアーは4年半ぶりに声出しが全面的に解禁となり、新たな試みとして一部楽曲ではスマホでの撮影もOKに。1月のツアー開始時から、SNSでは「#ワズビル」のハッシュタグとともにその盛り上がりが多くのリスナーに共有されてきた。“PG wasn't built in a day(ポルノグラフィティは一日にして成らず)”。そのタイトル通り、長年の積み重ねを経て現在のステージが完成していること、そして彼らはまたここから前に進んでいくことを感じさせた。同時に、肉声でのコミュニケーションを通じて互いの心と心が結びつき直した、そんな公演でもあった。

 開演時刻が近づくと、待ち切れないかのように客席から大きな手拍子が響く。“開国”を宣言するかのような盛大なファンファーレとともに登場する岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(Gt)に歓迎の拍手が送られると、二人は25年の道のりを模したという湾曲した花道へ。そしてライヴではコール&レスポンスが恒例の「Century Lovers」からスタート。久々に思い切り煽り、叫べるーー早くも銀テープが舞う中でステージも客席もそんな喜びに満ちていた。そのまま「やっと一緒に歌えるぜ!」という岡野の呼びかけとともに、「テーマソング」「キング&クイーン」と観客の歌声があってこそ完成する楽曲が続く。岡野がステージを動き回り、会場の隅々にまで歌声を届けようとする「Mugen」も、やはり客席の歌声が必須。花道での新藤のギターソロも印象的で、大胆なサウンドと裏腹に、細やかな手首、指先の動きの正確さに25年にわたって積み重ねてきたものを感じる。

岡野昭仁(Vo)

 MCでは「リミットを外して挑みたい」(岡野)、「(客席と)どっちが楽しめるか勝負」(新藤)とそれぞれファイナルへの意気込みを述べつつ、思うように声出しができなかった期間を思い返しながら、改めて心と心を繋ぎ合わせたいと語る。意思を繋ぎ合わせていく思いを歌う「REUNION」から、「俺たちのセレブレーション」でお祭りモードになった後は「アニマロッサ」、そして「メリッサ」へと繋ぐ。クールなロックナンバー「アニマロッサ」の力強くも優しさを感じさせる岡野の歌声と新藤のギターに浸っていると、ライヴ鉄板の「メリッサ」では冒頭の〈さあ 愛に焦がれた胸を貫け〉で岡野の驚異的な歌声の伸びに思わず歓声が起きた。そこにあるのはいわゆる安定感や変わらなさではなく、一つひとつのステージを確かに積み重ね、少しずつ変わってきたからこそいま手にしている、岡野にしかないボーカルだ。

新藤晴一(Gt)

 “何もなかった”という上京してからの2年間を二人らしくユーモアたっぷりに明かしたMCのあとは、花道でのアコースティックセッション。披露するのが「Sheep 〜song of teenage love soldier〜」(2004年リリースのシングル『黄昏ロマンス』カップリング曲)とわかると、客席からは喜びの声が上がる。ティーンエイジャーの初々しく可愛らしい恋を描いた同曲の世界観に合わせ、新藤のギターソロも先ほどまでのロックな雰囲気とガラリと変えたミニマルなものに。そして、これぞポルノグラフィティの真骨頂と言うべきラテン調の「ジョバイロ」もアコースティックで披露。アコーディオンの音色が心地よくも胸に刺さり、切ない大人の恋愛を岡野がムーディに歌い上げていく。

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