2023.08.24 12:00

華、“令和のカリスマギャル”から“令和の歌姫”への第一歩　誰かの人生の一部になれるような曲を目指して

文・取材＝永堀アツオ、写真＝堀内彩香

「キャッチコピーをつけるとしたら令和の歌姫」

——リスナーとしての遍歴も知りたいです。

華：親の影響もあるんですけど、小学生の頃から松田聖子さんとか、中森明菜さん、やしきたかじんさん、ラッツ＆スターあたりの曲がすごく好きで、そういう曲ばっかり聴いてました。学生時代はアリアナ・グランデとか洋楽にハマりましたね。EDMがブームになった頃で、クラブミュージックとか、キラキラ系の音楽を聴くようになって。

——ダンスもやっていたということですが。

華：最初にダンススクールに通い始めたのが小1なんですけど、しっかりとしたダンスを習い始めたのは中1で、学校の成績が悪すぎて中3で辞めさせられて。上京してきて習い事でまた始めて、ちょっと遊び感覚でやっていましたね。よく踊ってたのは、「It's Just Begun」という曲です。

——映画『フラッシュダンス』のブレイクダンスのシーンでも使われたジミー・キャスター・バンチによるまさにジャズファンクで、ヒップホップ界隈ではサンプリングの大ネタとして有名な曲ですね。

華：中学の頃から好きだったし、今でも踊りたくなったり、聴きたくなりますね。

——上京してからはどんな音楽を聴いてましたか？

華：今で言う“平成の懐メロソング”みたいな、ギャルの子たちが聴くような曲ですね。本来は私が中学生ぐらいのときに流行っていた曲を、大人になってから聴くようになりました。KGさん、LGYankeesさん、NOAさん、Julietとか。カラオケで歌うのは、点数が出やすい倖田來未さんや宇多田ヒカルさんの曲が多いですね。あと、アニソンとボカロソングも好きなんですよ。

——それは意外ですね。

華：私、たぶん陰と陽の両方を持ってて。中学のときはピットブルとか、洋楽のイケイケ系パーティソングもよく聴いていたんですけど、オタク要素も強いので、“歌ってみた”とか、歌い手さんの曲もよく聴いてて。米津玄師さんがもともとボカロPのハチだったときから聴いてるんです。

——本当にいろいろ混じってるんですね。

華：全部好きなんですよ。ボカロで一番好きなのは、れるりり（当社比P）さんの「脳漿炸裂ガール」って曲なんですけど、DECO*27さんもすごく好きでしたね。倖田さんや宇多田さんの曲を歌ってTikTokでアップするより、SNSに生存しているオタク界隈の子たちにも聴いてほしいっていう思いがあったので、ボカロソングもアップするようになりました。

——少しずつ歌手という道が見えてきたときに、ご自身では理想像はありましたか。

華：私はやっぱり誰かになりたいと思ったことはなくて。好きな曲を歌えて、より多くの人に聴いてもらえる歌手になりたいなって。誰かの元気の源とか、支えになるような曲を歌いたい。私自身がそうだったんですけど、歌詞に対しての共感が一番強いと思うんですよ。例えば、私は辛いときはJASMINEさんの「sad to say」をよく聴いていて。特に恋愛で悩んだときは、この曲を聴いて浸ってたりしています。バラードだけじゃなく、失恋ソングでもアップテンポな曲でもそうなんですけど、誰かの人生の一部になれればいいなと思ってますね。キャッチコピーをつけるとしたら……令和の歌姫ってことで。

——令和の歌姫になるっていうことですね。

華：そうなりたいなと思いますね。

レコーディングを通じて自分の声を好きになれた

——ご自身のデビュー曲に関しては、受け取ってどう感じましたか。

華：アップテンポで、みんなが元気になるような曲なので、キラキラしててキャッチーだなって思ったのと、やっぱり一番は曲名のインパクトですね。

——受け取ったときには、もうタイトルがついてた？

華：そうですね。最初はちょっと笑っちゃったんです。「全部、華やな」みたいな（笑）。でも私からすると、やっぱり本当に嬉しいし、ありがたいことだなって。華のための曲だなって思ったし、デビューする8月という季節にぴったりだなって思いました。

——歌詞はどう捉えましたか。

華：片思い女子のキラキラソングって感じです。女の子って、誰かに片思いしてるときってすごくブルーな気持ちになることがほとんどっていうイメージだったんですけど、この曲は明るめ、なんならノリノリで好き好きって言ってる感じが超かわいいし、今っぽいって思いました。曲調自体は平成っぽさも感じるんですけど、この女の子の人間像は、今の推し活をしてるようなオタクだったりとかして。恋愛っていうよりは、片思いをただただ楽しんでいる女の子って感じ。“彼”でも、“推し”でもいいんですけど、「相手を好きな自分が好き」みたいなノリのめちゃくちゃ元気な子っていうイメージだったんで、私もテンション上がるデビュー曲で嬉しいなって思いました。

