Wakana「光の“そのさきへ”、みんなと一緒に歩いていきたい」 願いを込めて歌い上げたビルボード横浜公演

Wakana、ビルボード横浜公演レポ

 ライブ中盤には、生楽器の演奏のみによるアコースティックコーナーも設けられた。「“Wakanaさんのお父さまへの思いが書きたいです”と言ってくれた」という、シンガーソングライター 半﨑美子書き下ろしによるピアノバラード「標」では、「2020年に父を亡くしたんですけれども、その思いがまだまだ、心のどこかにひっそりと影を残しています。この曲をいただいた時に、いつまでも胸にひっそりと暗い影を落とすのではなくて、いつまでも明るい……父の笑顔を感じることができました。この曲を歌い続けることで、みなさんの心の中にいる大切な人に少しでも寄り添えたらいいなと思っています」と涙で声を詰まらせながらも、今日という日を生きていく前向きな強さを示した。2ndアルバム『magic moment』収録曲の「ひらりひらり」では、その温かな歌声で思い出の中にいる君の眩しい笑顔に、文字通り静かに寄り添ってみせた。

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 ピアノの調べから始まる新たなアレンジが施された「Flag」では、スカートを翻しながら〈僕たちの旅は続くだろう〉と高らかに歌い上げ、今日、この日に出会えたことの感謝を伝えるゴスペル調の「Happy Hello Day」では両手を広げてステップを踏みながら明るく歌唱。場内には自然とクラップが起こり、音楽を通して心が通じ合ったような一体感がもたらされた。そして最後のMCでは、アルバムのコンセプトについて、「光が射すイメージです。一瞬の光かもしれないし、諦めかけた時に差して、自分が勇気づけられる瞬間の光なのかもしれない。だけど、人生はドラマチックな瞬間だけではなくて。いつも明るいところを目指してみんな生きてるのかなと思います。なので、私は、光の“そのさきへ”みんなと一緒に歩いていきたい。そういう思いを込めて、このタイトルをつけました」と解説。「これからずっと歌い続けていく中で心に掲げていきたい思い。そして、いつも支えてくれるみなさんに向けた思いです」と続け、タイトル曲「そのさきへ」で“あなたは決して一人ではない”というメッセージをまっすぐに届け、心を内側からゆっくりと温めてくれるような歌声によって、光が射す“そのさきへ”と向かう旅は大団円を迎えた。

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 アンコールでは「希望」を初披露。複雑なメロディラインながらも地に足がついた歌声で夜明けを誘うと、ライブの最後に歌われたのは、武部による楽曲で、ソロ活動を始めた5年前からラストナンバーとして歌い続けてきた「あとひとつ」。「武部さんから『この曲は祈りだよ』という言葉をいただいて、私は毎日、一歩ずつ進みながら、一生懸命に生きてきて、その先にみなさんがいてくれたら、私はとっても幸せです。その思いを、ライブでみなさんに会える喜びを、歌詞にしようと思いました。みなさんに向けた1曲です」という思いを込めたピアノ伴奏のみによるバラード。ともにひらがなのタイトルで、ともにWakanaが歌詞を手がけた「そのさきへ」と「あとひとつ」の間には5年という月日が流れているが、根底のメッセージは共通している。彼女が信じ、願っている未来とは、常に、ライブで観客を前にして歌うことであり、歌でつながり合うことである。つまり、Wakanaにとっての“光が射すそのさき”とは、この日、この場所にあったのだ。

※1:https://realsound.jp/2023/05/post-1338130.html

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