甲田まひる『22 Deluxe Edition』から伝わるラップへの本気度とリスペクト 客演迎えたデビュー作アップデート版に見る進化

甲田まひる、“ガチなラッパー”としての顔

 甲田まひるは昨年、自身を構成する要素として、水森亜土、バド・パウエル、1995年のCrooklyn Dodgersを挙げ、「ゴリゴリのブラックミュージックと同じくらい容姿を飾るのが好き。女の子っぽい洋服も好き」と話していた(※1)。彼女は自分を型にはめない。SIMI LABが「Uncommon」で〈普通って何?/常識って何?/んなもんガソリンぶっかけ火付けちまえ〉と歌ったように。世間が相反する要素だと思っても、彼女にとっては当たり前。彼女のリリックを引くなら〈2001いわゆるZの現代人(Grrah)/間違っても押し付けない絶対美(Pow)/着いて来れる?怒涛の展開に〉(「Ame Ame Za Za」)となる。

 シンガーソングライターとしてのデビューアルバム『22』は、ラップアルバムであり、ポップアルバムであり、ビートアルバムでもある。複雑な自分をまとめたくない。一曲のなかにさまざまなジャンルが入っていて、集中して聴くと異常に展開が多いことに気づく。

甲田まひる(Mahiru Coda) - 22 -

 そんななかで印象に残るのは、表題曲「22」の〈ちゃんともっと全部/心を曝け出しながら/みんなの前で/声が枯れるくらいに今/泣きたいだけどそれが出来ない/私ってどうよ?〉というラストフック。おそらく彼女はもっともっと複雑で、いろんな側面があって、やりたいこともいっぱいあるのだろう。そこを自分なりの形としてアウトプットするため、日々表現と格闘しているからこそ出てきたリリックのように感じた。

 9月13日にリリースされた『22 Deluxe Edition』には、Gottz、YINYO、SANTAWORLDVIEWというラッパーが客演した新バージョンが追加で3曲収録されている。この『Deluxe Edition』では甲田のラップへの本気を感じることができる。

 「One More Time」のオリジナルリリックは失恋をテーマに、〈Ima feel like havoc where's my prodigy at?〉というラインで、NYヒップホップの伝説的デュオ・Mobb DeepのHavocが、2017年に亡くなった相方・Prodigyをしのぶ気持ちと掛けて表現していた。この曲に客演したGottzは、甲田がリスペクトするラッパーのひとり。多作にして駄作なしを地で行く活動スタイルで、日本語ラップシーンからの信頼も厚い。ラップの基礎技術、バイブス、フロウの多彩さはもちろん、リリシストとしても評価が高い。Gottzは失恋がテーマだったオリジナルに、ラッパーとしてのストーリーを新たに付け加えることで、「One More Time」をふたりの孤高なラッパーのLife Storyへと書き換えた。

One More Time (feat. Gottz) (Bonus Track)

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