ちゃんみな「命日」はなぜ聴く者の心情に寄り添う名曲となったのか? 自分と他者の“命の行方”を歌い、手にした新たな境地
ちゃんみなが、新曲「命日」をリリースした。同曲は、現在放送中の木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)の主題歌として書き下ろされた楽曲で、ちゃんみなは『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』等で知られる池井戸潤による原作を読み込むなかで、登場人物たちがスナックなどで歌っている風景が浮かび、“歌謡曲”にインスパイアされたと明かしている。
哀愁漂う昭和歌謡調のイントロからして、これまでのちゃんみなの楽曲にはなかったアプローチだ。ゆったりとメロディアスに紡がれるグルーヴに乗るちゃんみなの歌唱も哀愁とあでやかさと包容力を宿していて、とても新しい。ときに拳を効かせながら曲を進め、〈命日もバースデーもないんだから〉と力強く歌い放つ。
命日とは「故人が亡くなった月日」を指すが、本作ではそれに加えて「命が生まれた日」という意味合いも込められている。終盤にはラップパートもあり、リズミカルでありながら気だるさをはらんだスキルフルなラップはちゃんみなならでは。そこで、どちらに転ぶかわからない世相を描写しながら放たれるのが〈1人で生きていくので精一杯〉〈うっせぇ it's my life〉〈致すイカす生かす死なすの?/私は私で私を生かす〉といったラインだ。
「命日」の歌詞は、ドラマ『ハヤブサ消防団』で描かれるさまざまな命の行方のことを歌っているようにも聞こえつつ、〈この頃感じる焦りはなんだろう/二十四、五、六は溶けやすいだろう/気をつけなくちゃ〉というちゃんみなの年齢が出てくるラインがあるように、もちろんちゃんみな自身の心情が集結したものでもある。最新アルバム『Naked』のラスト曲「I'm Not OK」で文字通り、「私は大丈夫じゃない」とストレートに素をさらけ出したちゃんみなが、迷いも混乱も不安も隠さず、〈私は私で私を生かす〉と自らをエンパワメントしているのだ。同時に、リスナーに寄り添うような親密さも宿している。