Instagram新機能での共有、ミュージックキーホルダーで“手渡し”も 広がる音楽シェア形態の可能性

音楽シェア形態の可能性

 こうした音楽シェアの形が大きく変化したのには、コロナ禍の影響が見逃せない。外に出ず、身近で楽しむということが浸透した若い世代が弾き語りやダンスなど自らの表現に音楽を取り入れ、2020年代以降の動画SNSのブームを支えてきた。Instagramでは、短いリール動画で流す楽曲のみならず通常の投稿にも音楽を追加したり、最近ではノート機能(24時間限定で今の気持ちや近況を短文で共有できるInstagramの機能)に音楽を載せることもできるようになった。日常を記録するSNSで音楽を共有することはもはや欠かせない要素なのだ。

 SNSを通じた不特定多数へ向けた音楽シェアが一般的になる中、“ミュージックキーホルダー”なる新たなシェア形態もにわかに話題である。このアイテムはレコードやカセットテープを模したキーホルダーにデータとして楽曲や動画を保存し、キーホルダーをスマートフォンにかざすことで楽曲や動画を再生することができる機能を持つ。好きな曲を取り込んだキーホルダーを持ち歩けば、周囲の人に簡単に広めることができる。さらに、曲が入ったキーホルダーを誰かにプレゼントすることによって、CDやカセットを貸し借りしていた時代から巡り巡って再び“手渡す”という密なコミュニケーションが生まれる。キーホルダーとして音楽を持ち歩くことで手軽に楽曲を共有できる新しさが若者を中心に注目され、またかつて音楽を“手渡し”していた世代からは、音楽を思い出として共有するツールとしても再注目されつつある。このようなシェア方法が一般的になれば、短時間で心を掴む曲だけでなく、じっくりと味わえるような楽曲が流行の中心になるかもしれない。

 もちろん音楽はそれ単体で楽しむことができるが、その曲を聴いたシチュエーションや誰に教えてもらったかという背景によっても聴こえ方が変わってくる。広く共有されたからこそ知ることができた楽曲もあれば、手渡しで共有されたからこそ特別な記憶になった楽曲もきっとあるだろう。どんなに共有の形態が変わったとしても、思いがけないシェアによって大切な楽曲と出会える可能性に変わりはないのだ。

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