淡路島育ち同級生5人組バンド・HATAKEに初インタビュー! 結成秘話から野望、そして新曲「生まれ」――すべて語る

僕たちは誰かと同じまとまりにはされない気がします

北谷隼斗

――池澤さんの作る楽曲がHATAKEの最大の武器だと思うんですけど、そもそも彼が“曲を書く人”だという認識は、バンドを結成した時からあったんですか?

北谷:彼は、学校の友達の誕生日の時にワンフレーズくらいの歌を作って歌ったりしてたんですよ。

池澤:え? そんなんあったっけ? わからん。してたんかな。

刑部:俺も歌ってもらった。

池澤:それは歌を作ってはないやん、カバーやで!

北谷:でも、そんな人、他にいないじゃないですか(笑)。だから、そういう人(曲を書く人)という認識はありました。

――本当に人の前で歌うのが好きなんですね。

池澤:うん、好きですね。

――実際にバンドを始めてから今までのなかで、作る曲が変わってきた感じはします?

池澤:しますね。高校からちょっとずつ作りだしたんですけど、最初は好きな女の子に対することを書いてたんですよ。でも、そこから映画にハマって、自分以外の歌を作ってみようと思って、映画からインスパイアを受けたりするようになって。それから大学に入って、バイトをしたり、ちょっと大人の世界に足を踏み入れたことで、言葉選びとかがちょっと変わってきた感じはします。

池澤寛太

――それこそ、友達の誕生日に何か歌を歌うということと、自分で曲を書いて自分自身を表現していくということは、また全然違うものだと思うんですけど、どちらかと言うと“表現”をしたかったんですかね?

池澤:そうですね。もともとは自己満やったんですけどね。誰かに曲を聴かせて「これ、どう?」ということはしていなかったんですけど、こうやってバンドを始めてから……曲を送ると、彼(北谷)の反応がよかったりするんですよ。「これはあいみょんと斉藤和義のハーフや」とか「いきものがかりとMr.Childrenのハーフや」とか――“ハーフ”っていう表現が多いんですけど(笑)――感じたままの感想をいろいろ言ってくれたりして。メンバーではあるんですけど、人に伝えた時に「こう思った」って言ってもらえるんやったら、他の人に曲を聴かせた時にはどうなるんやろうなと思っていましたね。

――メンバーのみなさんからすると、ソングライターとしての彼はどんなふうに見えますか?

刑部:天才。天才ですねえ。まず僕は作詞なんか絶対できないし、その言葉遣いも、裏を読み取るともっと意味がわかる言葉みたいなものもあったりするんで、「こいつ、思考回路どうなっとるん?」「え、すげえ」ってなっちゃいました。僕じゃ表現できないことをずっとしているので、すごいなと思います。

――秦さんはどうですか?

秦:ライブハウスで対バンさせていただいた方とかによく言われるのは「懐かしいメロディ」みたいなことだったりするので、ちょっと昭和チックな懐かしさを感じるメロディが僕は好きですね。

――北谷さんは?

北谷:本人も言っていますけど、影響されやすいところがよくも悪くもあって。ただ、たまにカンタにしかできない言い回しがあったり、造語や当て字があったりっていうのが、聴いていて面白いですし。日本人が本能的に好きなものを作るのが得意なのか、あえてしているのか、それはわからないですけど、個人的には好きですね。

――今北谷さんは池澤さんが「影響されやすい」とおっしゃっていましたけど、実際に曲を作る時って、何かから着想を得ることが多いんですか?

