『SMTOWN』東京ドームで10万人が目撃した祭典 東方神起からRIIZEまで総勢55名が躍動
SM ENTERTAINMENTの所属アーティストが一堂に集結する『SMTOWN LIVE 2024 SMCU PALACE @TOKYO』(以下、『SMTOWN』)が、2月21日、22日に東京ドームで開催された。「SMCU」(SM Culture Universe)とは、SMアーティストの世界観を体現するプロジェクトかつ、SM ENTERTAINMENTが描くメタバースの名称である。その背景にある場所「KWANGYA」=「荒野」にある仮想の城で、SM ENTERTAINMENTのさまざまなコンテンツと世界観を楽しむことができるのが、この『SMCU PALACE』だ。(※1)
2008年の初回から通算20回目の『SMTOWN』開催となる本公演には、国内外から2日間で合計10万人のファンが駆けつけて会場を埋め尽くし、連日の雨模様も吹き飛ばすほどの熱気が会場を満たしていた。本稿では、2日目、2月22日の模様をお届けする。
定刻。突如、メインステージを端まで覆うビジョンに、ヨーロッパの宮殿のような映像が映し出された。建物に向かって空を駆ける光に導かれ登場したのは、2月28日にデビューを控える新星・NCT WISHだ。6人のシルエットが露わになった途端、映像は地球を飛び出して広い宇宙空間へ――。緑色のレーザーが一直線に照らすなか、1月にYouTubeでサプライズ公開されたパフォーマンス曲「NASA」で勢いよくデビューステージを飾った。
「昨日、ここ『SMTOWN』のステージで遂に正式デビューをしましたよね!」と両手を大きく広げ、喜びを全身で伝えるリーダーのSION。「去年は早く『To The World, 여기는 NCT!』と挨拶したいと思っていましたが、こうしてデビューすることができました」「応援してくださっていた、皆さんのおかげです」(RIKU)、「かっこいい先輩たちのようになれるように頑張ります」(RYO)と他のメンバーも口々に思いの丈を伝えた。彼らは、昨年9月に行われたNCTの全体コンサート『NCT STADIUM LIVE 'NCT NATION : To The World-in JAPAN'』の日本公演で初めてお披露目され、プレデビューツアーでも“NCT NEW TEAM”として歌い重ねてきた大切なプレデビュー曲「Hands Up」、今回初パフォーマンスとなるデビュー曲「WISH」を弾けるフレッシュさで歌い踊り、明るい未来を存分に感じさせた。
息つく暇もなくセンターステージに花を咲かせたのは、少女時代のメンバーであり、“DJ HYO”としても活躍するHYOYEON。2020年にラッパーのLoopy、(G)I-DLEのSOYEONをフィーチャリングに迎えた「DESSERT」が流れ始めると、一瞬にして5万人収容のドームを彼女のソロライブ会場のように変貌させる。さらに、2番冒頭のLoopyのパートで後ろから登場したYANGYANGのラップが、ノリのいいEDMサウンドに沸き立つ会場を一層ヒートアップさせた。少女時代としての貫禄だけでなく、HYOYEON自身の無二のアーティスト性を強く感じるステージには、彼女を初めて生で見た人も魅了されたに違いない。後半には昨年8月にリリースした情熱的なダンスナンバー「Picture」でしっとりとブチ上げ、“HYOYEONサウンド”を存分に楽しませてくれた。
主に中国で活躍するSUPER JUNIOR-Mのメンバーで、ソロでも活動するZHOUMIは、昨年6月にリリースしたミディアムテンポのダンスナンバー「Mañana (Our Drama) (Feat. 은혁)」を歌唱。青色のペンライトがリズムに乗って縦揺れするなか、SUPER JUNIORのEUNHYUKが登場し、息の合ったパフォーマンスを届けた。MCでは「こんにちは、皆さん久しぶりです! 前回の私の『SMTOWN』のステージは8年前ですよね!」「本当に会いたかったです。いつも応援してくれてありがとうございます」と日本語で挨拶。また、「いつか『SMTOWN』のステージで歌って、皆さんに聴いてもらいたいと思っていたのですが、それがまさに今日ですよね?」と話し、満点の星空のように揺れるライトに包まれながら、SUPER JUNIORのRYEOWOOKとともに「Starry Night (With RYEOWOOK)」を歌い上げた。
