K-POP好きのライターが今、英国アイドル Wham!を全力で推す5つの理由

 こんにちは、初めましてK-POPゆりこです。普段はK-POPを中心に韓国エンタメについて書いたり喋ったりしているのですが、今回は自ら志願してイギリスのポップデュオ・Wham!について書かせていただくことになりました。気合い入ってます、押忍! いや、推す!

 Wham!を表すキーワードは「若者の代弁者」「心躍る普遍的なポップミュージック」「セルフプロデュース力」「アメリカ進出成功から世界のスターへ」――まるで現在のK-POPアイドル快進撃にも通じる要素を感じるのは私だけでしょうか。アイドル道の拡大と多様化に寄与した彼らの音楽や軌跡を知ることで、2023年に活躍するアイドルのことをより深く知るきっかけにもなるかもしれません。

 そもそも、どんなアーティストなの? という方のために、まずは簡単なご紹介から。Wham!は天才ソングライター兼ボーカリストのジョージ・マイケルと天性の“愛され力”を持つ、アンドリュー・リッジリーによるイギリスのアイドルユニットです。社会を憂う若者達の声を代弁する曲で注目され、大衆に届くポップミュージックでさらなるブレイクを果たします。活動期間は1982年から86年のたった4年間と短いのですが、今も12月になると街に流れる「Last Christmas」をはじめ「Club Tropicana」「Freedom」など誰もが一度はメロディを耳にしたことがある名曲を生み出してきました。イギリス国内の人気にとどまらずアメリカ進出も成功、これまで全世界で3,000万枚以上のレコードセールスを記録しています。アルバム『Make It Big』はアメリカだけで600万枚売り上げ、日本でもオリコン洋楽アルバムチャートで1位に。中国で初めてコンサートを行った欧米のポップアーティストもWham!なのです。そんな華々しい記録に加えて、特筆すべきは彼らのセルフプロデュース力。曲作りやビジュアルイメージなどをメンバーが中心となって行い、「アイドルであることとアーティストであることは両立する」という今では浸透している概念を、約40年前に先陣を切って証明してみせた存在でもあります。

 その一方で、彼らの残した功績やエンターテインメント業界に与えた影響に比べると、過小評価されているのも事実。特に日本においては顕著で、同国出身の先輩アーティストQueenの知名度に比べると少し寂しいものがあります(単純比較できるものではないですが)。そんな中、2023年はWham!にとって「第2の旬」がやってきたといっても過言ではありません。今年7月からNetflixでオリジナルドキュメンタリー映画『ワム!(原題:Wham!)』が全世界に公開され、本国イギリスではランキング1位に。日本でも当時を懐かしむ大人ファンを中心にSNSが賑わっていました。

『ワム!』予告編 - Netflix

 そして同時期にBTSのRMがYouTubeにて歌手Coldeとの対談の中で「愛というワードで思い浮かぶ歌」としてWham!のヒット曲「Careless Whisper」を挙げるという奇遇な出来事も。さらに40周年を記念しリリースされたシングルコレクション『The Singles: Echoes From The Edge Of Heaven』は UKチャート2位の快挙。Wham!ファンとしては「今推さなくていつ推すの?」。この千載一遇を逃すわけにはいきません。彼らの音楽的な魅力については、ぜひ高橋芳朗さんの記事も併せてご覧いただきつつ(※1)今回はアイドルとしての功績やK-POPに与えた影響について少しでもお伝えできたらと思います。

「アイドル=アーティストは成り立つ」偏見をぶち破るセルフプロデュース力

 Wham!の楽曲はほぼメンバー(主にジョージ)の自作、セルフプロデュースだったということは先に述べましたが。12月になると街中やテレビで流れる〈Last Christmas I gave you my heart〉というメロディとフレーズをご存知の方は多いかと思います。BTSファンなら「ありふれた練習生のクリスマス」の元ネタと言えばピンとくるかもしれませんし、昨年末にLE SSERAFIMのユンジン(HUH YUNJIN)がカバーしていた曲でもあります。そのほかテイラー・スウィフト、アリアナ・グランデなど、これまでカバーしたアーティストは数えきれず。30年以上愛されている名曲「Last Christmas」、ジョージがたった1時間で作曲したものだというから驚きです。

2022 Christmas ONSTAGE – 허윤진

 一方、作詞・作曲そして歌唱に至るまで、ほぼジョージによるものだったため、どうしても脇役的な見方をされてしまっていた相方アンドリュー(告白すると私もそう思っていた節がありました、ごめんなさい……)。しかし今回ドキュメンタリー映画『ワム! 』を見て、アンドリューが衣装などビジュアル面のテーマやクリエイティブのデザインなどを考えていたということを知りました。K-POPでは「コンセプト職人」という言葉がありますが(代表例はNewJeansプロデューサーのミン・ヒジン)、アンドリューもまさにそうで、彼の存在なくして“陽気で無敵なポップスター”Wham!は存在しえなかったのだと感じます。なお、先日RM(BTS)が挙げていた「Careless Whisper」はアンドリューも作曲に関わっていることを付け加えておきます。

人種や国を超えて自分たちなりの解釈で生み出した新しい音楽

 アメリカ進出と言ってもWham!の2人は英語ネイティブな白人男性。ともすると“ハードルが低そう”に見えるかもしれません。しかし時は1980年代、さらに「アイドル」という当時はまだまだ“軽く見られがち”な立場。マイケル・ジャクソンやマドンナが大活躍している巨大な音楽市場に乗り込むには、相当な覚悟と自信が必要だったことでしょう。当時ブラック系ではないアーティストとしては珍しく、ラップを取り入れ、モータウンミュージックの影響をビシビシ感じさせる曲をもっての挑戦。当時を知らない世代の私でさえも、アウェイな環境であったであろうと想像がつきます。そんな中でいろんなものの垣根を飛び越えて、融合していった彼らのフットワークの軽さと勇気が、現在にもつながる“シン・アイドル道”を築いたように思います。

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