連載『lit!』第55回:INI、MAZZEL、超特急……新人からベテラン勢まで、夏本番に向けてチェックしたいボーイズグループの楽曲
エンターテインメントがかつての環境を少しずつ取り戻し、アーティストとファンが対面でコミュニケーションを取る機会も増えてきた2023年。夏にはライブイベントやフェスなども数多く予定されており、心待ちにしている人も多いことだろう。今回は5月以降にリリースされたボーイズグループの新譜から5曲に焦点を当て、夏本番に向けてその魅力を掘り下げていきたい。
INI「FANFARE」
6月13日に結成2周年を迎えたINIからレコメンドするのは、5月24日発売の4thシングル『DROP That』のタイトル曲「FANFARE」。以前紹介した「HERO」同様(※1)、心地よいドラムスが鳴り響くロックテイストの鮮やかな音色が特徴だ。MVは公開1週間でグループ史上最速の2000万回再生を記録し、公開から1カ月強の6月22日現在ですでに3500万回超え。「全てDROP Thatして楽しむ。」というコンセプトのもと、韓国で撮影されたポップかつ開放感あるセットの中で、自由に音に乗る11人の姿が視聴者をやみつきにする作品に仕上がっている。5月29日公開のパフォーマンス動画ではさらに磨きがかかったキレのあるダンスを堪能できるので、こちらも是非チェックして欲しい。
MAZZEL「Vivid」
今年も個性溢れる新人グループの躍進が目覚ましい。SKY-HIが代表を務めるBMSGから5月17日にデビューした8人組グループ・MAZZELは、デビュー曲「Vivid」が5月最終週のSpotifyバイラルチャート「Daily Viral Songs(Japan)」で初登場1位を獲得。煌びやかさを纏ったジャジーでダンサブルな音色が、カラフルな個性を持つ8人の待ちに待った門出を鮮やかに彩るような楽曲だ。また、今作は、HYBE LABELS JAPANからグローバルに活躍する音楽プロデューサーのALYSAを迎えたことがBMSGに新たなサウンドをもたらすきっかけとなったように思う。MAZZELとして初めて世に出したプレデビュー曲「MISSION」が序盤から重厚なサウンドで訴えかけてくるヘビーなナンバーであっただけに、真逆のテイストの「Vivid」には驚いた人も少なくないだろう。これまでのBMSG所属アーティストとは異なる制作体制によって化学反応が生まれ、BMSG全体の音楽的可能性が一層広がっていくことが期待できそうだ。
龍宮城「Mr.FORTUNE」
個性が輝く新人グループと言えば、龍宮城のデビュー曲「Mr.FORTUNE」も外せない。アヴちゃん(女王蜂)が手がける“スクール型”オーディション企画『0年0組 -アヴちゃんの教室-』(日本テレビ系/Hulu)から誕生した7人組のオルタナティブ歌謡舞踏集団、龍宮城が歌うこの楽曲は、ベースに敷かれたメジャーコードのアルペジオが織りなすメロディが特徴。〈見たことないのによく言えちゃうね〉〈決めつけてばっか〉といった強気な歌詞が内に抱え込んだ感情の爆発のようにも表れ、規格外のアーティスト性を持った彼らの類を見ないアイデンティティの表明と、〈もうとっくに始まっちゃって〉いるその旅路を象徴している。この楽曲はオーディション試験の課題曲としても知られ、ファンにとっても馴染みの深い1曲であるが、当時のパフォーマンスとリリース音源を比較しても、彼ら自身がこの楽曲をこれだけの密度で表現するのにどれほどの努力を重ねたかを推し量ることができるだろう。実際、オーディション中にはどのパートで感情を露わにし、どのタイミングで決意をするか、といった細かな心情の解釈一つひとつについてチームで丁寧に共有していた。だからこそ龍宮城にしか歌えない歌に仕上がっている。