音楽ファンがいま最も注目すべきラジオ番組『MUSIC BLOOM』　tofubeatsのコラボ曲制作を追う「SOUND DISTILLERY」の秀逸さ

　毎週金曜夜22時からJ-WAVE（81.3FM）にて放送されているラジオ番組『MUSIC BLOOM』。ナビゲーターを務める音楽プロデューサーのShin Sakiuraと、ラップデュオ・chelmicoとしても活躍するRachelが、毎回楽しいトークを交えながら世界の最新の音楽情報を発信している。アジアのアーティストをフックアップするコーナー「BOUNCING ASIA」や、新進気鋭のアーティストが1分間で自身の音楽をプレゼンテーションする「ONE MINUTES EXPRESSIONS」など、番組は意欲的な企画で目白押し。ナビゲーター2人の語りっぷりは音楽愛にあふれ、彼ら自身もミュージシャンであることから作り手としての視点も垣間見えて興味深い。音楽ファンがいま最もチェックすべき30分間であると、自信を持ってオススメしたい音楽番組だ。

　さて本記事で紹介したいのは、この番組内で5月より始まったコーナー「BACARDI SOUND DISTILLERY 音楽蒸留所」である。これは音楽プロデューサー／トラックメイカーのtofubeatsが、与えられたテーマをもとに様々なアーティストとコラボして楽曲制作するというもの。“DISTILLERY”とは蒸留所のことで、音楽をお酒に見立てて、“ブレンドマスター”であるtofubeatsがテーマに沿って音楽を独自にブレンドしていくという企画だ。これまで第2弾まで行われ、実際にこの企画によって生まれた2つの楽曲が配信リリースまで至っている。

　このコーナーの面白いところは、大きく分けて2つあると思う。

　1つは、2組のアーティストがコラボすることで生まれる化学反応を楽しめるということ。例えば、第1弾ではR&Bシンガーのaimiが登場。日本で本格的なR&Bを歌うaimiと、普段はJ-POPやクラブシーンを中心に活動するtofubeatsのタッグが実現した。両者は面識もなかったらしく、制作は音源データだけのやり取りだったという。しかし、与えられた「Latin/R&B in JAPAN」というテーマに対して、レゲトンに独自の解釈を加えたようなラテン風味のベーストラックをtofubeatsが制作し、その上にaimiによる繊細かつパワフルなボーカルワークが乗った見事な国産R&B楽曲が完成した。

　こうした他ではなかなか見られない組み合わせによって、この企画でしか生まれない作品がリリースされている。YouTubeで公開されているアフタートークでは、それぞれが込めた思いを語り合っているのでぜひチェックしてほしい。

　もう1つは、人によって解釈の異なるテーマをそれぞれのアーティストがどのように音楽に変換するのかという点だ。例えば、ラッパーのDaichi Yamamotoとのコラボとなった第2弾では「Chillin’ Bubble」というお題が提示された。番組で話題になったのはこの“Bubble”の解釈についてである。その名の通り“泡”を意味する言葉だが、いわゆる炭酸水の泡が弾けるような爽やかなイメージとして捉えるか、バブル景気の高揚感や刹那性を連想するかで、大きく分かれるテーマだと言える。解釈次第ではある意味で真逆のイメージに振れる自由度の高いお題のため、2人がどのようにこのテーマに向き合うかが注目された。

　もちろん正解はない。それぞれが自由に解釈できる。これを受けてtofubeatsは「明るさと落ち着きの両立」を考えてドラムンベース〜ジャングルを彷彿とさせるトラックを制作し、そこにDaichi Yamamotoはパーソナルなフレーズも織り交ぜたラップを展開。独特なテーマに対して2人が真正面でぶつかり合っているのが、音源からも伝わる内容に仕上がっていた。