大比良瑞希、弾き語りのコラボで見出した“新しい自分” butajiの音楽と深く通じ合った『Love On A Two-Way Street』第2夜

大比良瑞希&butaji共演ライブレポ

 そしてアンコールでは、butajiと大比良が同じステージに登場。彼女の運転で、butajiが助手席に乗るスタイルでのインタビュー撮影(※2)でも話が尽きなかったらしく、なんのことはない、ふたりはすっかり打ち解けた様子。変に盛り上がりすぎるでもなく、会話のキャッチボールが自然と成立している雰囲気の良さは対談でも分かっていたが、このアンコールでもその良いバイブスを感じることができた。

 最初にbutajiとSTUTSによる楽曲「Presence」に大比良が参加。驚いたのは、ボーカル面でもふたりの相性が非常に良いこと。エレキギターを弾きながら、歌う彼女の芯の強い声に対し、butajiは上にも下にも滑り込み、時に毛布のように、時に蛇のように、自在な表情で歌に色を足し、そのことで曲の中心にある彼女の心模様が際立っていく。これはいわゆるデュエットとはまったく違う何かだ。そして本邦初公開となる「いとしさ」では、完成したトラックを流しながら彼女がメインで歌った。この曲でもbutajiはコーラスとして見事に歌を支えていたが、その声と姿は、彼の作った世界で新しい自分を演じていく彼女を見守る演出家のようでもあった。

 そう、歌の主役はあくまで大比良瑞希。これから彼女がしようとしているのは、自分が何者かを確認していくことではなく「こんなあなたがいるんだよ」と語る音楽に導かれながら知らない自分に出会うこと。そういう意味でも、それぞれの曲の同伴者を乗せた“Two-Way”な音楽ドライブは、GPSの小さな画面や道案内に頼らない、地図からはみ出た道を走る旅になっていくのかもしれない。

※1:https://realsound.jp/2023/06/post-1361637.html
※2:https://www.youtube.com/watch?v=1FjDCfTz1G4

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