カメレオン・ライム・ウーピーパイ、初ワンマンで見せたマジカルなムード すべてを“楽しさ”に転換する手腕
ライブ中、Chi-はずっと「楽しい!」と叫び続けていた。実際にステージに立つ彼女は歌っては笑い、踊っては笑い、フロアを見渡しては笑い……本当に心の底からこの時間と空間を楽しみ尽くしているようだった。カメレオン・ライム・ウーピーパイ、1stアルバムを携えての初ワンマン『1ST ONE-MAN LIVE "Orange"』。7月2日の大阪・心斎橋 Music Club JANUS公演に続いて9日に開催された東京公演、会場となった渋谷WWW Xには怒涛のように繰り出される楽曲たちによってカメレオン・ライム・ウーピーパイ(CLWP)ならではのすべてを「楽しさ」に転換してキラキラと輝かせるマジカルなムードが生まれていた。
まずは今回のワンマン2公演ともにゲストとして出演したPARKGOLFが登場し、フロアを温める。いつもの主戦場であるクラブとは違うということで、マイクを握って饒舌に喋る彼の口からもしきりに「楽しい」という言葉が出てくる。クラブで出演順が続いていたことがきっかけだったというCLWPとの出会いを語ると、最後までアッパーなパフォーマンスでフロアを踊らせた。短い時間ながら、きっちり盛り上げてバトンをつなぐ、さすがのステージングだった。
そしてPARKGOLFの出番が終わると、ステージ後方のスクリーンにChi-手書きの数字が映される。600から1秒ごとに減っていくその数字は、本日の主役カメレオン・ライム・ウーピーパイのライブのスタートへのカウントダウンだ。ときおり数字に合わせてChi-からのメッセージも挿入される。まるで友達とおしゃべりするようなそのトーンがなんとも彼女らしい。合間にWhoopies1号の飼い犬も映し出されたのだが、じつにかわいいミニチュアダックスフンドであった。
そして600秒後、ロケットが発射されオレンジの惑星に突っ込んでいくオープニング映像からライブがスタート。SEの「CHAMELEON LIME WHOOPIEPIE’s THEME」に合わせてWhoopiesのふたりがまずは盛り上げ、1曲目「LaLaLa」へ。スクリーンに登場したのは楽屋にいるChi-。LEDが仕込まれたサングラスをかけ、マイクを手に歌いながらステージに向かう様子がライブで映し出される。そのままステージに登場してきた彼女を大きな拍手と歓声が出迎える。そしてステージ狭しと飛び回り、続く「Mushroom Beats (Orange ver.)」で早くもコール&レスポンスを繰り出しフロアをひとつにしてみせるChi-。いきなりトップギアでのスタートダッシュだ。そんなパフォーマンスをさらに加速させるのが作り込まれたVJの映像。1曲ごとにテイストを変えながら展開するカラフルなビジュアルが、オーディエンスだけでなくステージ上の3人のテンションもさらに上げていく。もともとMVなども含めビジュアルの表現にもこだわり続けてきた彼らだが、その経験とスキルもこの初ワンマンで全開になっている。
3曲目、CLWPのライブでは鉄板となっている「Where Is The Storm」で再びコール&レスポンスを決めると、続けて「Dislike」へ。ここまで4曲、ノンストップで駆け抜けると、ようやくここでインターバル。Chi-は上気した顔で「最初から飛ばしすぎて死にかけた」と笑っている。確かにいきなりの全力疾走だが、もちろんこのあともライブは決してギアを緩めることなく続いていった。オーディエンスのハンズクラップを煽って突入した「Sweets Room」で会場を丸ごと包み込むようなグルーヴを生み出すと、「最後まで一緒に遊びましょう!」とChi-。その声にフロアからはさらなる歓声が巻き起こった。
と、ここでライブのムードは一変。スタンドマイクでしっとりと歌われる「scrap」と「Skeleton Wedding」がアッパーに踊らせるだけではないCLWPの振れ幅を見せつけ、ドープにリミックスされた「Mad Doctor (Whoopies Wa Remix)」と続く「Unplastic Girl」がずっしりと重いビートで深みを見せつける。ここまでの集大成となったアルバムに収録された曲もそうではない曲も、持てるすべてを注ぎ込むようにして編まれたセットリストが、DIYで自らの世界を作り上げてきたCLWPの歩みを証明するように鳴り響いていく。
Whoopiesが主役の「ウーピータイム (Orange ver.)」(ライブのタイトルが織り込まれたスペシャルバージョン)を経て、ステージに戻ってきたChi-がステージ中央に置かれた椅子に座って歌い始めたのは久しぶりにライブで披露するという「Amefuri no Bambina (Orange ver.)」。シンプルなサウンドの上で情感豊かな歌声が広がる。Whoopiesの作るトラックの多彩さも間違いなくカメレオン・ライム・ウーピーパイの魅力だが、こういう曲を聴くと改めてこのプロジェクトの出発点はChi-という人の内面にあるのだということがはっきりとわかる。逆にいえばこういう側面もしっかり音楽にできるからこそ、CLWPはどこまでもアッパーに突き抜けることができるのかもしれない。