ポルノグラフィティ、“平和”を歌う「アビが鳴く」と『暁』ツアーに見る現在地 時代性を的確に捉えたポップソングが強みに
5月に開催されたG7広島サミットでは、各国の首脳たちによる原爆資料館への訪問が話題となった。首脳たちが原爆慰霊碑に一斉に花を手向ける姿は、未来の教科書に掲載されてもおかしくない記念すべき瞬間であった。原爆による惨禍を世界に届け、分かち合うことは、核軍縮、ひいては核兵器の根絶を目指す上で必要なプロセスであり、今回の広島で首脳たちが見た展示は、きっと後年にも大きな影響を与えることだろう。そんなG7広島サミットへの応援ソングとして、ロックバンド・ポルノグラフィティが書き下ろした「アビが鳴く」が、5月31日に配信リリースされた。本稿ではポルノグラフィティの直近の活動を振り返りつつ、「アビが鳴く」から現在の彼らの音楽的嗜好を考えてみたい。
ポルノグラフィティが昨年リリースしたアルバム『暁』は、豊潤かつシャープな音楽性を持ったサウンド、時代の空気を的確に捉えて楽曲に還元するシリアスな詞世界、そして彼らが持つエネルギーが遺憾なく発揮された、キャリアの中でも随一の作品となった。
そんなアルバム『暁』を携えて開催された『18th ライヴサーキット“暁”』もまた、充実度の高いツアーとなった。新型コロナウイルスによる制限が緩和へ向かう中、8年ぶりとなる日本武道館2daysを含む全29公演を完走しきったことは、ポルノグラフィティがライブバンドであることを改めて示したと言っていいだろう。強靭なサポートミュージシャンの面々を従えたソリッドな演奏は、新曲はもちろんのこと、これまでにリリースしてきた楽曲の新しい側面も見せるライブに仕上がっていた。特に近年メインアレンジャーを務めるtasukuがギタリストとしてバンドに参加することで、新藤晴一のギターもこれまで以上にアクティブかつ自由なプレイを見せていたことが印象深い。ギターが2本になることで、新藤は原曲とは異なるフレーズを挟みつつ、これまで以上に鮮やかなプレイで魅せていた。
なによりも初披露となったアルバムの収録曲群が公演を重ねることで出来上がっていく様は、アルバムツアーならではの景色であり、5年ぶりのその様に喜んだファンも多かったことだろう。加えて日本武道館2daysでは未公開の新曲を披露。2020年に有観客と配信にて開催した『CYBERロマンスポルノ’20 ~REUNION~』以降、未公開の新曲をライブに織り交ぜているポルノグラフィティ。ポップスを鳴らすバンドの矜持として、新曲で戦い続けるという彼らの強い意思を感じずにはいられない。ソリッドなアレンジと円熟の歌唱、時代を捉えた歌詞が織り成す強固なポップソング。それがポルノグラフィティの現在地点だ。
そんなポップシーンの第一線で止まることなく活動を続けるポルノグラフィティの新曲「アビが鳴く」のテーマは“平和”だ。