Official髭男dism、Kroi、TOMOO……IRORI Recordsの2023年を総まとめ 層の厚い良質な音楽で話題をさらった1年
設立3年を迎えたIRORI Records。今年も話題の新曲をコンスタントにシーンに放ったOfficial髭男dism、キャラクターと楽曲が理想的な認知拡大を続けるKroi、ニューアルバムでいよいよ次世代のシンガーソングライターの筆頭に駆け上がったTOMOOら、層の厚い所属アーティストの2023年を振り返る。
Official髭男dism
今年はライブやテレビ出演など表立った活動はないものの、相変わらずクリティカルなヒットを多数放ったOfficial髭男dism。1月にはTVアニメ『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編OP主題歌書き下ろしである「ホワイトノイズ」をリリース、タフな8ビートと大空を滑空するようなスケール感で新境地を見せた。4月にはTBS系金曜ドラマ『ペンディングトレインー8時23分、明日 君と』に「TATTOO」を提供。このドラマはヒゲダンが「I LOVE…」で主題歌を担当した『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)など、話題のドラマを執筆してきた金子ありさによるオリジナルストーリー。洒脱なAORでありつつ、歌の情報量は多いという意味で近いアプローチの進化形と取れそうだ。
さらに9月にはダブルAサイドシングル『Chessboard / 日常』をリリース。「Chessboard」は第90回NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲への書き下ろしで、淡々と積み上げていく構成や木管も取り入れた管弦楽のアレンジも胸に迫る大作。12月31日の『第74回NHK紅白歌合戦』では同曲が披露されることが決定しており、紅白の舞台では全国の中学生から寄せられた歌唱動画とのコラボレーションが予定されている。もう一方の「日常」は日本テレビ『news zero』の2023年新テーマ曲として書き下ろした楽曲で、都会的なサウンド、働く大人の葛藤を描いた歌詞に冴えを見せた。
そして一年の終わりにパワフルな新曲「SOULSOUP」がリリース。全世代にヒットしたTVアニメ『SPY×FAMILY』Season1のオープニング主題歌「ミックスナッツ」に続き、映画『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の主題歌である「SOULSOUP」。ホーンセクションの爆発力、インディーズ時代からバンドの軸の一つである熱いソウル志向が炸裂、アップデートされた痛快な1曲だ。年末年始の盛り上がりの先にある、2024年の本格始動への期待が募る。
Kroi
今年もライブの現場でファンを拡大し続けたKroi。大型フェス、イベントに多数出演し、日経エンタテイメント「23年夏フェス出演数ランキング」では1位を獲得している。その数16という事実にも驚くが、振り幅も凄まじく、いわゆる邦楽ロックフェスから『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL』のような新世代のジャズフェスまで網羅。今年はTV出演も増え、特に7月の『ミュージックステーション2時間スペシャル』は“Mステ初出演”であったことも相まって大きな話題に。10月には早くも2度目の出演を果たしたことも記憶に新しい。
もちろんリリースもコンスタントで、1月にはモダンなミクスチャー「Hard Pool」をリリース。曲のどこをとっても情報量が多いこの曲と対照的な「風来」を経て、この2曲も収録したEP『MAGNET』をドロップ。さらに10月にはメジャー1stシングルとしてロック×ファンクなゴリゴリのアッパーチューン「HYPER」(TVアニメ『アンダーニンジャ』オープニングテーマ)もリリースした。
12月13日にはボーカルの内田怜央がNulbarichとコラボした新曲「DISCO PRANK feat. Leo Uchida(Kroi)」がリリース。このコラボは共演やKroiがNulbarichのライブに足を運んだことがきっかけで実現したもので、11月から12月まで開催したKroiの対バンツアー『Kroi Live Tour “Dig the Deep”Vol.4』でも披露されている。この対バンツアーのメンツがまた音楽ファンのツボを突くラインナップで、NulbarichのほかにTempalay、OKAMOTO’S、nobodyknows+、Bialystocks、Ovall、クリープハイプという錚々たるラインナップで各地を沸かせた。
登場当時からキャッチーなキャラクターとブラックミュージックへのストイックなスタンス両方を体現してきたKroi。2024年1月の日本武道館公演はすでにソールドアウトしており、その可能性はまだまだ天井知らずだ。
TOMOO
ネクストブレイク最有力と目されていたTOMOO。今年はSpotify「RADAR: Early Noise 2023」に選出されたこともあり、従来のファンに加え新規のリスナーが増えた印象だ。そのタイミングで現在の楽曲の完成度とビビッドなフィロソフィーを伝える待望のフルアルバム『TWO MOON』がリリースされたことで、注目度も上昇。
収録曲はOfficial髭男dismの藤原聡やVaundyらから支持を集め、TOMOOの知名度を上げるきっかけになった「Ginger」、メジャーデビュー曲「オセロ」やBREIMEN 高木祥太がサウンドプロデュースを手がけた「Cinderella」の他、映画『君は放課後インソムニア』主題歌として書き下ろした「夜明けの君へ」、サウンドプロデューサーに小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)を迎え、ジャズやネオソウルのサウンドが新鮮な「Grapefruit Moon」、リードトラック「Super Ball」などで、表現の幅を広げた。
クールさと少しの悲しさを秘めたアルトボイスで歌う日常や恋に対するアンビバレントな思い。2020年代を代表するシンガーソングライターになり得そうな今、2024年も引き続き注目したい。
スカート
以前からお笑い好きを公言していた澤部渡。自身も審査員も務める25歳以下限定のお笑い賞レース「UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP」の大会主題歌として「期待と予感」を書き下ろし。約9カ月ぶりの待望の新曲で、澤部なりに大会のテーマソングを想像した、およそ勇ましさとは無縁の軽快かつ温かさに溢れるギターポップナンバーに仕上がっており、出演する芸人と観客双方、そしてステージに立つミュージシャンである澤部の心境もどこか重なる歌詞がビビッドだ。今年は4年ぶりのツアーを皮切りに、同じ板橋区出身のthe band apartの『ITa FES』や『やついフェス』、butajiやグソクムズ、ゆうらん船との対バンなど、コロナ禍のブランクを吹き飛ばす勢いで精力的にライブを行った1年でもあった。