A.B.C-Z 河合郁人最後の作品『5 STARS』レビュー “新たな伝説”へ向かう5人の魅力が凝縮
A.B.C-Zが1st EP『5 STARS』を11月29日にリリースする。メンバーの河合郁人が12月21日でグループを脱退することが発表されていることから、同作が5人体制での最後の作品となるはずだ。グループにとっても、ファンにとっても大切な1枚となる同作は、A.B.C-Zの代表曲を作り上げた作家陣とともに作られており、彼らの良さがギュッと詰まっている。そんな同作について、1曲ずつ見ていきたい。
まず、1曲目は疾走感のあるロックナンバーである「BRAND NEW LEGEND」。作詞・作曲は、1stベストアルバム収録曲「火花アディクション」も手掛けている草野華余子で、A.B.C-Zお得意の激しいダンスが似合いそうな楽曲だ。メインボーカルを取ることが多い橋本良亮は、きれいで透明感のある歌声が特徴だが、同曲の出だしではまとまりすぎていないのが良い。他のメンバーも声を作りすぎておらず、あえて荒削りな部分を演出しているのだろうか。楽曲の雰囲気にフィットした歌声になっている。
さらに、新しい出発をするA.B.C-Zにぴったりな歌詞にも注目だ。簡単にジャンル分けをしてしまえば応援歌なのだが、新境地へ向かう河合の背中を押しているようにも、リスナーを勇気づけているようにも、自分たちを鼓舞するかのようにも聞こえてくる。それでいて「5人でA.B.C-Z」と言わんばかりの〈“Brand new five legend”〉という歌詞が含まれていることから、彼らの現在の心境が語られているとも言えそうだ。
2曲目は「OVERHEAT」。同曲は「Black Sugar」以来となる堂島孝平の提供曲で、クールなアップテンポナンバーでどこか大人っぽさが感じられるという共通点がある。さらに、河合&戸塚祥太、塚田僚一&五関晃一と対になっているパートが多く、パート割でシンメが意識されているのもポイントだろう。パフォーマンスをする際、A.B.C-Zはシンメという概念を取り入れられることが多いグループだ。彼らの魅力を味わうにはうってつけのパート割なのだろう。
3曲目は「JODEKI!」。同曲は4thシングル収録曲「サポーターズ!」などを手掛けた西寺郷太が作詞・作曲、1stシングル表題曲「Moonlight walker」などを手掛けた船山基紀がアレンジを担当しており、A.B.C-Zにとってはおなじみの作家との作品だ。楽曲は80~90’sを彷彿させるようなライトなポップソングで、個人的には竹内まりやの「プラスティック・ラブ」やA.B.C-Zの「Shower Gate」が脳裏をよぎった。また、例えば戸塚の歌声や五関のいつも以上に美しいダンスなど、爽やかな大人っぽさはメンバーたちのパフォーマンスにも表れている。ちなみに、同曲は11月20日放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)でテレビ初披露。今の彼らに合った余裕のあるパフォーマンスで、軽く柔らかなダンスも魅力的に映っていた。11月13日に公開されたMVとはひと味違ったパフォーマンスが楽しめたのではないだろうか。
そして、4曲目に大黒摩季提供曲の13thシングル表題曲「#IMA」、5曲目に草野提供曲の12thシングル表題曲「Graceful Runner」を収録。シングル曲を余すところなくアルバムやEPに収録してくれるのも、A.B.C-Zのファン思いの姿勢が表れている部分だろう。
6曲目は、「#IMA」を手掛けた大黒が提供した「オリジナルストーリー」。一聴しただけで“大黒摩季っぽさ”が伝わってくる楽曲で、前向きな歌詞と明るくノリが良いのにどこか切ないメロディが印象的だ。そんな同曲は歌詞を見ると〈カリフォルニア〉、〈405FreeWay〉、〈PACIFIC COAST HWY 1〉、〈Palos Verdes'〉といったワードが散りばめられておりアメリカを歌っているのだが、疾走感と壮大さ、ドライブで広大な土地を走っているイメージなどが浮かんできて、2013年に放送された『J'J A.B.C-Z オーストラリア縦断 資金0円ワーホリの旅』(日本テレビ)を思い出す。彼らの原点を彷彿させる1曲と言えそうだ。ちなみに、ギターは坂崎幸之助、ベースは徳永暁人、ピアノはハラミちゃん、ドラムは浜崎大地によってレコーディングされており、厚みのある演奏にも注目だ。