HYDE、ファンとともに取り返した“あの時からの続き”と“自由” 命を燃やした熱狂の幕張メッセワンマン
「この景色は金じゃ買えない、薄っぺらい絆じゃない、この3年、この景色を夢見てきた――取り返すぞ幕張!」
9月9日、千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールのステージ上でHYDEが叫ぶ。9月9日、10日の2日間にわたって行われた『HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT』。6月から開催されてきたソロワンマンツアー『HYDE LIVE 2023』の追加公演であり、実質のツアーファイナルでもある。本稿では、1日目の公演の模様をレポートする。
今回のツアーより観客の声出しが解禁された。何も制限がない状態で、HYDEが幕張メッセでステージに立つのは、2019年12月の『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』以来。この2日間は、未曾有の事態によってエンターテインメントの自由が失われかける前、まだ誰もが好きに音楽を楽しんでいた頃から地続きでもある。開演前、スクリーンには開演時刻へ向けたカウントダウンと共に、コロナ禍に開催されたライヴの映像が映し出されていた。時計が「16:66(17:06)」を示したところで会場が暗転。スクリーンに浮かび上がる煌びやかな架空都市“NEO TOKYO”を背に、HYDEが拡声器を通して叫んだ。
「おまえたちを縛る規則はもうない!」「あの時からの続きをしよう!」――そこから「DEFEAT」「AFTER LIGHT」「PANDORA」と、序盤から続けざまに放たれるアッパーチューン。HYDEはステージを左右に移動しながら、「幕張、叫べ!」「Singing!」とフロアを煽り続ける。自分が100%の力でぶつかれば、オーディエンスは100%を上回る力で返してくることを、HYDEは知っている。それを繰り返して、常に高まり続けるボルテージ。ステージとフロアが共鳴し、会場がひとつになる瞬間をこの日は何度も観た。
なかでも、この日のハイライトであった「6or9」について触れておきたい。9月6日に配信リリースされたばかりの新曲だが、ライヴではすでにお馴染みのナンバーだ。曲が始まる前、「さあ、お楽しみの時間ですよ!」と告げたHYDEが〈Life is a comedy〉というフレーズを歌い出すと、待っていましたと言わんばかりに客席からはギャングコーラスが響きわたる。「思い出せよ、怒られてきた時のことを! 今は誰にも怒られないんだよ!」というHYDEの言葉を受け、オーディエンスの熱はまた一段と高まっていく。こうして突入した曲の盛り上がりは凄まじかった。攻撃的なバンドサウンドと、力強いHYDEのボーカル、タオル回しが発生したフロアから聴こえてくるシンガロング。すべてが一体となって生まれた熱狂的な空間を観た時、コロナ禍以前のライヴ風景が本当に戻ってきたのだと胸が熱くなった。
あるいは、HYDEがアリーナに降りて歌った「MAD QUALIA」。アリーナの後方ではサークルモッシュも発生している。周りに集まって手を伸ばす観客たちを見ながら、「ライヴってこういうものだろう?」「思い出しただろう?」というようにして笑みを浮かべるHYDEの姿も印象的だった。