ソニーミュージック発 VEE、VTuberシーンでの強み プロデューサー 渡辺タスクに聞く音楽としての強度

 今や最先端のポップカルチャーやエンターテインメントを語るうえで欠かせない存在となっているバーチャルタレント/VTuberのシーン。新興企業の成長が目立つ一方で、大手企業の参入例も増えているわけだが、そのなかでも今回注目したいのが、ソニーミュージック発のバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト「VEE」だ。

VEE

 2021年7月にプロジェクトの始動と同時に『VEEバーチャルタレントオーディション』(応募総数は1万8千人超)が開催され、2022年5月に第1弾バーチャルタレントとして5名がデビュー。その後も順次タレントが加わり、現在は総勢30名が活動している。配信や動画制作のみならず、音楽、お芝居、その他の創作活動など、タレント個々が抱いている“夢”を実現するための活動を理念に掲げている。また、本プロジェクトの発起人であるプロデューサーの渡辺タスクは、ハチ「砂の惑星」のMVアニメーション制作などで知られる南方研究所のメンバーでもあり、クリエイティブ面においても常にクオリティの高いものを届けているのが「VEE」と言えるだろう。そんな「VEE」について、渡辺へのメールインタビューを交えながら紹介していきたい。まずVTuberシーン全体における「VEE」の強みについて聞いたところ、こんな回答が返ってきた。

渡辺タスク
渡辺タスク

「“音楽特化”でも“何特化”でもない、という事務所にした時点でこの課題とはずっとぶつかり続けています。ただ、明確な強いプロデュースがない、タレント主体のこういった箱をでかい企業がサポートしているってあんまりないんじゃないかな? と思います。もちろんコンプラやスピード感の鈍さなどデメリットもありますが、Zeppを押さえるのもそうなように、会社の力を借りて、シナジーを発揮できるようになればオンリーワンの存在になれると思っています」

 実際、エンターテインメントに紐づく様々なビジネスにおいて実績を持つソニーミュージックグループによるサポートは大きく、2022年12月から翌2023年3月にかけて「VEE」に特化したTV番組『ぷみぷみVEE』(TOKYO MX)が放送されたほか、今年2月には初の全体ライブイベント「VEE CONCEPT LIVE『Merge』」を東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で開催。ナイト営業時には「ZEROTOKYO」の名称で運営され、DJ/クラブミュージックのイベントにも対応できる音響設備が整えられた同会場でのライブでは、所属タレントたちが集結してオリジナル楽曲やカバーソングを歌唱し、幅広い音楽性と各自のパーソナリティを発揮したパフォーマンスで満員のフロアを沸かせた(※1)。

 そのライブイベントに合わせて、「VEE」では5週連続でオリジナル楽曲を配信リリース。なかでも特にメモリアルな楽曲が、ライブの最後に披露された「VEE」初の全体曲「絶対零度の世界から」だ。LiSA「紅蓮華」をはじめ数々のヒット曲を手がける草野華余子が作曲・プロデュースを手がけ、草野と親交の深いシンガーソングライターのヒグチアイが作詞、ボカロPのkemuやPENGUIN RESEARCHのベーシストとしての顔も持つ人気クリエイターの堀江晶太が編曲を担当した本楽曲。昂揚感を誘うメロディ、ピアノを軸にした爽やかかつエモーショナルなアレンジ、バーチャルという仮想現実の場所を〈絶対零度の世界〉になぞらえつつ、そこでの交流が育む感情と繋がりが熱を生むことを描いた歌詞、そして25人のタレントたちのバーチャルと現実の垣根を越えた心を感じさせる歌声――そのすべてがキラキラと輝いていて、バーチャルタレントという存在の本質を捉えつつ、「VEE」というプロジェクトの希望ある未来も表現された楽曲となっている。渡辺は本楽曲について以下のように語る。

「以前から草野華余子さんとは交流がありました。楽曲制作をお願いしたことはなかったのですが、最初に浮かんだのが草野さんでした。それは詞曲もですが“自身も歌っている”ということが大きかったように感じます(※草野はシンガーソングライターとしても活動している)。僕の頭のなかの抽象的なイメージやバーチャルの比喩をたくさんお話して、それを落とし込むというプロデューサー的な作業もお願いしました。バーチャルは永遠ではないという死生観ほどではないですが“インターネット楽しい”ではない一人称と二人称が存在するメッセージを込めた曲にしてくれて満足しています。ライブのエンディングとして、最高でした」

九条林檎
蒼宮よづり
桜鳥ミーナ
秋雪こはく
九条林檎
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秋雪こはく
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蒼宮よづり
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 もちろんその他にリリースされたオリジナル楽曲も粒揃い。「VEE」に所属する前の2018年からVTuberとして活動している吸血鬼と人間のハイブリッドレディ・九条林檎は、普段の配信でのしゃべり声に近い落ち着いた低音ボイスと透明感溢れるファルセットボイスのハイブリッドで聴かせる「Ahhhhhh」(作詞・作曲は烏屋茶房、編曲はemon(Tes.)が担当)、SixTONESらの楽曲を数多く手掛ける佐伯youthK(佐伯ユウスケ)提供のジェントルなスウィングポップ「Emotional night」の2曲を発表。

Ahhhhhh / 九条林檎 MV
Emotional night / 九条林檎 MV

 蒼宮よづりのフワッとした歌声が映えるエレクトロポップ「ワンモアタイ」は、ソニーミュージック発の新人育成プロジェクト「Puzzle Project」に参加しているボカロPのニト。が提供している。

【 ORIGINAL SONG 】ワンモアタイ / 蒼宮よづり【 VTuber 】

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