あいみょん、3年越しの声出し解禁 距離感ゼロの『マジカル・バスルーム』セミファイナルレポ

 ハンドマイクで歌う「皐月」で声出し復活を祝うようなコール&レスポンスを成功させると、続く「ミニスカートとハイライト」では体を大きく動かしながらパフォーマンス。「ハルノヒ」に「二人だけの国」と、ならではの視点で愛を歌った楽曲で会場をさらに温めたあいみょんは、コロナ禍を経て声出しが戻ってきたこのツアーをやってきての気持ちを「安心した」と表現する。

 そして、コロナ禍の最中でどうしても出したいといってシングルリリースした曲であり、「音楽人生のなかで特別であり続ける曲になっていると思う」という「裸の心」へ。ピアノのイントロから始まり、一言一言を言い聞かせるような繊細な歌が広がる。その瞬間、この曲を初めて聴いた時の記憶がよみがえった。あまりにも無防備で、あまりにも率直な心情がそこに映されている気がして驚いたのだ。そのまさに「裸の心」が、こうしてお客さんの声が響き渡るライブで今歌われる。とても美しく、エモーショナルな光景だった。

 オープニングでステージを覆っていた紗幕が再び降りてきて、バンドメンバーとあいみょんを隔てる。白い幕の前にポツンと立って歌うあいみょん。「風のささやき」、そして「ポプリの葉」。先ほどの「裸の心」からの流れで、あいみょんがさらにこちらに近づいてくる感じがする。特に「ポプリの葉」は、あいみょんの弾くギターの弦が擦れる音までがはっきりと聴こえてきて、まるで弾き語りのようだった。バンドサウンドが大きな感情の波を生み出す「ペルソナの記憶」を終えると、ツアーをともに回ってきたバンドメンバーを紹介。お客さんと会話するのと同じように、バンドメンバーともまるで楽屋での話みたいな空気のなかでトークを繰り広げる。パーカッションの朝倉真司に「どこまで生か見せてやってくれよ!」と振ると、生の水音を奏でる朝倉真司。

 そこからある意味でこの日のハイライト、あいみょんによるクレヨンしんちゃんのモノマネ披露へ。ラジオでやったところ「似すぎ」と界隈が騒然となったやつだ。で、実際に声真似で「オラはにんきもの」を歌ってみせるのだが、これが本当に、ビビるくらいに似ている。ついでに挟んだ野原みさえの声も激似。「女の子はほとんどみんなできると思う」と言っていたが、そんなことは決してないと思う。そしてここからライブは後半に突入していく。お客さんの手拍子に後押しされるように「彼氏有無」を鳴らすと、「まだまだ盛り上がれますか!」と「マシマロ」へ。ロックンロールなあいみょんがバンドメンバーと一緒になって飛び跳ね、客席を指さしながら歌う。「夢追いベンガル」に「マリーゴールド」という鉄板のコンボを繰り出すと、オーディエンスからは一際大きな拍手が送られた。

 「ありがとう」。NHK連続テレビ小説『らんまん』の主題歌として日本の朝を彩った「愛の花」を終えたあいみょんが再び話し始める。「このツアー、みんなの声が聞けることが3年間がんばってきたご褒美やと思う。みんなも大変なこといっぱいあったと思うから、それをここで発散できるかはわからへんけど、今日の夜のこと思い出してもらえたらいいなって思う」という言葉とともに、「みんなの歌声が聴きたい」と「君はロックを聴かない」へと入っていく。どっしりとしたバンドサウンドに合わせて手拍子が躍り、気持ちよさそうにあいみょんが声を響かせる。最後のサビではガーデンシアター全体での大合唱。3年間待ちに待ったクライマックスが、鮮やかに描き出された。

 まるでエンドロールのように鳴り渡った「姿」を終えると、いよいよ最後の曲だ。「私の新曲のタイトル、言えますか?」と客席に問いかけ、みんなで曲名を叫んで「ノット・オーケー」。懐かしい手触りのサウンドに乗せて、いちばん新しいあいみょんがお客さんと一体になる。曲を終えると、「今回のツアーではピック投げも再開なので」ということで「ありがとう」と言いながら客席にピックを投げるあいみょん。ついにはフロアに降りて客席の真ん中まで行ってピックを投げ、お客さんとハイタッチ。最後までとにかく近い。この濃密なコミュニケーションこそがあいみょんなのだと、あらためて思った。

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