SM ENTERTAINMENTといえば、どの世代の人々をも虜にしてきた高いボーカル力が強みのひとつ。歴30年のベテラン・KANGTAは、2017年にRed VelvetのWENDYとSEULGIとリリースした「Doll」に、NCT 127のDOYOUNGを迎えてコラボした。しっとりと奏でるピアノのメロディに乗せる芯のあるKANGTAの歌声と、伸びやかなDOYOUNGの歌声。思わず聴き入ってしまうほど相性のいいふたりの極上のボーカルに、会場からは歓声が起こる。ステージを去る直前に会場を見上げ、愛おしそうに微笑んだDOYOUNGの表情はもちろん、「DOYOUNGさんの歌声はとても美しいですよね」「一緒に歌ったら僕の歌声ももっと美しくなるようで、とても感謝しています」と後輩に賛辞を贈るKANGTAの姿が印象的だった。
登場前から自然と沸き起こる割れんばかりの歓声。その視線が向かう先に現れたのは、昨年9月のデビュー以降、“K-POP第5世代”を代表するグループとして大旋風を巻き起こしているRIIZEだ。『SMTOWN』の日本公演は初参加となる彼らは、「SMTOWN TOKYO、今日も準備はいいか!」というシャウトとともに登場し、デビュー曲「Get A Guitar」で軽やかにステージを彩った。MCでは、日頃から控えめなトーンで話すANTONが「昨日は僕の声が少し小さかったみたいです。今日は大きな声で話してみます!」と叫んだり、WONBINが「BRIIZE(RIIZEファンの呼称)、こんにちは!」と挨拶しながら、「Love 119 (Japanese Ver.)」とのタイアップCMで話題となった美顔器を2個持ってポーズを披露して笑いを誘ったりする場面も。日本人メンバーのSHOTAROは、「新しいアルバムも準備しているので、楽しみにしていてください!」、そう言って嬉しい知らせを予告し、「一緒に踊りましょう!」と「Love 119 (Japanese Ver.)」をパフォーマンスした。後半には、燃え盛る火柱にも負けない豪華絢爛なステージを見せ、止まない歓声を残して去っていった。
間髪入れず登場して視線を奪ったのは、aespaだ。リズミカルなサウンドを響かせ、「Next Level」「Spicy」をそれぞれバンドバージョンでパフォーマンスし、会場をピンク色に塗り替えていく。KARINAの「Hands up 東京!」という煽りに誘われるように響いた耳をつんざくほどの歓声が、彼女たちの登場を待ち侘びていた観客の熱気を代弁していた。MCでは、「ただいま〜」と微笑んで手を振るGISELLEに大きな歓声が送られ、今年行われる日本でのアリーナツアーに「また日本でみなさんと思い出を残したいですね!」とWINTERが心を弾ませる様子も。後半には『2023 Melon Music Awards』(MMA2023)を思い出させる赤い衣装で「Drama」を披露。向かい風すらも味方につける美しさを誇る彼女たちのビジュアルと、それに比例するクオリティのパフォーマンスには、終始悲鳴が沸き起こっていた。
日本・韓国・中国・アメリカ・カナダ・タイなど多様な国と地域出身のメンバーで構成されるボーイズグループ・NCT。2023年には“伝説”とも称された『NCT NATION』を成功に収め、年末年始の数々のアワードの受賞など、勢いと人気が止まることを知らない彼らは、今やこの『SMTOWN』の中心的存在とも言える。
今か今かとその登場を待つ痛いほどに静かな空気を〈I can hear it callin’〉の一声で破ったのは、NCTの中華圏出身メンバーを中心に構成されるWayVだ。ファンからも熱い支持を誇る耽美的な「Love Talk (English Ver.)」を歌い上げるなか、2018年の京セラドーム公演以来、6年ぶりに日本での『SMTOWN』に出演するWINWINや、本公演に向けて髪をホワイトシルバーに染めたXIAOJUNがモニターに映し出され、一際大きな悲鳴がこだました。妖艶な表情から一変、ラストに指ハートを決めたTENは、この日が2月22日であることにちなみ、「今日は猫の日だから、僕はテン猫です!」と、頬にダブルピースをして大の猫好きならではの愛嬌を見せる。中盤には、日本語で懸命にMCをするXIAOJUNに、メンバーが「잘했어!(よくやった!)」とあたたかな拍手を送る場面も。最後に「今年は去年よりもたくさんお会いできるので、もっとWayVに期待していてくださいね」と期待を高め、「Phantom (English Ver.)」、「On My Youth」を披露。“威神”の名に違わない崇高な存在感が、終始会場を支配していた。
黄緑色のお揃いのローブを羽織り、「Best Friend Ever」で登場したNCT DREAMは、MARKの「Tokyo, are you ready!」で序盤からヒートアップ。細フレームの眼鏡をかけたJISUNGのビジュアルや、犬に接するようにJENOの顎を触るRENJUNなど、目まぐるしく移り変わるモニターの様子が会場を熱狂させる。定番の「アイゴ!」コールも終えて満足げな7人はローブを脱ぎ、続けて待望の「We Go Up」をパフォーマンス。今では廃止された卒業制度を経験したDREAMとシズニ(NCTのファンの呼称)にとって、MARKが卒業前最後に参加し、作詞も手がけたこの楽曲は特別なものであり、花道に向かいながらJAEMINの足上げパートを全員で真似る仲の良さは、今も変わらない“7DREAM”のかけがえのない絆の象徴だ。後半には、キラキラと輝く黒スーツに身を包み、昨年リリースの「ISTJ」を披露。ラストサビ前に叫んだMARKの「7DREAM, Let’s go!」に呼応するように音を立てた特効が、燃え盛る熱気を体現しているようだった。
