大森靖子、ライブを介してファンと作り上げる“小さな天国” 熱狂の最新ツアー最終公演で打ち立てた新たな誓い

大森靖子、最新ツアー最終公演レポ

 大森靖子はライブのアンコールのMCで、私はこのツアーで川になろうと決めたので、大森靖子で遊んでください……という主旨の発言をした。目標のためには過程を踏んでいかなければならないという話題を、持ち前の早口(しかし発音が明瞭ですべて聞き取れる)で話しつつ、自分は川の端で見守る人間になるつもりでいたが、川になろうと決めたと話したのだ。

大森靖子
大森靖子

 2023年10月1日に昭和女子大学 人見記念講堂で開催された『大森靖子 KILL MY DREAM TOUR 2023』は、6月から全国17カ所19公演にわたったツアーの最終公演。それはファンのそれぞれの個を、生を受け入れようとする姿勢に貫かれたものだった。

 開演の定刻通りにピアノが流れだし、メンバーがステージに登場。キーボードのsugarbeans、ギターの設楽博臣、ベースの千ヶ崎学、ドラムの張替智広、コーラスなどの宇城茉世(MAPA)という鉄壁の布陣の「四天王バンド」だ。そして、最後に大森靖子が登場すると、ファンは一斉にピンクのライトを光らせる。1曲目は、大森靖子の一大アンセム「ミッドナイト清純異性交遊」。この日は、2022年10月にリリースされた最新アルバム『超天獄』の楽曲群に、大森靖子のベストヒッツが加えられた構成で、初めてライブを見たファンも嬉しいセットリストだったはずだ。2曲目は「マジックミラー」なのだから。その「マジックミラー」の途中、ファンの姿を見て大森靖子は「美しい!」と叫んだ。サビでアカペラになっていた箇所も強烈だった。

sugarbeans
 
張替智広
設楽博臣
千ヶ崎学
宇城茉世(MAPA)
 
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張替智広
設楽博臣
千ヶ崎学
宇城茉世(MAPA)
 
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 3曲目の「新宿」は、本来の歌詞の歌いだしは〈きゃりーぱみゅぱみゅ〉だが、そこを〈大森靖子〉にして歌いだした。大森靖子は叫ぶ、「私の街へようこそ!」と。音源の初出である2013年の『魔法が使えないなら死にたい』からの10年の時の流れを感じた瞬間だった。

 「イミテーションガール」を経たMCから、ファンが「大森靖子はいいぞ」とコールをする流れに。「めっかわ」に音頭パートが追加された「大森靖子めっかわ音頭」である。スタッフがステージに和太鼓を運び、それを叩くのは藍染カレン(METAMUSE)、そして、のぼりをもって現れたのが山之口理香子(雅雀り子/METAMUSE)。音頭パートが終わると、ふたりがダンスで参加する趣向だ。「×○×○×○ン」では、メロンを模した大小の緑のボールが客席に投げ込まれ、客席から返ってきたボールを即座に打ち返す山之口理香子の運動神経が光っていた。

 「非国民的ヒーロー」では、大森靖子が客席まで降りて歌った。続く「Re: Re: Love」も含めて、ストレートにロックな楽曲でこそ四天王バンドの演奏の巧さが輝いていた。フラットなビートにならず、演奏に絶妙なグルーブが加えられているのだ。それは、とにかく速かった「VOID」でも同様。〈VOID ME〉〈VOID LOVE〉という歌詞の箇所ではファンが一斉に歌う。

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