YOASOBI、宮本浩次、Nulbarich、なとり、Chilli Beans.、くじら……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はYOASOBI「Biri-Biri」、宮本浩次「Woman “Wの悲劇”より」、Nulbarich「Just A Game feat. Benny Sings」、なとり「Cult.」、Chilli Beans.「doll」、くじら「FRIENDLY・NIGHTMARE」の6作品をピックアップした。(編集部)

YOASOBI「Biri-Biri」

 Nintendo Switchソフト「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」を原案とする武田綾乃の小説『きみと雨上がりを』。こちらを原作とするインスパイアソング。とはいえ、激しいバトルや熱い友情の話をまるごと詰め込んだわけではない。普段一曲に相当の情報量を入れてくるYOASOBIとしては珍しいくらい簡潔な作りである。基本はかなり音数を差し引いたエレクトロポップ。エフェクト処理されたボーカルは、一語一句を相当短く切って歌っていることもあり、情緒を切り離した音符の連なりとして小気味よくポンポンと流れていく。やや物足りないかなと思いかけたところで、後半の転調にがっつり心を掴まれた。ここに光るYOASOBI節。(石井)

YOASOBI「Biri-Biri」 Official Music Video

宮本浩次「Woman “Wの悲劇”より」

Woman From "W No Higeki"

 エレファントカシマシの宮本浩次が薬師丸ひろ子の「Woman “Wの悲劇”より」をカバーする、と耳にしただけで〈もう行かないで そばにいて〉と叫ぶように歌い上げる宮本の歌声が表情とアクション付きで脳裏に浮かんでしまうわけだが、実際に音源を聴いて、完全に予想を裏切られた。感情の発露はあくまでも抑え目。大仰に歌いたくなってもおかしくないサビにおいてもボーカルはしっかりと抑制され、美しくも切ないメロディと儚い愛を描いた歌詞を丁寧に描き出しているのだ。そこから伝わるのは、原曲と歌手の薬師丸に対する圧倒的なリスペクト。宮本の歌の周囲を彩るように構築された小林武史のアレンジ、名越由貴夫(Gt)、須藤優(Ba)、玉田豊夢(Dr)の歌心に溢れた演奏も素晴らしい。(森)

Nulbarich「Just A Game feat. Benny Sings」

Nulbarich - Just A Game feat. Benny Sings (Official Music Video)

 Cornelius、cero、TENDRE、スキマスイッチといった日本のアーティストともコラボしてきたオランダ発のポップマエストロ、Benny Sings(最新アルバム『Young Hearts』、素晴らしいです!)をフィーチャーした新曲。2021年のコロナ禍の最中にリモートで打ち合わせを重ねながら制作され、70年代あたりの古き良きポップミュージックを想起させる、穏やかで温かい仕上がりに。洗練と温かみを共存させたコード進行やメロディにはBenny Singsの色合いが強く、これまでのNulbarichの楽曲とは一線を画している。〈May be It's just a game So baby stop crying in the rain(これはただのゲームかも だから雨の中で泣くのはやめて)〉と聴く者にゆっくりと語り掛けるようなリリックも、コロナでいちばん大変だった時期の感情とつながり、じんわりと心に響く。(森)

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