HOLIDAY! RECORDSが10年続く理由 ショップだけではないリスナーやバンドの居場所づくり

HOLIDAY! RECORDSが10年続く理由

 HOLIDAY! RECORDSというCDショップをご存じだろうか? 

 同ショップは通販サイトとライブハウスでの出張販売という形で国内のさまざまなインディーズアーティストの音源を販売、さらにライブイベントの企画なども行っている。X(旧Twitter)フォロワー6.5万人を超え、関西を拠点としながらも関西インディーシーンのみならず、全国の音楽ファンから愛される存在だ。 

 今回、一人で運営を行っている植野秀章にインタビュー。ショップをスタートさせた理由やこれまでの取り組み、さらにストリーミング時代におけるCD販売の在り方などを聞いた。そこで分かったのは、ショップを飛び越えたメディアとしての在り方と、リスナー・バンドマンへ向けられる優しいまなざしであった。 

「自分の好きを発信する」HOLIDAY! RECORDSのスタンス 

 植野秀章はHOLIDAY! RECORDSをスタートさせる前はバンドマンであった。広島から大阪へやってきて8年ほどバンド活動を行い、その後メンバーの脱退などがありソロアーティストとして弾き語りで活動。自身の音楽活動を経て、新たにスタートさせたのがディストロ(ディストリビューション)であった。 

「僕はパンクシーンにいて、大阪だったら火影-HOKAGE-とか新神楽、東京だと早稲田ZONE-Bなどのライブハウスやスタジオライブで演奏することが多かったんです。そうしたライブハウスでは物販スペースに国内のバンドの未流通のデモCDとか海外のバンドの作品を集めて販売している人がいたんですよ。当時そういう音源は大手のCDショップには置いておらず、ディスクユニオンとかTIME BOMB RECORDSくらいにしかないものばかりで。そういう所からCDとかを買うのが好きだったんです。 

 それから『自分でもやってみたい』と思って、ディストロをやっている友達がいたので、仕入れのやり方を教えてもらいHOLIDAY! RECORDSを始めました。最初は友達のバンドを中心に、国内のパンクとかポップパンク、パワーポップを主に取り扱っていて。当時はECサイトに関する知識もなくて、アメーバブログにレビューを載せて、『メールアドレスに注文お願いします』という形でやっていました(※1)」  

 もともとはバンドマンだったこともあり、ライブハウスでの出店などは問題なく行えたという植野。またCDレビューを読んだり、書いたりすることも好きで、文章で自分が好きな音楽を発信していきたいという思いも強かった。 

「今から考えるとディストロがやりたかったというよりも、僕が好きな音楽をレビューして発信したいという思いが強かったのかもしれない。僕がディストロを始めた2014年ごろ、音楽の情報源ってブログが多かったと思うんです。あとはmixiのレビュー機能も好きでした。僕はそういうのを読むのが好きだったし、そうやって好きな音楽を発信することに憧れていたんです」 

 「自分の好きを発信していく」。このスタンスが今のHOLIDAY! RECORDSを作り上げたと言っても過言ではない。植野はHOLIDAY! RECORDSを立ち上げた後に、京都のTHE FULL TEENZやshe said(現在ボーカルのSAGOはSAGOSAIDとして活動)、大阪のAnd Summer Club(2023年に解散)などのバンドと出会う。これがインディで活動するバンドの音源を置くきっかけとなった。 

「パンクシーンを通ってきた僕にとって、2014年ごろに出会ったインディポップの要素を含んだバンドの音楽はすごく新鮮だった。それでshe saidの音源をSNS上で告知したところ、今までにないくらい反応があり、HOLIDAY! RECORDSを知らない人にも届いている感覚になりました」 

she said - hatred feel (Official Music Video)

 近年はYONLAPA、Chinese Footballなどアジアのバンドの音源も販売している。そのきっかけはHomecomingsのライブで観た台湾のバンド・DSPSであったと語る。 

「インディにルーツがあり、日本語と違った言葉のオリエンタルな響きもあって、衝撃を受けました。それ以降、積極的にアジアのバンドも取り上げるようになりました」 

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