池澤:僕は音楽理論とかがまったくわからないまま作り出しているので、誰かの曲をマネしようと思ってやったことはないですね。身近にいるアーティストさんと話していると、大体はモチーフとなるものがあって、それを自分の曲と照らし合わせていくみたいな感じだと言われたんですけど、僕は何かをモチーフにするようなスタイルではないですね。なんか勝手に出てくる感じかもしれない。

秦大翔

――それがこのバンドの面白さかもしれないですね。狙っていないんだけれども、結果的に的を撃ち抜いちゃっているみたいな感覚がある感じがするんです。それを「天才」と言うのであれば、そうなのかもしれないですけど。

池澤:ありがとうございます。

――今まで出してきた曲を聴き返しても、曲ごとにカラーが全然違いますよね。それがひとりの人から出てくるっていうのがすごく不思議です。

池澤:僕は……自分の話になるんですけど、ゲームとかをまったくしてこない人生を送ってきたんですよ。その代わりにほんまにずっと音楽を聴く生活をしてきて。たとえば、お風呂に入る前の準備段階から音楽を流したり、洗濯とかしながらとかずっと流したり。そういう感じでいろんなジャンルの音楽を毎日聴いてきたから、いろんなジャンルで曲が生まれるのかなと思いますね。

――ちなみに、池澤さんがいちばん好きなアーティストは誰ですか?

池澤:ハルカミライです。マジでヤバいんですよ、ハルカミライ。大好きで、(橋本)学さんが作る、「“強くて優しい”とはこのことか」というような歌詞とメロディがあって、言葉選びも、文脈的には「何を言っているんだろう?」と感じる文ではあるんですけど、ひとまとまりにしたら「こういうことか!」と理解ができたりするんですよね。

――そういう好きなものとかって、メンバー内でシェアしたりするんですか? 「この曲、ヤベえぞ」みたいな。

池澤:ここ(秦と北谷)とかには言ってもあんまり響かないんで、こっち(刑部)に言って、共感させるっていう感じですね(笑)。

刑部:僕は、カンタのおかげでハルカミライにハマって、ライブを観に行くようにもなったし。カンタから教えてもらった曲は、大体好きになりますね。

北谷:まあ、教えてもらわなくても(池澤が)流していたら勝手に覚えますね。

池澤:それぞれ本当に好きなアーティストがバラバラなんですよ。でも、だからと言ってバンドとして出てくる曲がバラバラすぎると、聴いている側が「どうしたらいいのかな?」ってなっちゃうこともあるので。今、それをうまいことやってる段階です。

刑部壮登

――そんななかで、このバンドらしさというのはどういうところだと思っていますか?

池澤:らしさか。うーん……(他のメンバーに向かって)どう思います?

北谷:自由とはちょっと違うんですよね。

秦:でも、誰かと同じまとまりにはされない気がします、僕たちは。何が強いのかははっきりとはわからないですけど、誰とも違う独自の路線という感じがします。

池澤:いろんなジャンルの曲があるのが、逆にらしさというか。いろんな曲があるから……。

北谷:飽きさせないというかね。

池澤:そう、それがらしさなのかな。

――たしかに、ひとつの場所に留まらない感じというのはありますよね。写真のビジュアル面もそうですし、楽曲の雰囲気ももちろんそうですし、定義不能な感じがする。でも、曲を作っているのはひとりだし、生まれてくる世界というものは共通している感じもするし。それで言うと、切ない曲が多いじゃないですか。完璧にハッピーな曲はHATAKEにはないなと思って。そこには、池澤さんの性格が反映されているんですか?

池澤:なんなんやろ。自分のなかにある暗い部分が出てるのかもしれない(笑)。普段曲を聴いていても、楽しいばっかりの曲は苦手なんです。だから、作る時にもそれを避けている部分があって。空想の世界で起こることも、すべてがハッピーエンドではないのかなって思いますね。

――そうですよね。いろいろなジャンルがあるなかで曲の世界観が一貫しているというのは、すごくあるなと思います。

北谷:そこはそうですね。

刑部:……。

池澤:聞いてる?

刑部:聞いてます、聞いてます(笑)。

――(笑)。そこが池澤さんの作る曲のオリジナリティで、それがHATAKEというバンドを特徴づけている感じがします。

北谷:たしかに、曲を作り出して4年くらい経って、カンタが作った曲だなっていうのは、大体わかるようになってきました。たまに、いい曲を見つけたら「新しい曲できた!」ってアコギで弾いて聴かせてくるんです。

――他の人の曲を?

北谷:そう(笑)。でも、もう百発百中でわかるようになりました。

池澤:それ、みんなわかってきてる?

秦:うん。誰にも似てないっていうのは。

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