——共感したり、自分の経験と重なったりしたフレーズってありました？

華：〈知らないあの子と話してるだけで嫉妬しちゃう〉っていう部分は確かにって思いました。これ、重く言うとただのメンヘラになるんですけど、アップテンポでキャピキャピ歌うことで、鬱陶しくないというか、メンヘラバレしないような伝え方だなって思ったんですよ。女の子がちゃんとかわいく、わがままを言えるような曲だなと思ったし、そこにはすごく共感しましたね。

——レコーディングはどんなアプローチで臨みましたか。

華：何日も前から、めちゃくちゃ歌い込んでいて。こだわった部分はちょっとセリフっぽい歌詞なんですけど、あえて感情を乗せないっていう歌い方を心がけたんですよ。〈キュンとしちゃうの〉とか、〈ドキッとする〉とか、〈Flowerになりたい〉とかは、聴き心地と中毒性を強めたくて、結構なしゃくりを入れました。歌詞自体も大事なんですけど、聴いていてテンションの上がる曲にしたいと思ったんですよ。

——リズムの取り方、ビートの乗り方が独特ですよね。よく聴くと、〈さりげなく〉を「さりいんげんなんく」みたいに歌ってて。

華：普通だったら言わないけど、聴き心地やかわいらしさを重視してるからで。ぶりっこ要素をてんこ盛りにしてますね。でも、この曲、息継ぎするところが少なくて、結構大変なんですよ。レコーディングでは、完璧な聴こえ方をするような歌い方にしたんですけど、実際に人前で歌うときはどこでブレスしようとか、ちょうど今、悩んでるところですね。

——ご自身で完成した曲をスタジオで聴いて、どう感じました？

華：いやあ、よくできたって思いました。もともと自分の声がそんなに好きじゃなかったんですよ。もっとかっこいい声になりたいと思っていて。でも、自分らしい歌い回しやグルーヴを掴んでくるにつれて、自分の声を好きになれたんです。前までは聴きたくもないぐらいムカつく声をしてたのに、今日も朝から100回は聴いてきたんじゃないかっていうくらい（笑）。自分の声を好きになれる曲でデビューできたという感動もあったし、「よく頑張ったな、自分」って思いました。

——MVも公開されていますね。

華 - Flower (Official Music Video)

華：私のリップシーン以外は、カップルのデートの様子なんですよ。夏らしく、海デートや花火デートをしてて。リップシーンは曲名に合わせて、花づくし。ギャルモデルとして誰かのMVに参加させていただくことは多かったんですけど、自分1人でリップシーンに出るのは初めてだったので、めっちゃ緊張しました。歌うことは得意分野だったので、レコーディングはうまくいったなっていう感想なんですけど、リップシーンは途中で歌詞を間違えちゃったりとか、表情管理も難しくて。モデルの撮影はスチールが多かったんですけど、MVだと動画になって、ほぼ演技に近かったので、初挑戦だったからちょっとまだドギマギしてるなって自分で観ても思いました。でも、それも最初っぽくていいかなって（笑）。SNSでの私っていうよりは、本当に曲に寄り添った私っていう感じなので、私を以前から知ってくださっている方からすると新しく感じるんじゃないかと思います。

——出演しているカップルは黒髪の爽やか系ですよね。

華：ただただ美男美女に出ていただいて本当にありがとうございます、って感じですし、私の中では別にギャルにこだわっていなくて。曲の良さに気づいてほしいし、あまり色がつき過ぎていない人の方がイメージにも添いやすいかなって。ヤンキーカップルでも、おじいちゃんおばあちゃんカップルでも、誰でも自分たちを重ねて想像できるような、お手本みたいな2人に出演してもらいました。

——そして、先ほどライブで歌うときの話も出ましたが、人前で歌っていくことも想定してますか。

華：もちろんです。もう人前でしか歌いたくないくらい。ライブをやりまくりたいですね。やっぱり誰かに届けたいし、共感されるのがもともと好きなんですよ。だから自分が大きくなることによって、自分の発言にちょっと重みが増すっていう意味で、今の芸能のお仕事もしていて。でも歌は本人とは関係なく、その曲だけを好きになってくれることもあるじゃないですか。私っていう人間に興味がない人にも、音楽でその人の人生を変えることができたら、本当に理想っていうか。私の目標でもあるので、たくさんの人の前で歌いたいですね。

——ということは音楽活動はこの1曲だけでは終わらないですよね。

華：そうですね。死ぬまで歌をやりたいですし、自分の中で本当に達成感を得られるまではやり続けたいと思ってますね。基本ないものねだりなので、常に上に向かえればと思います。スタート地点にやっと立てた感じなので、まだまだ飽きずに見てほしいですね。

——ご自身で歌いたいジャンルはありますか。

華：やっぱり、しっとり系バラードはやりたいですね。どメンヘラで激重なやつ。「Flower」で初めて私のことを知ってくださる方は、聴き心地のいい夏の太陽のようなイメージを持ってくださると思うんですけど、本来の私は重いので（笑）。恋愛だけが本当にうまくいかないタイプなので、自分としても共感しながら歌える気がしていて、いつか挑戦したいなって思ってます。

※1：https://crazybank.jp/talent/hana/