Shin SakiuraとRachel、ラジオ『MUSIC BLOOM』やコラボ曲「Paint It, Smile!」から受ける刺激

Shin Sakiura&Rachel対談

 音楽プロデューサーのShin Sakiuraと、ラップデュオ・chelmicoとしても活躍するRachel、そしてトラックメイカーのtofubeatsの3人がタッグを組んだ新曲「Paint It, Smile!」が配信リリースされた。

 この曲は、Shin SakiuraとRachelがナビゲーターを務めるJ-WAVE(81.3FM)のラジオ番組『MUSIC BLOOM』から生まれた作品で、tofubeatsが与えられたテーマをもとに様々なアーティストとコラボするコーナー「BACARDI Sound Distillery 音楽蒸溜所」の第3弾として制作された。

 tofubeatsによる底抜けに明るいトラックに合わせて、思わず口ずさみたくなるような歌唱を2人が披露するこの曲。特に歌詞は、日常を“笑顔で塗り替える”ような弾けるポップな仕上がりが印象的。初めて会った日に意気投合したという2人の仲の良さがそのまま表れているような楽しい一曲だ。

 インタビューでは2人に番組の話を始め、曲に込めた思いやMV撮影のエピソード、ラジオから曲をリリースするという企画の面白さなどについて語り合ってもらった。(荻原梓)

もともと親しかった二人が偶然『MUSIC BLOOM』ナビゲーターに

ーーナビゲーターを任されると聞いた時はどんな気持ちだったんですか?

Rachel:めっちゃ嬉しくて、素直にガッツポーズでした。それに2人体制でやると聞いていたので「もう一人のナビゲーターはShin Sakiuraだったらいいな」って言ってたんですよ。ミュージシャン2人でっていう話をしてたところだったので。そしたら本当にShinくんだったっていう。

Shin:しかもアサインする側の人たちは僕らが友達だってことを知らずに「なんかこの2人良さそうじゃない?」って選んだらしくて「そんなことある?」と思いました。

ーー奇跡ですね。2人が仲良いのを知ってて選んでるものだと思ってました。

Shin:そうですよね。

Rachel:意外と私たちの交友関係は知られてないからね。

ーー2人はどういう経緯で知り合ったんですか?

Rachel:もともとは現場で知り合って意気投合したんだよね。

Shin:そうそう。渋谷のクラブのVISIONで知り合って、アニメとかゲームの話で盛り上がって、話していくうちにお互いの家が徒歩10分くらいの近所だと判明したんですよ。

Rachel:初日は朝まで飲んだよね。

Shin:ラーメンまで食べてな。

Rachel:繋げてくれたきっかけはSIRUPだったね。

Shin:それからちょいちょい会うようになって、一緒に飯食ったり、ゲームしたり。

ーー番組で話していた旅行のお土産を渡せないまま家に残ってるというエピソードが2人の親密な関係性を象徴しているなと思いました。

Rachel:そうなんです。地方でライブした時とかは、気が向いたらお土産を買ってくるんですけど、お互いに忙しくて渡す機会がなくてね。

Shin:軽井沢ビールね。あと高菜とか(笑)。

ーーその2人の仲の良さは番組を聴いていても伝わってきます。回を追うごとにどんどん会話のテンポやグルーヴ感が良くなってますよね。

Shin:それはこの人(Rachel)が慣れてるからで、僕はおんぶに抱っこって感じですよ。

Rachel:いやいやいや。J-WAVEと『MUSIC BLOOM』のチームがめちゃくちゃ優しいから「大丈夫なんだ」って気持ちでいられるのが大きいんです。

Shin:それはあるね。

Rachel:最初はやっぱり緊張してて、お互いにどこかストッパーがあったよね。こんなこと話していいのかなって。特に音楽番組っていうのもあるし、J-WAVEっていうのもあって、最初はどこまで話していいか匙加減が分からなかった。でも大丈夫だって思えてからはもう好き放題話せるようになって、それこそ音楽をかけた後に「(曲が良すぎて)もう無理!」とか言っていいんだって(笑)。

Shin:ナビゲーターがそんなこと言う番組、普通ないで(笑)。

Rachel:(音楽を)作る側でもある私たちだから言えるよね。ラッパーとしての意見も言えるし、いちリスナーとしての側面を出してもいい。そう思えたから今のスタイルがあるんです。

ーーまさにそこがこの番組の大きなポイントだと思ってまして。ナビゲーターを務める2人がミュージシャンなので、番組をしていると作り手として刺激を受けることも多いんじゃないですか?

