HOLIDAY! RECORDSが10年続く理由 ショップだけではないリスナーやバンドの居場所づくり

HOLIDAY! RECORDSが10年続く理由

常にその視線はリスナーやバンドマンに向けられている

 全国のインディーズバンドを中心に扱う同ショップ。先に述べた通り、スタート時は知り合いのバンドの音源や、ライブやSoundCloudで良いと思ったバンドの音源を集めていた。現在では「販売してください」という問い合わせを受け、その中からショップのコンセプトに合った音源を販売しているケースも多い。選定する基準については以下のように語る。 

「HOLIDAY! RECORDSはポップパンク、パワーポップから始まっているので、グッドメロディなもの。あとインディー感、オルタナ感があるものを中心に選んでいます。ただ取り扱わなかったからといって、その作品が良くなかったというわけではない。送ってもらった音源を聴くと、昔僕がやっていたバンドよりも、すごいアーティストだらけ。みんな才能があると感じます」 

 またHOLIDAY! RECORDSはイベントも積極的に行っている。年に一回の周年イベントだけでなく、心斎橋のLive House Pangeaとの共催サーキットイベント『COME TOGETHER MARATHON』、これからのアーティストをフックアップするイベント『STRANGER THINGS』や、高円寺の音楽事務所・DUM-DUM LLPとの共催サーキットイベント『Mixtape』などを開催してきた。これらのイベントにもそれぞれ目的があったと語る。 

『STRANGER THINGS』フライヤー
『STRANGER THINGS』フライヤー

「『Mixtape』をやった際にDUM-DUM LLPさんと話していたのは“このイベントがインディバンドの居場所になったらいいよね”ということ。『COME TOGETHER MARATHON』についてもそういう音楽をやる人の居場所というか、楽しくやれる場になったらいいなと思ってやっています。 

 『COME TOGETHER MARATHON』の前身イベント『COME TOGETHER』では、料金を500円に設定していたこともありました。また『STRANGER THINGS』では10代のお客さんを無料にしていました。正直、利益は出ないんですけど、若い子にいろんなバンドを観てほしくて。10代の子たちは感性も鋭いし、出演したバンドに衝撃を受けて音楽を始めてくれるかもしれないな、と」 

 HOLIDAY! RECORDSの活動を見ていると、常にその視線はリスナーやバンドマンに向けられている。何か得るものがあってほしい、そのための場所づくりに真剣に取り組んできたように感じる。場所づくりという意味では、最近ではLINEのオープンチャットも開設している。この発端はインスタライブを配信した時のある気づきであった。 

「インスタライブを配信した時に『これを聴いてください』『これオススメのバンドです』というコメントをもらって。みんなも発信したいんだなと感じました。僕はディストロという形で発信していますが、周りを見ればXでレビューを書く人、友達とメディアを立ち上げている人、さまざまな人が自分の“好き”を発信している。その状況はすごくいいなと思います。LINEのオープンチャットもその延長で作っていて。自分の知らないところでリスナーたちが、バンドや音源をオススメしあっているのはうれしい」 

 リスナーが語れる場所を提供したい。それができるのもディストロを始める際に、音楽を語れる楽しさに惹かれた植野だからこそだと感じる。

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