BONNIE PINK「“いち女性としての人生”を考えた」 父の死、妊活、出産を経て11年ぶりアルバムリリースへ

BONNIE PINK“女性としての人生”

Yahoo!知恵袋で「A Perfect Sky」が話題に? 次世代へ向けた曲作りも

――『Infinity』に入っている曲で、昔に書いたものはどれですか?

BONNIE PINK:「Bittersweet」「Control」「Butter」「Waiting 4 U」「Silent Film」「HANABI Delight」は、以前書いた曲ですね。ここ3年で書いたのが、「世界」「Like a Tattoo」「宝さがし」「Irish Coffee」「エレジー」「Infinity」。「HANABI Delight」は、録ったのは今年ですけど、2015年にはもうトラックまでできていて。聴く人が聴くと「なんか古くさいな」と思うかもしれないけど、せっかくその曲にとって最高だと思うアレンジで当時は作ったから、それを今風にするのは私が心がけてきたことではないんですよね。いつも曲にいちばんフィットするアレンジを作ることしか意識していなくて、時代に乗っかった音作りをやってきたつもりはないから。

――特にこの3年で書かれた曲は、娘さんに贈るようなものや次世代に残すようなものが多いですよね。これまでBONNIE PINKさんが作られてきた音楽も色褪せないものばかりですけど、未来の人たちが聴いても色褪せない音楽となるように、具体的に音作りで意識されたことはありますか? それとも、その曲にとってベストなアレンジを意識していれば、自然と時代に左右されない音になるという確信がある感覚ですか。

BONNIE PINK:「あの世代に届けるために、こういう音を使わなきゃ」とは意識していないです。いちばん大事なのは、メロディと言葉だと思っているんですよね。そこで「よし!」って自分でガッツポーズを取れるものができたら、あとはどうにでもなるというか。もちろん、いまひとつなアレンジを乗っけちゃうと曲が死んでしまうこともあると思うんですけど、大元がちゃんと自立できていないと、どんなに素敵な装いをさせたとて、届かないと思うので。だから、言葉選びにフォーカスを当てて曲を書いていますね。きっと装いから作る人が多いと思うんですけど、私はシンガーソングライターという肩書きでやらせてもらっていて、曲の芯の部分は自分が責任を持ってやらなきゃいけない範疇だと思っているので。装いの部分は曲ごとにアレンジャーさんとタッグを組んで、その方の持ち味と自分の持ち味をぶつけながら作っている感じです。

――言葉の乗せ方やリズム感が、変わらず独特で面白いですよね。「A Perfect Sky」の〈君の胸で泣かない〉の一音への言葉の乗せ方、跳ねさせ方もそうですけど、だから耳に残るし、口ずさみたくなるし。

BONNIE PINK:リズム先行なのかな。「BONNIE PINKの曲の特徴はリズム感にあるね」って、今回レコーディングしてるなかでもいろんな方に言われました。だから、空耳的なものも多いんですよね。昔から大幅に聞き間違いされるんですよ(笑)。以前、Yahoo!知恵袋に「〈君の胸で稚内 ミキプルプルエエ〉と歌ってる曲は誰の何ていう曲かご存知ですか」というような書き込みがあって、それに「きっとそれはBONNIE PINKの『A Perfect Sky』だと思います」と答えている書き込みがあって。すごいなと思って(笑)。

――そのYahoo!知恵袋の書き込みを見て、ご本人としてはどう思ったんですか(笑)。

BONNIE PINK:昔からそういう聞き間違いをよくされるので(笑)。マネージャーもバンドメンバーも、ずっと歌詞を勘違いしていたりしますし。「Won’t Let You Go」の〈どうせ いずれと 今日も自分を責め立てる〉を〈どうせ いずれ 東京も自分を攻め立てる〉って、東京生活に疲れた人の叫びの歌だと思っていたと、キーボーディストの奥野(真哉)さんが言っていらして(笑)。私は、自分の好きなところで単語を切ってメロディに乗せるから、そういう誤解を招くんですよね。でも、別にそれはそれでいいやと思ってます。まずはリズムが気持ちよくないと、曲って入ってこないから。私がいいなと思う曲は、メロディのリズムと言葉がビシッ!っとハマっているもので、自分もそういうものを目指しているので。だからどんどん聞き間違えてもらって、本当の歌詞を知った時にまた味わってもらって、二度美味しいというふうになればなと思ってます(笑)。

BONNIE PINK(撮影=梁瀬玉実)

――今作の歌詞のテーマについて、お子さんができてから次世代の世界を思い浮かべながら曲を書くようになったとおっしゃっていましたが、今BONNIE PINKさんとしては、自分が生きている時代に何ができるのか、何をすべきなのか、そのあたりはどのように考えていらっしゃいますか。

