星野源、曲作りの新たなスタイルが確立された2023年 サマソニや『LIGHTHOUSE』も振り返る
星野源曰く、2023年はひたすら曲を作り続けた1年だったという。と同時に、それらを精力的にリリースするのみならず、3年ぶりの有観客ライブ開催や、『SUMMER SONIC 2023』のBEACH STAGEでのキュレーション企画実現、オードリー 若林正恭とのトークバラエティ『LIGHTHOUSE』(Netflix)出演なども大いに話題を呼び、様々な場所で星野源の音楽が鳴り響いた1年でもあった。そんな2023年の活動を振り返りながら、そこから得た手応えや曲作りの新たなスタイル、そして2024年への展望などを星野に語ってもらった。(編集部)
“好き”を全面に押し出した垣根のない楽しみ方
ーー今回は2023年の主なトピックを振り返っていけたらと思います。こと音楽活動に関して、星野さんにとっての2023年はどんな1年でしたか?
星野源(以下、星野):上半期はとにかく家にこもって曲を作っていました。曲作り以外の仕事を受けることはほとんどなかったですね。ずっと自分の曲を作り続けて、夏以降はそれが世に出ていったことを受けて外仕事も増えてきて。そんななかでもさらに曲作りをしていたから、振り返ってみるとひたすら曲を作っていた1年でした。
ーー8月放送の『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)では「1曲をじっくり作るという期間が長く続いたので、自分に圧力をかけて楽曲を制作しまくる状態を作り出したかった」といった趣旨のことを話していました。あえて自ら負荷をかけていくことを思い立ったのはなぜですか?
星野:2021~2022年は無理をせずゆっくり曲を作りたいと考えていて。1曲1曲をじっくり作るというか、忙しさに流されるのではなく大事に大事に曲を作っていきたいと思っていたんです。でも、それを2年ぐらい続けていたらちょっと飽きてきちゃって(笑)。やっぱり自分を追い込むこと、ある一定の期間に集中してたくさん曲を作ることはすごく大事だと思うんです。有名なアーティストの名曲って、ある時期に集中していたりするじゃないですか? 「あの曲もこの曲も同じ時期に作っていたんだ!」みたいな。アルバムのなかにたくさん名曲が入っている場合にしても、一時期に集中して作っていることが多い印象があって。そういう状況を自分から積極的に作り出してみたかったんですよね。それで外仕事をあまり入れないようにして、ひたすら曲を作り続けていきました。
ーー2023年はリリースはもちろん、ライブイベントも充実していた印象があります。まずひとつは1月に大阪城ホールと横浜アリーナで行われたYELLOW PASS会員限定イベント『Gen Hoshino presents “Reassembly”』。3年ぶりの有観客でのライブ開催となりました。
星野:パンデミックの期間が本当につらかったことを再確認しました。やっぱり、お客さんの生の応援や声援って自分にとって必要なんだなと。もちろん画面越しでしか相対することができない人もいて、それも必要だということもよくわかったんですけど、直で会うこと、相対することがこんなにも元気をもらえて、モチベーションにつながるということを改めて痛感して。最終日は声出しが解禁になったこともあって余計にグッときましたね。
ーー大きなイベントとしてはもうひとつ、8月19日開催の『SUMMER SONIC 2023』のBEACH STAGEで行われた星野さんキュレーションによる『so sad so happy』がありました。星野さん自身がキュレーターとしてすでに交流のあるアーティストを招聘したこと、そしてずっと現場に留まって出演アーティストを自ら紹介されたことも大きいと思うのですが、あのスケール、あのラインナップで、あれだけの親密さを生み出すことは容易ではなかったと思うんです。
星野:最初にお話をいただいたときは「ええっ? そんなことしていいの!?」みたいな感じでした。でも、本当に自由にやらせてもらって。1日ステージ貸し切りみたいなものじゃないですか。それはもうめちゃくちゃありがたかったですね。やっぱりこのステージをやる意義として、面識のないアーティストをただ呼んでやるのはちょっと違うと思ったんです。だからまずは、自分が知っている友達を国内外から呼ぶというコンセプトを徹底したくて。出演者で会ったことがないのはCamiloだけだったんですけど、彼も会った瞬間に友達になれるような人でした。そういう親密さみたいなものはすごく大事なんだなと思いましたね。そこは他の夏フェスと決定的に違うところじゃないですか。すべての出演アーティストに“星野源”という軸が通っているという、その部分はすごく大切にしたかったところで。ただ、イベント中はもうとにかく必死で。僕自身が熱中症みたいになっちゃいましたからね(笑)。それまでずっと作曲で家にこもっていて、急にとんでもない猛暑のなかに放り出されたので。大変ではあったんですけど、終わったあとの反響を聞いているとすごく良い空間を作れたんだと思いました。
ーー2022年の「喜劇」の世界的なバイラルヒットを踏まえても、こうした星野さんのユニバーサルな交流を日本のリスナーが直に体験できたことはとても大きな意義があると思います。
星野:NHKで『おげんさんのサブスク堂』を始めたのは、テレビのなかで流れている音楽が、紹介の仕方も含めてどんどん自分と縁遠いものになっていると思ったからなんです。技術の話だったり戦略の話ばかりで。自分の好きな語り口が全然なかったんです。そういう状況に違和感があったから番組を作りました。この『so sad so happy』もその一環で、単に「『好きなんです』でいいじゃん!」みたいな思いがあって。洋楽と邦楽の垣根も本当はないほうがいいと思っているから、それが同じイベントのなかで混ざっていくのは本当に楽しかったですね。正直なところ意義みたいなことはどうでもよくて、自分はこういう楽しみ方ができたほうが嬉しいんです。