Rachel:多すぎですね。毎回刺激受けています。

Shin:めちゃくちゃ多いです。普段は自分の好きなものを無意識に掘っているから、聴くものは良くも悪くも偏ってしまう。でもこうやって番組に関わるスタッフのみなさんが勧めてくれると、自分だけでは知りようがない曲に出会えるんです。そういうものってすごく新鮮に聴こえるし、自分の創作のインスピレーションにもなる。実際、めっちゃリファレンスにしてますよ。

Rachel:あと幅広い音楽をたくさん聴くことによって音楽シーン全体が見えてきて、俯瞰した聴き方もできるようになったと思います。国ごとの違いだったり、こういう曲がその国では聴かれてるんだっていう勉強にもなる。それこそこの番組で紹介したアーティストの来日公演を観に行ったりもしました。

ーー番組を始めて何か変化はありましたか?

Rachel:めっちゃあります。例えば番組では曲を聴いたら感想を言いますけど、その時間が自分の中では大事だと思ってて。普段だったら「この曲いいよね」で終わっちゃうところを、ちゃんと「ここがいい」って考えて言わないといけない。そういう時にShinくんのプロデューサー目線の意見も聞けるし、最近は曲を聴いても「Shinくんだったらなんて言うかな」とか想像したりするようになりました。

Shin:いまRachelが言ったように、言語化するのは自分でも上手くなった気がします。その言語化のスキルが身についたおかげで、制作も効果があることをすぐできるようになってる実感があって。もちろん言葉に引っ張られすぎちゃうのもよくないけど、僕の場合は言葉で説明できないといけない仕事だから。

Rachel:Shinくんの場合はプロデューサーだから、なんでここにこういう音を入れたのかとか、なんでこういうメロディの運びになったのか説明できたほうがいいからね。

Shin:そう、逆に「もっとこういうふうにしたい」って言われた時に「だとしたらこのほうが辻褄合いますよ」って提案もできるしね。直感的に好きっていう気持ちも大事だけど、いざ仕事でコミュニケーションを取らなきゃいけないとなると、本当に意味のある効果的な一言を言葉で伝えることが必要で、それがこの番組を通して身についた気がします。

ーーなるほど、自身の活動にも活かされてるわけですね。始まって半年以上経ちましたが、この番組は2人にとってどんな存在になってますか?

Shin:僕は例えば普段から曲を作ったり、思いついたアイデアをメモしたりすることが多いんですけど、そうしているとだんだんアウトプットが枯れていきがちになるんです。さっきも言った通り、自分の感性に従ってインプットしているとどうしても似通ってくる。その新陳代謝のサイクルのなかで『MUSIC BLOOM』から栄養豊富なインプットを与えてもらってるような感じがしてます。野菜も炭水化物もタンパク質も、いろんな栄養を摂ったうえでアウトプットができている。この番組を始めてからその良い循環を感じてますね。

ーーバランスの取れた栄養補給になってると。

Shin:マジでそうです。研究対象になるような曲も多いし、アレンジ面で「目から鱗だわ」みたいなことも多いんですよ。

ーーしかも『MUSIC BLOOM』は流す曲の幅が広いですよね。

Shin:広いです。普通だったらこの番組はシティな雰囲気の選曲が多いよねとか、この番組はダンスミュージックをメインにかけるとか、チルだったりアコースティックな歌ものが多いよねとか、番組ごとにキャラクターがありますよね。でも『MUSIC BLOOM』は古今東西の音楽を全部やる。それが自分にも合ってたなと思ってます。

Rachel:全部乗せだよね。

ーーRachelさんはどうですか?

Rachel:私は“基地”みたいな感じですね。この番組以外もラジオとかいろいろやらせてもらってるなかで、自分はやっぱり音楽が好きだなって思える場所になってる。こうやって音楽の話を毎回ちゃんとできる場所があることが嬉しくて。私はこの番組でShinくんとも会話してるけど、リスナーの人とも会話してる感覚があるから、「みんなもこれ好きだよね?」って音楽について話せる感覚が嬉しいんです。だから『MUSIC BLOOM』は自分が音楽が好きであることに立ち返る場所にもなってる。

ーー自分の音楽愛を再認識できると。

Rachel:あとはJ-WAVEが単純に好きで、J-WAVEでナビゲーターをできてることが自分にとって心の支えにもなってるかな。ちょっと落ち込むことがあっても「でもJ-WAVEでナビゲーターやってるし!」って思ってます(笑)。

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