前半の「Be There For Me」であたたかなステージを見せたNCT 127は、後半では一転、アッパーチューンを携え、リミッターを外した無双モードに切り替わる。暗色の髪をハーフアップに結い、その場に座り込みながら登場した特攻隊長 YUTAの瞳は、まるで獲物を前にした猛獣のそれだ。エンジン音とともに腹から叫ぶ「Are you ready!!」の一言にメンバーの表情も高揚し、白、黒、黄緑の衣装に身を包んだ“イリチル”のステージは、“疾走”するように全速力で駆け抜ける「2 Baddies」で狼煙を上げた。続く「Fact Check」では、開催中の単独公演さながらの掛け声で会場を一体化。その場の熱量をすべてマイクに乗せる歌い方は、生歌力にも定評がある彼らの“本気”の証だ。さらに、殺気すら感じるYUTAの気迫とMARKの「Say What!」「소리 질러!(叫べ!)」の声が観客とメンバーのエネルギーをますます引き出していく。NCT 127の迫力を詰め込んだ魂のステージは、その場に残された観客の語彙を失わせるには十分だった。
コラボステージでは、Red VelvetのSEULGI、NCT DREAMのJENO、aespaのKARINA、RIIZEのWONBINによる「Hot & Cold」もまた熱狂を生み出した。もともとは、前3名に加えてEXOのKAIがオリジナルメンバーであるところ、昨年末の『KBS歌謡祭 2023』ではaespaとRIIZEのコラボで、KARINA、WINTER、SHOTARO、WONBINの4名でパフォーマンス。今回の『SMTOWN』では、オリジナルメンバーのSEULGIがカムバックして、また新たな化学反応を見せてくれたが、普段なかなか見ることができないSEULGIとWONBINの組み合わせに、終演後にはSNS上でも多くの反響が寄せられていた。
2019年の『SMTOWN』以来、実に5年ぶりに披露されたのが、少女時代のTAEYEONとNCT 127のJAEHYUNによる「Starlight」だ。宮殿の階段のようなセットに彼らの上品な歌声と佇まいが映え、時折視線を交わしながら、最後にはハイタッチして肩を寄せ合うふたりに、会場からは大きな歓声が送られた。昨年リリースされた5thミニアルバムのタイトル曲「To. X」も披露したTAEYEONだが、長年奏でられたことで音に深みが出た楽器のような美しい鳴り方をする、他にはない歌声を聴いていると、思わず一曲だけでは物足りない、もっと聴いていたいと感じてしまう。
エモーショナルなコラボも見逃せない。ギターサウンドとともにアリーナ後方のステージに再び登場したNCT WISHが披露したのは、デビューメンバーが決定したオーディション『NCT Universe:LASTART』の課題曲であり、プレデビューツアーでもパフォーマンスしていたSUPER JUNIORの「U」。2番では二回り年の離れた末っ子たちからバトンを受け取るようにメインステージに登場したSUPER JUNIORだが、なかでも観客が熱狂したのは、クールな表情で扇子を振るHEECHULの姿がモニターに映った瞬間だった。近年ではメンバー全員が揃ってパフォーマンスをする光景が貴重であっただけに、リーダー・LEETEUKの頼みにHEECHULが応える形で実現したという今回のステージは、ファンにとっても非常に思い入れ深い時間になったことだろう。
さらに一段階、会場の熱量を上げたのが、東方神起とRIIZEによる「Rising Sun」だ。かつての東方神起を想起させるSOHEEの歌声やサビ前のWONBINのロングトーンに聴き入っていると、その後ろから熱い太陽が昇るように東方神起が登場。まさに、『2023 MAMA AWARDS』で披露した熱いコラボステージの再演だ。激しく燃え上がるマグマのような炎をバックに踊るダンスブレイクでは、黒衣装の東方神起と白衣装のRIIZEのコントラストが際立った。東方神起 CHANGMINのロングトーンで燃え上がる火柱、ステージに膝をついて雄叫びをあげるように歌うYUNHO。ステージを大きく揺らして圧巻のエンディングを迎える東方神起のまとう空気は、別格のオーラというほかない。約30年の歴史を誇るSM ENTERTAINMENTだからこそ実現する、世代を超えた化学反応で存分に楽しませてくれた。