BONNIE PINK:最近、J.Y. Parkさんのオーディション番組をよく観るんですけど、J.Y. Parkさんって今51歳なんですよね。私は何も成し遂げていないのに、頂点にいる方が同世代だということが衝撃だったんです。自分の次のさらにもうひとつ下くらいの世代のアーティストを育成することに心血注いでおられてすごいなと、感動を覚えながら観ているんです。私にはプロデュース能力はあまりないんだけど、自分が経験してきたことで教えてあげられることをもし教えてほしいという人がいたら、教える場みたいなものができたらいいなと思ってます。たとえば、ソングライティングについて「私のやり方はこうですけど」というセミナーとかだったらできるかな、と想像したり。そんなに大それたことはできないし、どれだけ聞きたい人がいるかわからないけど。

――いやいや、さっき話してくださったようなBONNIE PINKさんの技をぜひ継いでほしいです。

BONNIE PINK:私のスキルを?

――アルバム『Infinity』を聴いて私が感じたことは、初期衝動や新鮮な感覚を取り戻そうとしたり、歳を重ねることに抗ったりするのではなく、今持っている技術や感性を味わいながら楽しんで出していらっしゃるということで。だから憧れる上質な豊さが、この一枚にパッケージされていると思ったんです。「こういうふうに歳を重ねたいな」と思わせてくれるものでした。だから、今回のインタビューで生き方の部分から音作りのことまで、音楽に表れているその空気が、どこから湧いているのかを探らせてもらいたかったんです。

BONNIE PINK:もう、見出しにしたい。嬉しいです。今日来てよかったです(笑)。

――(笑)。私こそ、たくさん勇気をいただきました。ブランクがあってもこれを作れるということが、また嬉しくなります。「出産でブランクができても大丈夫じゃん!」というか。どんな仕事に就いていても、出産・育児によるブランクは多少なりとも恐れると思うんですよね。

BONNIE PINK:そうですよね。私も11年休むつもりで産休に入っていなかったんですけど(笑)。やっぱりコロナも大きかったですしね。音楽業界全体がいつ復活できるかもわからなくて、だから必要以上に伸びちゃったけど、焦らないことですよね。焦ったとて、ね。だからブランクを恐れずにやっていったほうがいいと思います。

■リリース情報
ALBUM『Infinity』
発売中

3,300円(Tax in)/QYCL-10038
配信URL:https://bonniepink.lnk.to/Infinity

1.Spin Big
2.世界
3.Like a Tattoo (テレビ東京「私と夫と夫の彼氏」エンディングテーマ)
4.宝さがし (NHK「みんなのうた」)
5.Bittersweet                     
6.Control
7.Irish Coffee
8.Butter
9.Waiting 4 U
10.Silent Film
11.HANABI Delight
12.エレジー (映画「for you 人のために」&「生きるFROM NAGASAKI」エンディングテーマ)
13.Infinity

■ライブ情報
『BONNIE PINK Billboard Live 2023』

12月9日(土)
ビルボードライブ大阪
<1st Stage> OPEN 16:30/START 17:30
<2nd Stage> OPEN 19:30/START 20:30

▼チケット料金
サービスエリアS指定席 10,000円
サービスエリアR指定席 8,900円
サービスエリアBOXシート 21,100円(ペア価格)※プレイガイドでは2枚でしか購入できません
カジュアルエリア 8,400円(1ドリンク付)

ビルボードライブ大阪 WEB予約:http://www.billboard-live.com/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/bp-billboardlive2023/

12月13日(水)ビルボードライブ東京
<1st Stage> OPEN 17:00/START 18:00
<2nd Stage> OPEN 20:00/START 21:00

▼チケット料金
サービスエリアS指定席 10,000円
サービスエリアR指定席 8,900円
サービスエリアDuoシート 21,100円(ペア価格)※プレイガイドでは2枚でしか購入できません
サービスエリアDXシートカウンター 11,100円
サービスエリアDXシートDuo 22,200円(ペア価格)※プレイガイドでは2枚でしか購入できません
カジュアルエリア 8,400円(1ドリンク付)

ビルボードライブ東京 WEB予約:http://www.billboard-live.com/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/bp-billboardlive2023/

※ご飲食代は別途ご精算となります。
※未就学児童入店不可。18歳未満/高校生は成人(高校生不可)の同伴が必要です。
※お申し込み前、ご来場前にビルボードライブWEBサイトのAttentionをご確認ください。

オフィシャルサイト:https://www.bonniepink.jp/
X(旧Twitter):https://twitter.com/BONNIE_official

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