ENHYPEN、NI-KIが涙と共に交わした約束「僕たちがいなくなるまでずっと」 夢を叶えた東京ドーム公演を徹底レポート
そして、先ほどの盛り上がりから、また空気感が大きく変わり、ダークでミステリアスな「Chaconne」がスタート。「初心を忘れない」という彼らのメッセージなのか、原点回帰と言わんばかりの公演序盤を彷彿とさせる厳かなムードが漂うなか、黒と赤を基調とした衣装をまとったメンバーたちが妖艶に舞う。第2章の幕開けだ。
続いて、夕日が差し込む屋敷をバックに、失った愛を請求書に例えた「Bills [Japanese Ver.]」が切なくも爽やかに歌い上げられると、セクシーなダンスナンバー「CRIMINAL LOVE」が繰り広げられる。この曲のステージを一言で表すならば、「覚醒」。赤く光る満月に照らされながら、激しく踊り狂うメンバーは実に妖艶かつたくましく、ENHYPENというグループの醍醐味のひとつには、こういったダークなファンタジー感溢れるステージにあるのではないかと感じさせられた。色気と危うさが漂う「Sacrifice (Eat Me Up)」では、バックの映像が吹き荒れる荒野に切り替わり、一糸乱れぬ群舞が繰り広げられる。最後には荒野に晴天の光が差し込み、暗く長い夜が明けたことを告げられたような気持ちになった。
JAYの「とうとう公演もラストに近づいていますが」という言葉を皮切りに、この公演のタイトルにもある“FATE”(運命)をテーマにしたダンスナンバー、「Bite Me [Japanese Ver.]」が始まる。スリリングで魅惑的なメロディに運命の赤い色が絡み合うような複雑なフォーメーションのダンスが繰り広げられ、ENGENEもそれに合わせて息ぴったりの掛け声をおくる。まさにENHYPENとENGENEが強い運命で結ばれていることを感じさせられる圧倒的な一体感に包まれながら、本編は終了した。
ENGENEが用意したメッセージボードが映し出され、笑いや心あたたまる空間に包まれたのも束の間、アンコールに応えて強いビートが鳴り響いた。メンバーが再び登場し、「One In A Billion (Rock Ver.)」をスタンドマイクで熱唱。ステージに噴き出される炎と力強く歌うメンバーの姿が、再び会場を燃え上がらせる。
熱いパフォーマンスが終わり、いよいよ最後の挨拶へ。「これからも僕たちを見守ってください」「愛してる!」と語ったSUNOO。「この瞬間がずっと止まっていてほしい」と名残惜しさを口にするNI-KI。「皆さんの姿を見て、デビュー前の夢が現実になりました」「こんなに大きなプレゼントをくれて、ありがとうございます!」と感謝を告げるHEESEUNGとJAY。「僕たちとENGENEは“FATE”、まさに運命ですよね」とJAKEが言うと、「この運命の赤い糸をもっと強くできるように頑張ります」「この先も幸せな思い出をたくさん作っていきたい」「必ず戻ってくるから、どこにも行かないでください」と、再会することを誓ってくれたJUNGWONとSUNGHOON。それぞれが、この公演や音楽、歌手という夢、ENGENEへの愛など、ありったけの想いを口にし、いよいよフィナーレへ向かう。
ラストを飾るのは、強烈なエレキギターサウンドが特徴のロック曲「Karma」。彼らの生命の雄叫びのような歌声と共に手拍子と歓声が湧き上がり、紙吹雪が壮大に舞うなか、メンバーはステージを後にした。
しかし、公演はまだ終わらない。実は、特別なサプライズが用意されていたのだ。スクリーンには、「ENGENEのBLOSSOMを聞かせてくれませんか?」の文字が。「BLOSSOM」は、9月5日に発売された日本3rdシングル『結 -YOU-』に収録されている日本オリジナル曲だ。ENGENEがサビを合唱すると、スクリーンに桜の木と花びらが映し出され、メンバーが再々登場。愛する相手を思う気持ちと大切さを花に喩えた歌詞を、一つひとつ噛み締めるように歌うメンバー。クライマックスで響き渡る美声に心を打たれた瞬間だった。
その時、涙を流したのはJUNGWON、HEESEUNG、JAKE、SUNOO、NI-KIだった。なかでも、「いつもENGENEのためだけに生きているので、僕たちがいなくなるまでずっと応援してください」「『I-LAND』で4位で終わった時よりも幸せです」と語り、最後の最後まで涙を止めることのなかったNI-KIの姿からは、彼がどれほど今回の東京ドーム公演に強い想いを懸けていたのかがひしひしと伝わり、思わずこちらの目頭も熱くなった。
曲を歌い終え、涙を流しながら円陣を組み、互いを離すまいと言わんばかりに、キツく抱き合うメンバーたち。再び客席に目を向けるとサプライズスローガンが上がり、7人が驚きの表情を見せる。ENGENEが歌う姿を「たまらない」といった表情で見つめ、それぞれが噛み締めながら、感謝の言葉をこぼす。お互いの姿が見えなくなる最後の瞬間までメンバーの名前を呼ぶENGENEの歓声と感動のムードに包まれながら、『ENHYPEN WORLD TOUR 'FATE' IN JAPAN』は幕を閉じた。
本公演を振り返ると、序盤では赤と青がせめぎ合う耽美で致命的な魅力溢れるステージでオーディエンスを圧倒し、「ENHYPENとはどういうグループなのか?」という物語と存在を一気に知らしめ、中盤では愛らしさも見せ、そして終盤で原点回帰すると共により一層ダークでスリリングな世界観を醸し出し「このグループの真骨頂はここにあるのだ」ということがよくわかったライブだったと思う。
それは、まるでひとりの人間が誕生し、光と闇の狭間に揉まれながらも、愛と自由を知り、自我を確立し、成長していく過程であるようにも感じられた。“成長”と言うと軽く聞こえてしまうかもしれないが、ENHYPENについては、彼ら自身が音楽を通して“成長”という概念を体現しているのではないかと気づかされた3時間20分だった。