初音ミクは“16歳”に、歌愛ユキ再評価、ホロライブ×DECO*27…2023年ボカロシーン重大トピックスを整理

 年初の大手VTuber事務所・ホロライブとDECO*27によるタッグプロジェクト・holo*27の本格始動や、「神っぽいな」「魔法少女とチョコレゐト」「転生林檎」「匿名M」などのヒットチューンを収録したピノキオピーによる約1年9カ月ぶりの新アルバム『META』リリース。時期を前後して「The Vocaloid Collection 2023 Spring」ではまらしぃ×じん×堀江晶太(kemu)という往年の名手による夢のタッグ曲「新人類」が総合ランキング1位に輝いたり、Mitchie M、cosMo@暴走P、Gigaといった人気Pが集結したポケモン×初音ミク企画「Project VOLTAGE」が始動するなど、ボカロシーンのみならず、他のカルチャーとの垣根を越えたトピックスも多かった。それらもまたますます、VOCALOIDという文化の広がりを感じさせたように思う。

新人類 / まらしぃ×じん×堀江晶太(kemu) feat.鏡音リン(Kagamine Rin)

 同時に、少しずつ活動拠点をメジャーシーンへ移しているクリエイター陣の、確かな“ボカロ愛”に触れるエピソードも今年は度々見受けられた。夏の『マジカルミライ』におけるボカロPユニット・DREAMERS(Ayase・syudou・すりぃ・ツミキ)のクリエイターズマーケット参加や、『紅白歌合戦』初出場を決めたキタニタツヤ(こんにちは谷田さん)がSNSでボカロ曲匿名投稿イベント「無色透名祭」に言及するなど。時代や環境が変わってなお、初音ミクをはじめとした音声合成ソフトたちによるVOCALOIDシーンへ敬意と愛着を持ち続けていることが伝わってきた。

 上記のように名の知られた面々の活躍が目立ったとはいえ、シーンの興隆の中には今後新たに時代を担うであろう才能も当然芽吹き始めている。本稿の前半に述べた音声合成ソフトのムーブメントを形成したゆこぴ、原口沙輔の他、「無色透名祭」や「1枚絵動画投稿祭」などの企画で台頭を見せたShu、なみぐる、きさら。またシーン人気を牽引するアプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』への楽曲提供も話題を集めるいよわ、MIMI、Sohbana、Misumi。彼らがボカロシーンを飛び出し、大衆的な認知を獲得する日もそう遠くないような、予感めいたムードも漂う1年となった。

 ニコニコ動画というプラットフォームを飛び出し、各種SNSや他カルチャーシーン、そしてアプリゲームなど、2024年はこれまで以上に様々な場所で、VOCALOIDや各ボカロPによる楽曲に触れる機会が生まれていくだろう。来年は一体どんな1年となるのか、引き続き多角的な視野を携えつつその動向を仔細に追っていきたい。

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